表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰が姉を殺したの?  作者: 月食ぱんな
第三部:世界が終わる瞬間
95/167

油断すべからず2

「どうしたんだ?」


 振り返ると、アシェルが戻ってきていた。彼はどこか警戒するような視線を、私の隣に座る地図を広げた男性に向けている。


(彼の人嫌いは、人種差別なし。人類平等に向けられるものなのね)


 ブレないなと、密かに感動する。


「で、そいつは?」


 感慨深い気持ちでアシェルを見つめていると、彼が急かすように、もう一度たずねてきた。


「なんか彼はパルティーヌ遺跡に行きたいみたい。だから今調べてあげてるの」


 私が状況を説明する間もなく、アシェルは男性に向かって何やら異国語で話しかけた。すると、地図を広げていた男は一瞬動きを止める。


「○×△☆♯♭●□▲★※」


 アシェルが告げる。何を話しているかはさっぱり分からないけれど、彼が男性に向ける視線は冷え冷えとしたものだ。


 次の瞬間、慌てた様子で地図をバサバサと畳みながら、赤毛の男性がベンチから立ち上がる。


「○!※□◇#△!」


 意味不明な言葉を叫びながら、男性は逃げるように去っていく。


「え、ちょっと!?」


 あっという間に彼の姿は人混みに紛れて見えなくなってしまう。


「なに今の? ねえ、何て言ったの?」


 ベンチの脇に立つアシェルを唖然とした顔で見上げる。


「ただ、スペルタッチを持ってないのか聞いただけだ。通信系の魔道具を使いこなせない年齢でもないようだったから」


 彼はわざとらしく首をかしげる。


「絶対それだけじゃないでしょ」


(脅したりしない限り、あんな風に逃げないわ)


 怪しいと訝しみながら、ふとポシェットを触る。すると、違和感があった。


「あ、お金……!」


 慌てて中を確認すると、見事お財布が抜き取られている。その瞬間、自分がスリに遭ったのだと把握する。


「あいつ、私のお金を」


 悔しさに声を詰まらせる。


「盗まれたのか?」


「地図をやたら広げてくるなとは思ったのよ」


 彼に説明しながら、はっと思い出す。


「でも大丈夫! ちゃんとお姉様に言われて、全額持ち歩くなんて、間抜けなことはしてないから」


「つまり?」


「お金は銀行にも入れてあるし、スペルタッチにもチャージしてあるってこと。ね、お姉様」


 足元に置いていた鳥カゴを見る。


「え?」


 そこにあるはずの、鳥かごが忽然と姿を消していた。しかも、私とアシェルの荷物もない。


「ちょっと待って、なんで??」


 頭の中で焦りの鐘が鳴り響く。


「まさかポシェットからお金を抜き取られた上に、荷物を取られて、お姉様が誘拐されたってこと?」


(しかもお姉様には、体調不良の疑惑があるっていうのに!)


 最悪な状況にくらりとする。


「青白く発光した羽を持つカラスなんて珍しいからな。マニアには高く売れるんだろう」


 アシェルは私の隣に座ると、スペルタッチをポケットから取り出す。


「ちなみに、子どもを探せと頼んできた例の女も、気付いたら人混みに紛れていなくなっていた」


「つまり?」


「ここは飛行船の乗降口付近だ。そのことが意味するのは」


「観光客で溢れてるってことだわ」


 閃きを共有すると、彼は頷く。


「迷子の子を探せと絡んできた女と、赤毛の男はグルなのかも知れない」


「アシェルと私を引き剥がそうとしたのね」


「だろうな」


 苦々しい表情でスペルタッチを操作するアシェル。そんな彼を眺める私の頭の中で、今日経験した一つ一つの事柄がピタリとハマる音がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ