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賑やかな家

「ただいま」

「おかえり」

家に着いた俺は玄関に立ち尽くす。制服が体に引っ付き、重く感じていた。

「傘を忘れたの?」

「濡れた」

一向にリビングへ来ない俺が気になって母さんは玄関に来た。

「体冷えるでしょ!お風呂に入って!」

「分かった」

俺は言われるまま脱衣所に向かい、お風呂へ入ることにした。

「さむ…」

春とは言えども雨で気温が下がり、体が冷えていた。

「シャワーに当たりたい」

風呂のシャワーに浴び暖かさがじんわりとし、寒く感じていた箇所は(かじか)んだようになり、熱く感じる場所と寒く感じる場所があった。

「暖かくなってきたな」

浴槽にお湯が溜まり出し、湯気も立ちだした。

「ふぅ」

俺が落ち着いてお湯に浸かると玄関から母さんの声が聞こえてきた。

「ちょっと!どうして明里(あかり)ちゃんも濡れて帰ってきたの!」

「ふう。良い汗をかいたぜ」

「何を言っているのよ!」

「ちょっと!雨に濡れる女子それを男子は興奮するんだよ!」

「馬鹿なことを言わないで晴翔(はると)がお風呂に入っているから後で入りなさい!タオルで拭きなさい!」

「ええ〜」

俺も大概だが、やはり妹ながらバカという言葉が最も合っていると感じた。


母さんと明里の話し声が聞こえる中、俺は風呂をじっくり堪能していた。

「あぁ〜」

『バンバンバン!』

「開けろ!大阪府警だ!」

急に風呂の扉が叩かれた。

「お前はアホか!雨で冷えているだろうが!さっさと体拭け!」

「え〜。もっと乗ってよ〜兄者〜」

不透明な扉から明里の微かな気配とはっきりとした体型が見えていた。

「お前…服を着ていないな…」

「正解!」

明里は前を隠さずに勢い良く扉を開けてきた。

「ふざけるな!少しくらい待てよ!」

俺は咄嗟(とっさ)に扉の方から目を逸らした。

「ねえ。良いじゃん。一緒に暖まろうよ」

「お前には羞恥心(しゅうちしん)がねえのかよ」

明里の行動に俺は常に迷惑をかけられている。その中でも今回は上位に当たるだろう。

「ない!」

「どうせ後で恥ずかしくなるだろが。さっさと風呂から出ていけ!」

俺はこの後に明里が考えそうなことをあげて忠告した。

「ふっ。さすが兄者だ。私の考えをそこまで理解しているとは…」

「だったら」

「だが断る!こんな機会滅多にない!さあやろう!私も兄者の裸が見た!さあ私の裸を見ろ!」

明里は俺の忠告にも臆することなく堂々と言いやがった。

「おい。一応言っておくが、そんなことしても無駄だぞ」

「何…だと!まさか兄者…」

明里は思っていた以上に驚いており、俺の話に食いついてきた。

「お前が言ったはずだ。制服の透け感が良いんだよとな」

「くっ!さすがだ。血は争えないな!私も母さんの最重要命令がなかったら…」

明里は悔しそうに拳を作った。

千佳(ちか)の新しい制服に透ける下着。お前はそれに勝てまい!」

「な!私は千佳姉(ちかねえ)の胸から腰にかけた曲線美に勝てないのか!」

帰り際。千佳の濡れた制服を見えた俺は(かろ)うじて女子の明里に熱く語った。

「お兄さま。(わたくし)殿方(とのがた)に肌を見せませんの」

「外の口調になっても無駄だぞ」

「責任取ってくださるかしら?」

「いやかしら〜」

明里のお(じょう)さま口調に慣れないが俺は負けじと跳ね返した。

「もうお嫁に行けませんわ…。シクシク」

「じゃあ。俺上がるわ」

冷め切った俺の対応に明里は焦っていた。

「おい待て…」

「なんだよ」

俺が風呂から上がろうと扉を右手で掴むと、明里は左手を掴んできた。

「兄者よ。千佳姉の話で逸らしたつもりだろうけど。私の体を見た…よね」

「何のことだよ」

俺は明里の声に目が泳ぎ、惚けたように言い返した。

「とぼけなくていいよ。私の背中を洗って」

「なんでだよ」

明里は俺の動揺している姿を他所に背中を向けてきた。

「よろしく〜」

「はあ」

俺は明里の背中を洗うことを断れず、ため息を吐いた。

「お前はもっと兄に優しくできないのか」

「何を言っている!兄は道具だ!上手く使うのが妹である私の使命!」

「殴って良いか」

俺は明里の背中を洗いながらボディタオルを強く握った。

「大体。一つ下だもんそんな関係じゃないでしょ」

「それもそうだな」

一つ違いの兄妹。風呂を一緒に入ることはないが、年齢さがないため双子のような関係になってしまっている。

「気持ち良いか?」

「うん」

ご機嫌な明里は俺が背中を洗うとそのまま浴槽に入って暖まった。

「じゃあ俺は上がる」

「は〜い」

気の抜けた明里の返事を聞いて俺は風呂から上がった。

「晴翔?明里ちゃんは?」

「風呂に入ったが?」

母さんは俺に明里の居場所を聞いてきたが、何か用事でもあったようだった。

「ご飯もできたから明里ちゃんが上がってくる前に机の辺りを綺麗にしてくれる?」

「分かった」

俺はリビングに向かい、母さんの料理ができるまで机を片付けることにした。

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