男の秘宝
「ごちそうさま」
俺は皿を洗い場に持って行き、洗う。
「じゃあお願い」
明里は俺に皿を任せて部屋へと戻っていった。
「おう」
明里に押し付けられる度に拒否するのだが、夕食の皿洗いだけは毎回受け取ることにしている。
「明里。お前も自分でやれ!」
親父は手伝おうとしないことが嫌なようで怒っている。
「良いのよ。あなた」
母さんは娘の意図を読み取り、仕方なさそうに庇っていた。
「そうなのか?」
親父もそう言うならと一言だけ出してそれ以上は言わなかった。
「ありがとう。晴翔」
「俺の分をやっただけだから」
俺はそう言うと自分の部屋へと戻っていった。
部屋に戻ると俺は一人、明日の準備を始めた。初めての高校授業。新鮮な気持ちでいた。
「確か。明日も特別授業があった気がするな…」
俺は今日もらったプリントを見て、確認をした。そこには明日の授業で必要となるものも書かれていた。
「計測のために必要な体操服。筆記用具。入学資料と教科書の購入リスト」
明日も変わらず色んなことがあるようで準備となるものが少なかった。
「お兄ちゃん。ちょっと…」
俺が部屋に戻って、しばらくして明里が体から暖かい湯気を出して入ってきた。
「おい、髪まだ濡れているぞ…」
明里はお風呂に入っていたようで、薄着の短パン。髪を拭きながら俺の部屋にやってきた。
「で…どうした?」
「そのさっきはありがとう」
親父のことが嫌いな訳でもないが、離れるためと言っても押し付けることがダメだと知っていながらやってしまったことに気にしている明里は謝りにきた。
「別にお前もたまにだからな。気にしてねえよ」
「ドキッ‼︎」
俺がカッコよくイケメン発言をすると、明里もノリに乗っかってきた。
「あぶねえ、危うく俺が立つところだったぜ」
「お前には生えてねえだろ!」
「上の方が…」
俺が明里のツッコミをするとそれ以上の変態発言でツッコミづらくなった。
「ふっ!さすが俺。兄者を凍らせてやったぜえ」
「男に言われても良いのかよ!」
俺は明里の自覚のない発言が気になり、質問を返した。
「何を言っている!お兄ちゃんだから良いのに…」
「え?」
俺はかわい子ぶりながら明里が意識しながら言っていることにびっくりした。
「って言うか…。他のやつに言わせてたまるかぁ!」
明里は右手で拳を作り、心の叫びを放った。
「こんな時間に叫ぶな!近所迷惑だろ!」
「何を言っている。俺と兄者の仲じゃないか」
明里は髪を靡かせ、カッコよくキメ顔までして言い切った。
「本当にバカだな」
俺が中学の頃もこんな感じだったのかと思い、振り返ってみたが、ここまでアホな言動をした覚えがなかった。
「ふぅ。やれやれ、これだからお兄ちゃんは最高だゼェ」
俺は止まらない明里の痛々しい発言と際どいワードチョイスに困惑しかなかった。
「それで…だ。兄者よ。今日の入学式の話を聞こうではないか」
「入学式?」
明里はベッドに腰掛け腕を組み話題を振ってきた。
「何もねえよ」
「何も無いだと…。バカな!入学式だぞ!初めて向かった高校の正門で乳でけえ姉ちゃんとかいねえのかよ!」
明里は両手をワシワシしながら煩悩たっぷりに問いかけてきた。
「ねえよ!」
「バカな!高校生。いや待て!まさか登校途中の曲がり角の出会い頭に乳のでけえ姉ちゃんとぶつかって押し倒したあげく乳を…」
「どんなエロゲーだァ!」
俺のツッコミに明里は険しい顔になり考え込んでいた。
「俺は兄者に良い思いをして欲しいだけなんだ!」
明里は神妙な面持ちで、布団の下を弄って三冊の本を取った。
「おい!待て!」
明里は俺の制止を振り切り、ページの隙間に指を入れ、本を開いた。
「な!おぅ!」
明里は歓喜の声で開かれた本を見つめた。
「さすがだ!兄者!俺好みのものあるではないか!」
明里は何か悟ったのか、俺に近づくとニヤリと笑い、胸を押し当ててきた。
「仕方ないなぁ。兄者には不足気味だろうが、俺のBカップで今回は許してやるかぁ」
明里は一切の恥じらいがなく、体を押し当ててきた。
「お前に許される要素ねえわ!」