春の空
昼下がりの教室。春の暖かい光、若干聞こえてくる先生の声。そこはどこよりも眠くなる環境だと思える。
「授業が始まってから寝るとは…」
どうと言うこともない。教室は顔を伏せた生徒がおり、先生は呆れたため息を吐いているだけだ。
「佐伯!起きんか!」
先生と怒号に意識を朦朧としていた生徒たちはハッとなり、周囲を見まわした。
「なんですか?相田先生」
「学校が始まって早々に寝るやつがいるとはな…」
生徒の笑い声に教室の賑やかになり、眠気が吹き飛んだ。
「授業をちゃんと聞けよ」
先生の注意に生徒たちは軽い返事をした。
「今日から本格的に授業たが、現代文は生活をする上で近いものだ」
俺は先生が急に話した内容に『何を言っているんだ?』と思えてしまった。当然、生活するには言葉を使う。そんな当たり前を高校の先生が言うのか?と感じてしまった。
「先生、それは当たり前じゃないの?」
佐伯は先生の話に自然と応えた。
「そうだろう。だが、ここで指しているのは文学だ。お前たちは今の天気をなんと表現する?」
教室の窓から空を眺めて生徒に尋ねてきた。
「そんなの…くもり…ですよ」
「そうだな。だが、こうとも言える…雨模様と…」
曇天の空は灰色になり、今にも雨が降りそうにしている。
「だけどそれは同じような意味じゃないですか」
「そう…だな。だけど作品で表現した途端。それは何かの訪れを表現することだってある」
空の変化に先生は作品の表現について熱弁する。
「今のは季節の表現する時に使うものだが、現代文は…言葉には多くの言葉が含まれる。人の気持ち、季節、場所。色んなものを表現していると思って受けてもらいたい」
先生が話した内容は国語の先生にしては風情を感じさせるものだが、一方でそれを面倒な奴と解釈するかは人それぞれだろうと雨の降り始めた空を見て思えてしまった。
「あの先生の話、訳わかんなかったわ!」
「わっかる!何言ってんだって奴!」
授業が終わった教室は変な授業の話で持ちきりだった。特に佐伯の周りには何人も集まっていた。
「お前、やけに先生から質問を振られていたな!」
「あんなつもりではなかったんだよ」
笑う生徒の中、佐伯は困り顔と少しの申し訳なさを見せていた。
「でもよ。変だけど妙な説得力があると言うか」
「わかる」
学校生活には先生への愚痴が付き物だと思っていたが、一部を除いて現代文の相田先生は、面白い先生として定着しているようにも見えていた。
「晴翔は相田先生、どう思った?」
「俺かよ」
佐伯は集まりから離れた俺を指名して話しかけてきた。
「そうだな…」
俺の感想だが、面倒な先生にも見えたが、面白い先生に見えたのが第一印象だった。
「何というか。小学校でやった作者の気持ちを答える問題に似ているな」
「確かに。答えがないやつか」
俺は佐伯と話をしていると横にいた千佳はやけにこっちを見ていた。
「何だよ」
「何でもないわよ」
千佳はそう言うと廊下側へ顔を向けてそれ以上話さなくなった。
「晴翔はもう少し乙女心ってやつを理解することが必要だな」
佐伯は俺よりも理解している風に言っているが、俺からすると『お前からは言われたくない』と言いたくなった。
「授業が始まる前にトイレに行こうぜ」
気づけば時間はすでに次の授業の四分前になっており、生徒たちは準備も始め出した。
「六限って何だっけ?」
「社会だったはずだぞ」
「面倒臭えサボりてえな」
「学校が始まったばかりなのに勇気あるな」
男子生徒は最後の授業だと言うのに面倒くさそうにしており、放課後の話ばかりしていた。
「晴翔。放課後にゲーセンに行くがお前も来るか?」
「いや。部活を見にいかねえのかよ」
「あっ。そういえばそうだな」
佐伯は俺のツッコミに驚いた表情で思い出した。
「悪い部活を見に行くわ」
「俺もだな」
男子生徒全員が部活のことを忘れていたようで気まずそうにしていた。
「じゃあ。休みの日にもで行くかな」
「そうだな」
お気楽に話しながら俺たちは廊下へ出た。
「バカ…」




