無駄な争い
「ふぅ。暖かった」
「明里ちゃん。ご飯の準備を手伝ってくれる?」
「分かった」
風呂から上がった明里は肌着とショートパンツとラフな格好で現れた。
「何をすれば良いの?」
「冷蔵庫からボウルを出してくれる?」
「分かった」
母さんは明里と話しながら手際よく野菜を切っていた。
「今日は何にするの?」
「中華にしようかな?麻婆豆腐と餃子。回鍋肉を…」
母さんは得意げに台所に置いていた餃子の皮を見せてきた。
「中身は?」
「そのボウルに入っているから」
俺と明里のほうを見た母さんは楽しそうにしているが、面倒な作業を進んでやろうとは思えなかった。
「それは俺もだよな…」
「お願い」
母さんが回鍋肉を作り、俺と明里で餃子を包む時間が始まった。
「できたやつから焼こう」
「そうね」
明里はすでにお腹が空いているのか。包まれた餃子を見て提案してきた。
「回鍋肉ができたら私も手伝うね」
「うん」
俺と明里は台所に入らず、リビングで二人並んで餃子を包むことになったが、時折。お互いの手の甲に当たってしまう。
「兄じゃよ…何か恥ずかしいぞ」
「こんな空気にしたお前が悪いがな!」
二人の間には生ぬるい空気ができており、お風呂のことを思い出してしまっていた。
「作った餃子の個数で勝負でもするか?」
「賛成!」
明里の扱いを極めている俺からしても居心地が悪いため。こんなときこそ、明里の戦い好きな性格を活かした勝負を吹っかける。
「二人ともありがとうね」
明里との勝負は俺が一六個。明里が一四個と三〇枚入りの餃子の皮を使い果たして試合が終わった。
「俺の勝ちだな」
「何を言っている!その餃子は雑過ぎるからダメだ!」
明里の丁寧に作られたものに比べてうまく包まれていない俺の餃子の出来に文句をつけてきた。
「焼くって話はどうしたの?」
「あ…」
戦いに集中してしまい本来の目的を忘れてしまっていた。
「敗者が焼くだろ」
「兄じゃよ…私はお腹が空いたから後のことを頼んだ」
明里は敗北を認めようとはせずにいすに座って動こうとはしなかった。
「お前は…」
「餃子の余りはどうする?」
俺はボウルに入っている肉ダネを見せて聞いた。
「麻婆豆腐に入れるよ」
母さんは麻婆豆腐に入れるというと、フライパンに出して広げながら焼き始めた。
「ご飯を食べて良いよ」
「はい」
母さんに言われて動きだした明里は炊飯器開けてご飯を装ぎ、席に着いた。




