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誰が姉を殺したの?  作者: 月食ぱんな
第二部:諦めること
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夏だ、キャンプだ、最悪だ4

「僕は君を、人を巻き込むトラブルメーカーなシャルロッテ・ルグウィンだと認識しているが」


 どうやら彼なりに、私を気遣ってくれているようだ。


「ありがとう。褒め言葉として受け取っておくわ。それに、風向きは悪くないと思うし」


「どういう意味だ?」


 彼の問いと共に、よく喋るビスクドールこと、ソフィーさんを脳裏に浮かべる。


「うちのテントは、ソフィーさんの独壇場になってるから」


「ソフィー?独壇場?」


 どうやら彼は、自分を質問攻めした人物を記憶の彼方に飛ばしたらしい。


「ソフィーさんは、自己紹介の時、アシェルを質問攻めした子」


「よく喋る子か」


 あからさまにうんざりした表情になるアシェル。


「そう、あのお喋りなソフィーさんが、とにかく話の主導権を握ってて、みんなを恋バナに引っ張り込んでいる状況なの」


 アシェルが眉をひそめる。


「恋バナ?そんなものに熱中する暇があるのか?」


「お言葉ですけど、男子だって筋肉の話題に花を咲かせる時間はあるんでしょ?」


「……まあな」


 苦々しい表情になった彼が、愚痴を言い出す前に私は慌てて、会話の主導権を握る。


「でも、キャンプってそういうものらしいわ。みんなで恋バナで盛り上がることで、友情を深めるみたいな?」


 彼は呆れたように肩をすくめたが、興味をそそられた様子で続きを促す。


「で、君もその恋バナとやらに巻き込まれたのか?」


「巻き込まれたというか……話を振られたけど、浮いた話なんて何もないから。みんなから『あ、そうなんだ』で済まされちゃったけどね」


 アシェルはニヤリと笑う。


「それは、それで楽でいいじゃないか」


「楽かもしれないけど、少し寂しいものよ。話題に入れないから、なんとなく居心地が悪いっていうか」


「まぁ、そういうときは適当に相槌を打って、違うことを考えているに限る」


「あなたにそんな助言をされる日が来るとは思わなかったわ」


 軽く冗談めかして返すと、彼は鼻で笑った。


「生産性ゼロの筋肉自慢を延々とされるよりまだマシだ。君の愚痴は認めない」


 状況を想像し、確かに自分の方がマシな気がしてきた。


「あ、そうだ。アシェル、あなたはそれなりに女子に人気があるみたいよ。良かったね」


 アシェルは目を細め、私に疑いの眼差しを向ける。


「嫌味か、それ?」


「そんなことないわ。本当にみんなそう言ってたし。熟した葡萄のような、甘く優しい瞳の色が綺麗だって。みんなうまいこと言うわよね。やっぱり、前髪切って正解だったんじゃない?」


「さり気なく僕をけなしてるだろう……」


 アシェルは恥ずかしいのか、前髪に手を当てた。


「で、恋バナで盛り上がると、なんで僕たちにいい風が吹いているんだよ?」


「ソフィーさんによると、スペルタッチを奪われた今、他に楽しみがないから男女ともに、恋に落ちやすい状況らしいわ」


「つまり、封鎖的な状況を乗り切るため、仕方なく結んだ協力体制を、恋などと錯覚する危険が潜んでいるというわけだな」


「……なんかロマンチックに聞こえないんですけど」


「所詮、錯覚だからな。スペルタッチが手元に戻る二週間後には、みな我に返り、熱に浮かれた自分を振り返り、愚かなことをしたと恥じる未来しか見えないな。ま、僕には当てはまらないが」


 なぜか上から目線で自信たっぷり言い切るアシェル。


(ソフィーさんには、ぜひとも頑張ってもらって、余裕ぶっている彼をぎゃふんと言わせてもらいたいものだわ)


 恋に現を抜かすアシェルなんて想像出来ないため、ぜひとも見てみたいと思う。


「ま、シンシア嬢の方は君に任せた」


「え、丸投げ?少しは協力してよ」


「冷静に考えて見てほしい。恋愛に一切興味がない僕が、役に立つと思うか?」


 真面目な顔で返され、「確かに……」とうっかり同意してしまった。


「……とにかく、お互いこの環境には慣れないけど、なんとかお姉様からのミッションをクリアしないと。何の成果もなく帰国したら、延々嫌味を言われるに決まってるもの」


「その前に精神が崩壊するかもしれないが、な」


 彼の軽口に、つい小さく笑ってしまった。

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