ハイキング2
「ラスティンは無理して笑っているみたい」
いつの間にか隣を歩いていた、ソフィーがぼそりと漏らす。
「そうなの?」
「マリアンナさんが、バンガリー王国出身の素朴な青年、ベネディクト様に鞍替えしたから。フラれちゃったのよ」
ソフィーは、気の毒そうに眉を下げる。
「ラスティンはオースガード男爵家の嫡男で、キャメロン騎士訓練校の生徒なの。今年の春に行われた武闘大会の四年生の部では二位だったのよ?ちなみに一位は私の兄、ロイドだったんだけどね」
自慢げに胸を張るソフィー。
「ソフィーのお兄様は、武道に優れた方なのね。うちの兄と大違いだわ」
「まぁ、ロイドお兄様は四男だから、騎士になるしかないしね。だから筋肉馬鹿なのよ。ロッテのお兄様はどんな方なの?」
ソフィーに問わるがまま、兄を思い出してみる。
「顔は私そっくり。でも気が弱くて、本を読むのが趣味で、石ころを集めてる。残念ながら自慢できる筋肉はなし」
口にして、決して誰かに胸を張って推薦できる兄ではないなと改めて思う。
(まぁ、向こうも私をそう思ってるだろうけど)
私は苦笑いをこぼす。
「……趣味があるのは素敵じゃない。それにロッテに似てるなら、きっと社交界で人気でしょうね」
「どういうこと?」
「ロッテは黙ってると、獲物を狙ってるみたいな雰囲気で怖い感じがするけど、よく見れば美人だもの」
唖然として、彼女を見つめ返す。
(び、美人なの?私が?)
友人ポイントが加算されている評価だと理解しつつも、つい顔が緩んでしまう。
「ソフィーは、一緒にいて楽しいし、アンティークのビスクドールみたいでとっても可愛いわ」
嬉しさそのまま、ソフィーに返す。
「ふふ。ありがとう、ロッテ」
私たちは目と目を合わせて笑い合った。
「とにかく、ラスティンを気の利かない人だから無理だなんて、マリアンナさんはちょっと見る目がないわって話」
ソフィーは小声で愚痴ると、ため息をつく。
「だから、彼にも新しい恋を見つけて欲しいと思ってるの。頼んだわよ、ロッテ」
彼女は悪戯っぽく笑い、私の肩を叩く。
「ってことで、私はアシェルくんをラスティンから奪ってくるわ」
ニコリと微笑むと、前を歩くアシェルの元へ駆け寄る。どうやら無理矢理にでも会話に入り込むつもりらしい。
(さすがソフィーだわ。頑張って)
彼女の前向きさに感服しつつ、全力でエールを送っておいた。




