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誰が姉を殺したの?  作者: 月食ぱんな
第三部:世界が終わる瞬間
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セールス上手な鍛冶屋さん3

 そこには、場慣れした雰囲気を纏った青年が立っていた。逞しい体格に短く整えられたブロンドの髪。人懐っこい笑みを浮かべた見目麗しい青年が私に微笑みかけている。


(む、新手の詐欺師?)


 だとすると、武器で溢れた鍛冶屋で声をかけるだなんて、間抜けすぎる詐欺師だ。


「あら、ロイド様。あなたに頼まれてたドレスソードはまだ出来てないはずよ」


 女性店員が声をかけると、ロイドと呼ばれた青年はにこりと笑い返した。


「ええ、知ってます。今日はただの冷やかしです。ここの剣は相変わらず魅力的だから、見て回るのが楽しくて」


 その一言に、店員もすっかり気を緩めた様子で笑う。


「本当に好きよね、武器の話題になるといつも楽しそう。まあ、どうぞごゆっくり。何か気になるものがあれば声をかけてね」


「もちろん。その時はよろしく」


 ロイド様は、再び私の方に視線を戻した。


「どうやら短剣選びに迷ってるみたいだね。ちょっと手伝おうか?」


(身を守る武器を選ぶのに、突然現れた謎の人物に相談って、どうなのよ?)


 内心身構えつつも、アシェルはまだ店員さんと熱弁の真っ最中。逃げ道もない以上、頼らざるを得ない状況に少しだけ諦めを感じはじめる。


「彼はキャメロン騎士訓練校のエースなんですよ。きっとお客様のお役に立てると思います」


「そうなんですね」


 セールス上手な店員さんから後押しの声があがる。


(つまり、怪しい人じゃないってことだよね)


 潔く、謎の青年の手を借りることに決めた。


「お願いします。初めて短剣を買うので、何を基準に選んだらいいのかわからなくて」


「なるほどね。なら、何に使いたいかがポイントになる。実戦?それとも装飾品として?それとも……趣味?」


「ふふふ、趣味って何ですか?」


 思わず吹き出すと、ロイド様も楽しそうに笑った。


「いや、いるんだよ。武器収集が趣味で、買った短剣を眺めて満足する人が。実際、君が選ぼうとしてたのはそういうタイプかと思ったけど」


 彼の指差す先を見ると、ローズクォーツが埋め込まれた短剣がまだショーケースの上に残されている。


「少なくとも趣味ではないです。ただ、実際に使いこなせるかどうかまだ分からないし、とりあえず手頃なものが欲しいと思って」


「なるほどね。じゃあ、機能性と価格のバランスを重視したいわけだ」


 ロイド様は自分の顎に手を当て、少し考え込む仕草を見せた。


「君が重視してるのは軽さと実用性、だよね?」


「はい。あんまり重いのは嫌だし、見た目の華やかさよりも扱いやすい方がいいです」


「なら、あっちに置いてあるのがいいかも」


 ロイド様は店内の奥の別のショーケースを指差した。そこには飾り気のない、実用的なデザインの短剣がずらりと並んでいる。


「良さそうです」


「じゃ、見てみよっか」


「はい」


 目的の短剣に近づいたと、私は足取り軽くロイド様に導かれるまま、新たな短剣コーナーに向かう。


「あ、この短剣なんか良さそうです」


 私はさっそく気になる短剣をショーケース越しに指差す。


 ロイド様は一瞥してから、腕を組んで答えた。


「バランスは悪くない。ただ、柄の部分が少し滑りやすいから、長時間の使用には向かないかもな」


 ロイド様の視線が動き、店員さんを呼ぶ。


「マリーナさん、この短剣を出してもらえるかな?」


「了解」


 先程まで私を接客してくれていた女性が、新たな短剣をショーケースの中から取り出す。


「これなんかどう?柄の装飾は控えめだけど、ミスティラル鉱石の剣身を使ってて切れ味は抜群、でも魔法付与はされてないから値段も抑えめ。それに、軽さと耐久性のバランスがいいんだ」


 彼が手に取ったのは、青白い剣身に革製のシンプルな柄を持つ短剣だった。


「へえ……確かにいかにもな短剣で、いい感じですね」


 試しに手に取ると、軽やかな感触が心地いい。


「これなら扱いやすそうです」


「だろ?初心者にもおすすめだし、もし気に入らなくても、実用品として後悔することは少ないはずだよ」


 彼のアドバイスに感心しながら、思わず笑みがこぼれる。


「じゃ、これにします」


「まいどありー。じゃ、最終チェックしてくるね」


 笑顔でマリーナさんと呼ばれた店員さんは、私が購入を決めた短剣を持ってバックルームに消えていく。


「助かりました。ありがとうございます」


 ロイド様に軽く頭を下げる。


 このまま店員さんに高い買い物をさせられてしまうのでは?と不安に思っていた。しかし、彼が登場してくれたおかげで、希望に沿った短剣を購入できて、一気に荷が降りた。


「騎士訓練校のエース様に、見立てを頼んで大正解でした」


 笑顔で告げると、彼は苦笑する。


「俺の妹が婚約してね。お祝いに護身用の武器をプレゼントしようと思って、あちこちで選び方を勉強したんだよ。おかげでちょっと詳しくなったってだけ」


「妹さんがいらっしゃるんですね」


「まぁね」


 肩をすくめるロイド様。


「決まったのか?」


 背後からぶっきらぼうな声がして、振り向く。

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