表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰が姉を殺したの?  作者: 月食ぱんな
第二部:諦めること
74/167

あり得ないこと2

「シャルロッテ。いつまでも悩んでいても仕方ない。灯籠作りが始まるぞ」


 アシェルが淡々と言い放つ。


 顔を上げると、テーブルに用意された色とりどりの魔法紙を手に取り、シンシアやソフィーが、早速作業に取りかかっていた。


「えっと……シンシアは、もうイメージが湧いてる感じかな?」


 イアン様が配布された魔法紙を手に取ると、隣のシンシアが遠慮がちに口を開く。


「私は初めてで。よく分からないので、イアン様にお任せします」


「それじゃ駄目だよ。この作業は、二人の意見を取り入れて作ることに意味があるんだ。だから、遠慮せず君の意見を教えて欲しい」


「私の意見ですか……」


 シンシアが考え込んだ様子で黙り込む。


(いけ、シンシア!)


 私は魔法紙を握りしめたまま固まるシンシアに心でエールを贈る。


「じゃ、ソリスのシンボル。成長と共生を象徴する緑の葉のリースなんてどうですか?」


「いいね。俺らにはぴったりだ」


 イアン様が微笑むと、シンシアの顔は真っ赤になった。


(あれはもう、イアン様にも恋心が筒抜けなような……)


 このまま上手く行きますようにと願いつつ、同じテーブルで並んで座るラスティンとソフィーに目を向ける。二人は早速、騒がしく作業を進めているようだ。


「ソフィー……その紙は裏表が逆だと思うけど」


「なによラスティン、どっちだって大して変わらないわよ。細かい男性は嫌われるわよ」


「大雑把な女性だって、どうかと思うけど。ちょっと貸して」


「あっ、触らないで。私だってちゃんとできるわ」


 手を伸ばそうとするラスティンの手をソフィーが払いのける。


「こういうのはね、インスピレーションが大事なの」


 ソフィーが意地になって赤い紙を折りはじめる。


「ソフィー、それって」


「薔薇を折るのよ。何か文句ある?」


「そう言えば、小さな君に薔薇の折り方を教えてあげたような。もしかして」


「その時教わったやつよ」


 二人は言い合いながらも、気づけば息の合ったペースで作業が進んでいる。


(喧嘩してるくせに、息ぴったり)


 思わず苦笑していると、アシェルが冷ややかな目を向けてきた。


「他人を観察している暇があるなら、自分の灯籠に集中しろ」


「……わかってるわよ」


 苦々しい顔で返しつつも、ふと横目でアシェルの手元を見ると、彼が予想外に器用に魔法紙を折っているのが目に入った。


「……意外と器用なのね」


「君が不器用な分、僕が手際よく進める必要があるからな」


「余計なお世話なんだけど!」


 再び言い合いになりかけたところで、スタッフの声が響く。


「皆さん、完成した星灯は、最終日に湖へ浮かべる予定です。ペアの絆をしっかり形にしてくださいね」


(絆ね……)


 深いため息をつきながらも、私は手元の材料を見つめる。赤や緑や黄色。色とりどりの魔法紙に、スライムみたいな糊とハサミまで用意されている。


(五歳の子どもなら、大喜びで作業するだろうけど)


 生憎私は十六歳。しかも誰かと感性を合わせる作業は苦手だ。


(でも、やらないと終わらないし……)


 ため息をつき、アシェルに顔を向ける。


「星灯の灯籠って、ペアの相手を思いながら作るんでしょ?」


「らしいな」


「……この状況で何を考えればいいのよ?」


 嫌味たっぷりに睨みつける私に、アシェルは一瞬だけ視線を向ける。


「僕が君をどう思っているか、知りたいか?」


「別に、知りたくない」


 即座に拒否すると、彼はどこか愉快そうに口元を歪める。


「まあいい。僕は適当に作るから、君も自由にやればいい」


「適当って……」


(ああ、もう! 何もかもが癪に障るんだけど。 百メートル縛りだの、星灯の灯籠だの、勝手なことばかり!)


 半ば投げやりになりながら、私は手元の魔法紙を半分に折る。


(こうなったら、アシェルに恨みを込めたデザインにしてやる)


 決意して、ふと隣のアシェルを見ると、彼は真剣な表情で灯籠の土台の形を整えている。その横顔には、読書している時と同じように、静かな集中力が宿っている。


(……なんでこんな時だけ、真面目に作るのよ。色々勘繰っちゃうじゃない)


 理不尽な状況に、ますます私の心はかき乱されていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ