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秋原短編集

ぼくの兄がロリコンな件について

作者: 秋原かざや
掲載日:2014/01/11

 今、僕は隠れている。

 たったひとりの家族のパパから。

 ここなら、きっと見つからないはず。

 僕しか知らない内緒の場所に隠れて、僕は……巷で話題のゲーム、「ミニマムモンスター」略して「ミニモン」をやっている。音はイヤホンにして聞いている。これなら、ばっちりだ。

 お陰で止まっていたゲームもさくさく進んでくれる。いいことだ。

 なんで、隠れているのかって?

 それは……ちょっと時間を巻き戻そうか。


「えええ!? アキ君、新しい家族ができたって?」

 友達の由美ちゃんが声を上げた。

「そう、新しいママが出来るんだって。でも、それはいいことだと思うんだけど」

「何か……気に入らないことでも、あるの?」

 そばに居た瑠璃ちゃんが尋ねる。

「それを勝手に知らない間に決めちゃったってことっ!! そういうのって、ちゃんと僕に相談して決めることだろっ!!」

 だんと、机を叩いて立ち上がる。

「でもさーオレら、小学4年生だよ?」

 巧がドッチボールで遊びながら、そう答えた。

 そう、僕はまだ4年生だ。だからって、何も相談しないで決めちゃうってのは、反則だ!

 それに……。

「新しいママにはにーちゃんがいるなんて、聞いてないっ!!」


 というわけで、その新しい家族と会う日に、こうして隠れることにした。

 どうせ、ドジに輪をかけたパパがこんなところを発見できるなんて……。

「みーつけた」

 突然、明るくなったと思ったら、そこにいたのは、パパ。

 ついでにいうと、僕が隠れていたのは、押入れに入ってた大きな箱だったりする。

「え、えっと……」

「ほら、行くぞ! 美咲さんが待ってる!」

 そうそう、美咲さんってのは、新しいママの名前だ。

「ぼ、僕は……」

「ゲームが好きなら、そのままでいいから」

「で、でもっ!!」

 ひょいっと抱き上げられた僕は、そのまま……車に乗せられて、二人の待つレストランへと向かったのだった。


「こんにちは、アキちゃん」

「こ、こんにちは……」

 目の前にいる、初めて見たママは……女子高生にしか見えないくらい若いママだった。

「驚いただろ? これでも40さ……ぐおっ!!」

 パパ、女性の年齢、言っちゃダメだ。というより、本当に美咲さんは若くみえる。

「ふふふ、私、もともと童顔なのよね。最近やっと女子高生に見られるようになったの」

 ってことは、今までは、中学生とか小学生に見られたってことですか?

 えっと、うん、今は深くつっこまないでおこう。

 で、僕は視線をその隣に移す。

 パパと同じくらいの背丈の、痩せた感じの……お兄さん。

 いや、それだけならいい。

 なんで、髪が白いんですか!?

 ついでにいうと、目元、見えません!!

 おどおどしてるし、明らかに緊張しているというか、なんというか。

「あ、あの子、可愛い……」

「えっ?」

 初めて聞いたお兄さんが出た言葉は。

「また? 虎、小さい子についていっちゃダメよ」

「ま、またって……」

 美咲さんはにこっと微笑んで言った。

「この子ね、小さい子とか可愛い子とか可愛いものに目がないの」

 えっ……?

 えっと、今、なんて……?

「だから、可愛いものに目がないの。ほら、虎の持ってる携帯。このストラップも可愛いでしょ?」

 いや、可愛いクマたんだけど、うん、えっと……。

 それって、男が持つようなもんじゃないと思う。

 それくらいファンシーな可愛いクマたんだった。

 って、虎?

「ああ、紹介が遅れたな。この子がお前のお兄さんになる虎だ。あ、名前が虎だからな?」

 ……あの、虎ってタイガーの虎だよね? どう見たって、目の前のにーさんは、虎っていう雰囲気ゼロです。むしろ、もやし? みたいな?

「ぼ、僕はアキです。よろしく」

「あ、よろしく」

 にこっと笑うと、可愛い気がする。目元が見えないから、ちょっと怖い気がするけど、悪いヤツじゃなさそうだ。ぎゅっと手を握ると、意外と虎の手はごつごつしていた。

「おっと、ほらアキ。そろそろ帽子脱ぎなさい。顔が見えないだろ?」

 いや、虎はいいのか、虎の目元は。

 そう突っ込みたかったけど、パパは僕が手を伸ばす前に帽子をさっと取ってしまった。

 ぱさりと長い髪が落ちる。

「ふえぇえええ!!」

 虎が変な声を上げてる。

「悪いか、僕は女の子だ」

「だ、だって、アキっていうから、てっきり……ええええっ!?」

 虎は混乱している。

「あら、虎に言ってなかった? アキちゃんは可愛い女の子よ?」

「ふえええええっ!!」

 とひとしきり叫んだ後。

「ぎゅ、していい?」

「変態っ!!」

 僕はそういう虎の弁慶の泣き所を、がつんと蹴ってやった。


 その後は、あっという間だった。

 僕の家はもともと一軒家だったし、美咲さんちは、手狭なアパートだったこともあって、すぐ美咲さんは僕の家に引っ越してきた。虎も一緒に。

 まあ、僕の家、意外と広いし使ってない部屋とかもあったし、それに……。

「まあ、素敵っ!! こんなにごちゃごちゃしてなかったら、もう理想以上だわ」

 ごめん、美咲さん。それ、僕らには、それ以上綺麗にすることできませんでした。

 綺麗好きの美咲さんのお陰で、僕の家は見違えるように綺麗になったし。

 なにより、賑やかになった。

 むぎゅっ!!

「うわあ、虎、なにすんだっ!!」

「小さくて、ふわふわしてる……」

 隙をついて、事あるごとに抱きついてくる虎を除いて。

 がつん。

「うわあ、アキちゃん、何するの?」

 頭突きで撃退。虎は鼻を押さえて涙目になってる。

「急に抱きつくなって言ってるだろ!」

「もっと可愛い言い方した方がもっと可愛いよ?」

「うるさい、黙れロリコン虎!!」

 そういって、僕は家を飛び出した。


「はー、清々するー」

 久しぶりに外に出たような気がする。

 帽子を深々と被り、いつものように、公園へ。

 今日はブランコにでも乗って遊ぼ……おや?

 思わず立ち止まる。

「おい、持ってきたんだろうな? 蒼太(そうた)」

「ううう……」

 そこにいたのは、クラスメイトの蒼太と見知らぬ年上の学生。たぶん中学生か?

 涙目で、蒼太はいやいや何かを差し出そうとしてる。

 お金だ!

「何してんだっ!!」

 僕は飛び出していた。

「なんだ、お前?」

「あ、アキ……」

「お父さんやお母さんに、他人からお金を奪うことはいけないことなんだって、教えられなかったのか? 僕よりもずっと年上のクセに!!」

「何だとっ!!」

 僕と、年上のアニキとの戦いだ。でも負けないぞ! 僕だって、ここいらじゃあ、喧嘩に強い剛志よりも上なんだからな!

 得意の蹴りで一人をぶっ飛ばし、もう一人は体当たりでぶっとばした。

「よし、今のうちに……」

 逃げろという前に……蒼太はさっさと逃げてしまっていた。あいつ、逃げ足だけは速いんだよな。

「このガキがっ!!」

「うわっ」

 アニキ達が僕の帽子を奪った。ばさりと髪が落ちる。

「なんだ、お前……女だったのか?」

「女で悪いか」

 思わず凄んでみせるが。

「じゃあ、このままひん剥いて、写真取れば、新たな金ヅル、ゲットじゃね?」

 根まで腐ってやがったか、こいつら!

「やられてたま……いたっ!!」

 僕は気づかなかった。後ろにこいつらの仲間が居たなんて。僕は腕を掴まれてしまった。

「は、離せっ!!」

「おい、こいつをトイレに連れ込むぞっ!!」

「やめ……ふがふが」

 すぐさま別の仲間が僕の口を大きなハンカチで縛った。お陰で声が上手く出ない。

 じたばた暴れるも、相手は3人。

 くっ……男って、こんなに力があるのかよっ!!

 正直……こんなに男が怖いなんて思わなかった。全然、歯が立たない。

 だ、だれか……誰か助けてっ!!

「そこまでだっ!!」

「ふがふがっ!!」

 なんと、そこにやってきたのは、あの気弱な虎だった。確か、虎は高校生だったような……けど、こっちは3人もいるんだぞ、大丈夫なのか? いや、こりゃ、返り討ち決定じゃ……。

 なんて見てたら。

「ぐあ!」

「うおっ」

「ぐえ……」

 え? あの……えっ??

 あっという間に虎は3人の男達を倒してしまった。

 キックとかパンチとか、一撃で。

「病院送りにされなかっただけ、マシだと思え! ……アキ、大丈夫か?」

 そういって、虎は僕の口に縛られたハンカチを外してくれた。

「と、虎っ!!」

 思わず抱きついてしまう。

 ついでに虎は、びっくりしておろおろしてる。おいおい、嬉しいシチュエーションじゃないのか、おい?

「なんで、こんなに強いんだ?」

「おふくろに弱い男はモテないからって、無理やり格闘技仕込まれた」

「へっ?」

 僕らはゆっくりと公園の入り口に向かう。

「俺の親父がダメなくらい弱くって、そんなんじゃ世間に取り残されるって脅されて、お陰でプロでなければ、ああやって倒せるくらいになった」

 いや、プロじゃなくても、あれはいくらなんでも……。って、虎のおじさんって確か事故で死んだって言ってたような。

「うん、喧嘩っ早いけど、すぐ倒れてたんだって。で、空手が得意なおふくろがいつも助けてたんだってさ」

 なるほど……。じゃあ、空手は美咲さんから教えてもらって…………うん、美咲さん怒らせないで置こう、うん。

 公園を出たそこで、待っていたのは蒼太だった。

「アキ、大丈夫? 怪我してない?」

「大丈夫だ、ちょっと擦り傷ができたけど、たいしたことないぞ」

 にっと笑ってやると、蒼太も笑顔になった。

「蒼太君って言ったね。教えてくれてありがとう。お陰でアキを助けることが出来た」

 そう虎が声をかけると。

「にーちゃんも格好良かったぞ! すっげー強かった!」

 そうにこにこと言われて、虎は。

「………か、可愛い……」

「やめとけ、あいつは男だ!」

「いや、男の子だ……」

 虎が間違いを起こす前に頭を殴って、引きずることにした。


 これを境に、僕は虎を兄と認めることにした。

 けど、兄なんてまだ言わないけどな。

 こんな変な家族になったけど……まあ、これはこれでアリかもな。

「アキーっ!!」

 ぎゅむっ!!

 ばきっ!!

 この家族らしからぬ、スキンシップがなければ、だけどな。

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[一言] 僕っ娘にすれば僕がつれるとでも思ったか!? つれたよ!← しかしショタなら男も行けるのかい……お兄さん……
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