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誰が姉を殺したの?  作者: 月食ぱんな
第三部:世界が終わる瞬間
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追伸、シャルロッテへ

 追伸、シャルロッテへ


 この手紙をあなたが読む頃、私の魂は散っているのでしょうね。


 私を失う経験を二度もさせてしまったあなたには、申し訳ないと思っているわ。だってカラスになってからのあなたとの関係は、子どもの頃に戻ったみたいで、ひたすら楽しい日々だったから。


 それに手紙って大抵『追伸』があるものでしょ?


 キャメロン王国は精神を整えるとされるエーテルが少ないから、あなたはいつも以上に自分の感情と向き合うことになっているでしょうね。ヒステリックになって、アシェルを困らせている姿が目に浮かぶわ。


 でもあなたを苦しめたくて、わざわざここに足を運ばせたわけじゃないの。


 いえ、嘘ね。


 私のちょっとした、あなたへの復讐だったのかも知れないわ。


 だって、あなたに避けられて、私は悲しかったから。


 でもどうか怒らないで。この手紙を破り捨てたりしないで欲しいし、最後まで読んでほしい。


 私にはあなたに、全ての人に隠し続けてきた秘密があるの。その秘密は、私の最大の罪であり、私がずっと目をそらし続けてきた事実よ。


 でも、もう隠しておくことができない。


 ここまでたどり着けたあなたには真実を知る権利があるし、私の罪を知ることで、この先も生きていくことを選択するであろうあなたには、何かを感じてほしいから。


 私が追加で残した動画を、あなたは見る。


 その中で、私は最も醜い自分を晒すことになる。


 あなたは、きっと私に幻滅する。


 完璧な姉だと思っていた私が、臆病で、自分勝手だったことに気づいてしまうから。


 けれど、それが私なの。本当の私の姿。


 私はずっと「助けてほしい」と心の中で叫んでいた。


 完璧であることを求められ、その期待に応え続ける日々は、わりと大変なのよ?でも、私は弱さを晒すより、完璧でありたいと思った。だから、「強くあるべきだ」「正しい選択をするべきだ」と自分に言い聞かせてきたの。それは今でも間違ってはいなかったと思う。


 むしろ良く頑張っていたと、自分を褒めたいくらいよ。


 私は、誰も傷つけない、傷つかない世界を望み、そんな世界はないのだと知った。


 生まれて初めて恋をした。でもそれは叶わない恋。


 匿名希望の魔導ネットワークに救いを求めたけれど、結局は音信不通になって終了。


 家族も友人も、誰にも理解して貰えず孤独を感じた。


 そんな状況が、徐々に私を追い詰めていったの。


 老衰で亡くなったモカの安らかな顔がずっと忘れられなくて、羨ましく感じて、私もそうなりたいって思った。


 自分のことで手一杯な私が、誰かを助けることなんてできるわけがない。だって、私は疲れ果てていて、動く力なんて残っていなかったから。


 それでも、あの人を救えなかったことを、私は今でも悔やんでいる。


 ねえ、ロッテ。私たちの一つ一つの行動や決断、そして存在そのものって、接点を持ったすべての人の人生に、何らかの形で影響を及ぼしているものなの。


 何もせずにいることすら、誰かに影響を与えているのよ。


 そのことを、あなたには知ってほしい。


 あなたは最後の動画を見て、私に失望するかもしれない。


 だけど、それでも、私はあなたにこう伝えたい。


 私の弱さを知ることで、あなたが少しでも強くなれるのなら。


 私の罪を知ることで、あなたが誰かを救うきっかけになれるのなら。


 どうか、私が抱えた重荷をあなたの中で、光に変えてほしい。


 あなたが誰かの救いの光となった時、私はあなたを許すことにするわ。


 愛を込めて、クラウディア

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