飯塚家
「ただいま」
「お帰りなさい。どうだった?入学式…」
家へ帰ると母親が料理をして待っていた。
「何も変わらないよ…」
「そんなことないでしょ。友達できた?」
高校生にもなって俺の母親は俺の周囲の連中が気になる様子で聞いてくる。
「初日で友達できる陽キャじゃねえよ」
「そうなの?」
母親は高校を誰でも陽キャになれる幸せボックスに思っているのか首を傾げていた。
「母さん、兄貴は社交性の高い人じゃないよ。チキンだし」
「うるせえ。お前も同レベルだろ!明里!」
明里。絶賛反抗期に差し掛かっている拗らせ、厨二病の残念な妹である。
「ふっ。残念だったな。私は更に別のものをうちに潜んでいる。その力で学校では誓いを立てた存在がいるのだ!」
「恥ずかしくねえのかよ」
「何を言っている。無論!恥ずかしい!」
「じゃあするなよ」
頭が痛いことにそんなテンションでいることが正常運転であることあり、騒がしい。残念なことに更にこいつが言っていることがあながちまじである。拗らせているが、外向きはお嬢さま。育ちがよく見え、礼儀正しくいることもあるため、お友達が多い。(去年の情報)
「お前と言い、千佳と言い。どうしてそんなに表では良い子ぶっているんだよ」
「え?だってバカな男子が喜ぶだろ?」
こいつはこう言う性格があり、本当に残念なやつだ。歪んだ考えを持ち男子に近い。
「くっくそぉ。正解だよ!」
「ふっ。流石、俺。下には付いてないが。男の夢と希望を持った紳士だぜ!」
明里は自分の胸を服越しに持ち上げた。
「こらっ!女の子なのよ。もっと大切に扱いなさい!」
「いや。そこじゃねえだろ。まずは節度を…」
母親もこんな調子であるためツッコミが大渋滞するのである。加えて…
「帰ってきたぞ!晴翔!ハッピーバースデイ!」
「いや。親父。そのノリはついていけねえわ」
突然帰ってきた男。クラッカーを鳴らし、誰の誕生日でもないにも関わらず、楽しむ。そんな親父である。
「何だ?明里も乗り気じゃないのか?」
「勘弁してくれ」
明里は反抗期だ。だが珍しいのか俺の家では男である俺とは普通に話すが、親父とは口を聞こうとしない。
「今日もなのか…」
「なあ。晴翔…。俺、明里に何かしたか?」
こんな時、息子の面から父親に助けを出す「特に」とか言いたいが、残念だがスキンシップの激しい親父であるため嫌われるのも心当たりがあるのである。
「抱きつくのをやめたらどうだ?」
「何を言っている!可愛い娘を愛さない親がどこいいる!」
親としては非常に良いのだろうが、子どもからすると嫌なものがある。それも異性である親父から抱きつかれるのは身の毛が与奪気分であろう。
「もう!ご飯ができたのに。ねえ。晴翔?明里を呼んできてくれる?」
「分かった」
俺はご飯ができたことを明里に伝えるため部屋へと向かった。