二つ名
「肉…」
「回鍋肉な…」
明里の目には肉しか見えていないのかと思えてしまったが、しっかり野菜も入れていた。
「兄じゃ。安心して良いぞ。私はデブらないように全て食べるようにしているから」
「何だよ。その痩せていない奴が言いそうな格言は…」
俺は明里を見つめて腹部辺りに目を下げた。
「私はこう見えてナイスボディなんだよ!クラス一…いや校内一に決まっている!」
こんな残念な姿を明里は外では一切見せていないこともおかしなことだが、どんな魔法で隠しているのかもなぞである。
「お前はよくそんなので聖歌の姫とか言われるよな」
「何のこと?」
聖歌の姫。それは中学の頃に聞いた明里のあだ名であり、合唱部に入っていることも含めて聖歌なんだろう。未だに学校中で広まっている名前である。
「惚けるな。今の姿は精肉の姫って所だろ」
「失礼だな~」
明里は呼ばれること自体にはうれしそうだが、拗ねてながら肉を突く姿が余りにも理想と違い過ぎて俺からしては残念なあだ名でもある。
「そうだ!兄じゃにも良いあだ名を授けよう」
「いらん」
「不死鳥の死人!デビルフェニックスってどうだ!」
死んでいるのか生きているのかわけが分からない中二病のソウルネームを付けられた。
「どんな罰ゲームだよ。じゃあ。聖歌の姫さま」
「何だねデビルフェニックス」
「恥ずかしいだろ」
「当たり前に決まっているだろ!」
明里はこの流れが本当に好きなようで自分を辱めることが多い。
「アホかよ」
「止してくれよ。天才だなんて」
「言ってねえよ。どう解釈したらそうなる」
明里との止まらないコントは飽きることはない。
「母さんも入る?」
「入れなくて良い」
「良いの!」
母さんは明里の誘いにとても嬉しそうにしており、俺に代わって母さんが参加しだした。
「聖歌の姫ちゃん。ごはんはちゃんと食べてね」
「もちろんだよ。えっと…聖と死を従える婦人よ!」
良くもまあ。すぐに恥ずかしい二つ名を出すなっと感心したが、気になるところがあった。
「おい。明里!」
「何だね。死の使者デビルフェニックスよ…」
「ふざけるな!やっぱり俺が死の役回りかよ!って最初から突っ込むべきだったな!中二病!」
明里は俺をかっこよく呼びたいみたいだが、死んでいる人間がかっこいいというのもどうかと思えた。
「じゃあ。お父さんは?」
「ゾンビ。だから私が払うの」
「おい」
明里は徹底して親父には厳しくしており、俺も死んでいるのを見て気になってしまった。
「デビルフェニックス!死んでも生き返るから安心して良いよ兄じゃ」
俺の考えを読み取った明里はすぐに補足してきたが、明らかにふざけていた。
「明里ちゃん。もっと大切にしてよ。私にとっては勇者だから」
「じゃあ。元勇者のゾンビで」
「ならオッケーね」
どの辺りがオッケーでどの辺が勇者なのか理解できないが、二人の世界が俺の知りえないファンタジーが繰り広げられていることだけが分かった。
「さっすがおかあさん!」
「もうっ。褒めても笑顔しか出ないわよ」
二人の話を他所に俺は、ご飯の準備をして席についてようやく俺も夜ご飯を始めた。
「いただきます」




