星灯攻略同盟結成2
「ロッテ、夢がないことを言わないで。私が貸してあげた平凡令嬢シリーズ『男爵令嬢ナタリアの恋する奮闘記』を読んだ?」
ソフィーがジロリと私を睨む。
「と、途中まで」
「嘘だわ。目が泳いでるもの」
シンシアが余計な茶々を入れる。
「いい?」
ソフィーが前のめりになる。
「私はあの小説のヒロインのように、運命の人に巡り合って、穏やかながらも愛し愛される人生を送るのが夢なの。なのに私たち三人だけ、誰ともカップルになれなかったらどうしようって話!」
ソフィーは悲壮感漂う声で叫ぶように告げた。
芝居じみた彼女に、シンシアと私は顔を合わせて苦笑いを交わす。
「というわけで、残り十日を切った本日。ここで作戦会議を開きたいと思います」
突如真面目な顔になったソフィーが、私とシンシアに向き直る。
「作戦会議?」
シンシアが首を傾げる。
「そうよ。私たち三人でお互いの恋を協力し合って、三人とも最終日に一人ぼっちを回避するの」
異論は認めないと言った様子で、彼女は続ける。
「今ここに、『星灯攻略同盟』の発足を宣言したいと思います」
ソフィーが声高らかに告げた。
「星灯攻略同盟って、そんなに上手く行くかしら?」
困惑した様子のシンシアを横目で見つつ、私は突如訪れた好機に心が躍る。
(グッジョブ、ソフィー。シンシアの恋を表立って応援できるチャンス到来だわ)
この時を待っていたと、ほくそ笑む。
「まず第一段階として、二日後に行われるハイキングで、意中の相手とグループが一緒になる権利を勝ち取ること。第二段階は、その相手を『星影の誓い』のペアに誘うこと」
ソフィーは指を折り数える。
「そして第三段階が、素敵な男子と二人で流した灯籠が描く、『運命の星影』の模様を眺めることよ!」
ソフィーの乗りと勢いに押され、パチパチパチとシンシアと私は拍手を送る。
「ご清聴ありがとう。ってことで、私はアシェルくんを仕留めるつもり。シンシアはキャンプリーダーのイアン様狙いよね?」
サラリとソフィーの口からイアン様の名前が飛び出した。
「私は別にイアン様とどうこうなりたいわけじゃなくて……その……」
言葉に詰まるシンシアを見て、ソフィーがニヤリと笑う。
「誤魔化そうとしても無駄よ。あなたの視線の行く先を追えば誰でも気付くわ。それに、 イアン様に話しかける時のあなたは、顔がほんのり赤くなってるし、笑い方がいつもと違うもの。まさか、私たちにバレてないと本気で思ってる?」
「そ、そんなことないわよ!」
シンシアは慌てて手を振るが、ソフィーは容赦なく追撃する。
「大丈夫、私たちは味方だから。イアン様を振り向かせる手助けくらいしてあげるわ。それが『星灯攻略同盟』の使命でもあるわけだし」
「で、でも。ロッテはそれでいいわけ?」
ソフィーの勢いに押され気味のシンシアが、思わずこちらに助けを求めるような目を向けてきたので、私は軽く肩をすくめる。
(ごめんね、シンシア。ここは巻き込まれてもらうしかないわ)
シンシアからスッと視線をそらすと、何かもの言いたげなソフィーと目が合った。
「満場一致でシンシアはイアン様狙いで決まりね。で、ロッテ。あなたは?」
「私?」
「そうよ。私たちは同盟者なんだから、ロッテも誰か狙いを定めておかないと公平じゃないもの。じゃないと、作戦を立てるにも動きようがないし」
「それはそうだけど」
(困ったわ。好きな人なんていないし)
今は姉の件に手一杯なので、自分の恋愛なんて二の次だ。




