星灯攻略同盟結成3
「私は別に……誰かを好きになるとか、そういうのはまだ考えてないの」
できるだけ平静を装って答える。しかし、ソフィーの目は鋭く光る。
「ふーん。でも、キャンプももう残り十日。運命の人を逃してから後悔するのは、淑女としてあるまじき失態だと思うけど?」
「私は、みんなを応援する側に回るわ」
断言するように告げると、ソフィーは腕を組んでじっと私を見つめた。
「ロッテ、もしかしてあなたは、アシェルくんが好きなの?」
「え?」
「だって、アシェルくんは、時折ロッテに、まるで監視しているような視線を送っているし、その逆もしかり。二人ともただならぬ雰囲気を醸し出しているわよ?」
「私もそれ思ったわ」
シンシアがソフィーに加勢する。
「それは……」
(ある意味あってるわ)
私たちは、慣れないこの生活から抜け駆けしないかどうか。そして、姉からのミッションの遂行具合を、随時チェックし合っている状況だから。
(でも、そんなこと言えないし……あっ!)
窮地に陥った私は、それらしい理由を思いつく。
「シンシアは知ってると思うけど、私と彼は同じ寮の生徒なの。つまり、三年間ほど同じ屋根の下で生活する仲間だから、他の人より仲間意識が強いだけよ」
(ま、ちゃんと会話を交わす仲になったのは、ここ数ヶ月の話だけど)
それは余計な情報なので、しっかり口を閉ざしておく。
「それに、シンシアの恋を応援するのも楽しそうだし、ソフィーがアシェルをどう振り向かせるのかにも興味があるから、私は二人を応援する側に回るわ」
念入りに言葉を重ねると、ソフィーはため息をつきながら肩をすくめた。
「まあいいわ。今は保留にしておく。でも、一応言っておくわね」
ソフィーは一息ついて続ける。
「好きな人は、ちゃんと決めておくこと。どんなに遅くても、最終日までにはよ?」
「えっ、どうして?」
「だって、星灯を一緒に浮かべる人がいないなんて、恥ずかしいじゃない」
ソフィーの目は真剣だ。
「いい?ぼっちで星灯を浮かべる姿を想像してみて」
言われた通り想像してみようとすると、ソフィーがナレーションを入れてきた。
「湖面に月を映す天空湖は、今まさに幻想的な雰囲気よ。そんな中、周囲にはカップルたちが仲睦まじく湖面を見つめている。前後左右、それはもうロマンチックな雰囲気がぷんぷん漂っているの。そんな中、ぼっちのロッテが一人で暗い湖を見つめている」
「不気味でしかないかも」
シンシアが眉根を下げる。
「あぁ、駄目。ロッテがそんなことになるのを、私は見ていられないわ」
ソフィーは大げさに首を振る。
「……わかったわ。でも、約束はできないかも」
根負けした私は、その場しのぎの言葉を返す。
「ええ、約束なんていらない。ただ、ちゃんと自分の気持ちに向き合うこと。それがこのキャンプの醍醐味なんだからね?」
ソフィーが優しく微笑むと、シンシアは「向き合うこと」と呟き、何か考え込むような表情になって、うなずいた。
(……好きな人、ね。そりゃそういう人がいたら楽しいんだろうけど)
彼女たちの言葉に影響されるように、胸の奥がかすかにざわつく。
(そもそも恋をするって、意識してできるものなの?)
曖昧な期待と不安を胸に、私は再びパドルを握り締める。
他のボートから聞こえる楽しげな笑い声と、波紋が湖面に広がる音が、しばらくの間、私の耳に響いていたのであった。




