【あなたは18歳以上ですか】 (はい)(いいえ)
【あなたは18歳以上ですか】
(はい)(いいえ)
小学校5年生の夏休み。
夜中だというのにもわもわと暖気が漂う自分の部屋で僕はそれを見つけた。
父親が仕事用に買ったiPadだったが、数年が経ち古くなってしまったので今は僕が使っている。
僕にとってスマホというものは親が昼寝していたり読書していたりといった時間に借りて使うものであった。
だから自分が自由に扱える電子機器は初めてだった。
「おっぱい」「女 裸」「エロ」そういったワードが検索履歴として残るとは知っていたので、いままで親のスマホではそういうことを調べることができなかった。
だがいまはどうだろう?iPad を貰って1ヶ月が経ったが親が返却を求める様子はないし、僕のiPadを使う気配もなかった。
この電子の板が僕のものであることは既に充分証明されたのだ。
それに気づいた山の日の夜。
僕は自分の中にたぎる欲望のままに指を動かした。
手は冷え込み、歯はガタガタと震え、股間はマグマのように熱くなっていた。
親に知られるかもしれないという恐怖で堰き止めていたダムの水はもう既に決壊寸前であった。
しかしそんな僕の前にこの文字が現れたのだ。
【あなたは18歳以上ですか】
(はい)(いいえ)
絶望という言葉すら生ぬるい。言語程度では言い表せない域の、深く暗い感情が僕を支配した。
僕が18歳以上でないことは誰が見ても明らかであり、その事実はどうやっても動かない。
もし(はい)を押したらどうなる?
このiPadのカメラから顔認証をされて僕の年齢はバレてしまい、違法なことをした人間を捕まえようと警察が動くか?
それともiPadがウイルスに感染して僕のこの行動が世界中に広まるか?
それともこのサイトの管理者が僕が本当に18歳以上かを確かめるため、家に乗り込んでくるか?
……ありうる。
それらの事柄は充分に実現しうる可能性を秘めていた。
いや違う!そんなこと以前に僕は嘘をついていいのか……?
小学校低学年、いや保育所の頃から洗脳のように教え込まれていた「嘘はついてはいけません」という文句。
正直者は正義であり、嘘つきは悪であるというこの世の真理。
僕は嘘つきに……悪に染まる覚悟があるのか?
指から血の気がサーっと引いていった。
……やめよう、こんなこと。
別にいいじゃないかあと8年待つくらい。僕は我慢強い方だろう?
言い聞かせるように言葉を反芻するも、布団を握りしめる力は強くなるばかりだった。
悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて、そして情けなくて、僕はその夜ずっと熱い涙を流し続けた。




