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日頃の行い

「お!晴翔(はると)じゃねぇか!久しぶりだな」

体育館に向かうと俺も先ほどの千佳(ちか)木下(きのした)さんのように仲の良い友達がいた。

佐伯(さえき)。久しぶりってほどか?」

前に会ったのは中学の卒業式、大して時間もたっていないこともあり、ツッコミを入れた。

「こう言うときは同意するものじゃねぇのかよ!」

佐伯はいつもテンションが高く、ノリを第一に考える面白い奴である。

「それで…だ。俺の愛する安堂(あんどう)さんはどこにいるのか知らないか?」

佐伯は中学になって同じ学校になったため、千佳の性格を知らずに表の顔だけでお熱になった一人でもある。

「知らねえよ」

「同じ小学校だって言うのに好きにならないのは可笑しいだろ」

千佳がズボラで短気な性格であることを何度も俺は忠告したが、未だに好きなようで、ここまで来るとマゾの素質すら感じてしまう。

「お前に忠告するのは何度目になるのか。あいつは…」

「あいつは?」

「ズボラで短気な性格だと…」

俺が続け話すとやけに静かになり、肩を叩かれた。

「誰のお話をしていたのですか?」

俺の背後から来たのは、聞き飽きてきた猫を被った千佳だった。

「安堂さん、おはよう」

「おはよう。佐伯くん」

千佳は俺を見るなり、鋭い視線で睨みながら佐伯と話し出した。

「おい。晴翔、どうしたんだよ何も言わないでよ」

佐伯は何も理解していないだろうが、聞かれてしまった状況もあり、口を出しにくいことになっていた。

「なんでもねえよ」

俺はそう言って千佳と視線を外した。

「俺、一組だけど二人は何組?」

「一組だよ」

佐伯は非常に嬉しそうに話しており、話題を続けた。

「っと。千佳ちゃん、私たちも席に行こう」

気がつくとなんかの生徒は席に着いており、緊張しているように見えた。

「うん!あ!飯塚くんたちは男子たちと仲良くしていてね」

安堂と飯塚。いやでも出席番が隣になることに拒否反応があるようで千佳は俺に釘を刺してきた。

「分かってるわ」

俺は漸く千佳と声を交わした。

「晴翔。お前、行かねえのかよ」

「言われた通り後で行くよ。あいつも一緒にいるのは嫌だろうしな」

俺は千佳に言われた通りの返事をして、中学の時の友達のところへ向かった。

「晴翔くん。久しぶりだね」

「俺の感覚がおかしいのか?皆久しぶりって言うが…」

「う〜んどうだろう。僕はあまり会えていなかったから寂しくて言った所もあるからね…」

可愛らしい容姿口調も僕っ子の男。渡井(わたらい)カオルが声をかけてきた。

「カオルは相変わらず女子人気高いな」

「そんなことないよ。僕、見られるのは恥ずかしいんだよ」

どうにも男として友達になると分かるが、母性を動かすものがあるようで女子人気を画一している。

「カオルくん、その人は?」

「僕の友達の飯塚晴翔くんだよ。もちろん、特別な…ね」

カオルはこちらを見てきてにこやかに笑顔を作ってきた。中学ではこの調子で女子生徒が集まり、男子と話すたびに薄い本のネタにされた記憶があった。

「カオル。責めて口調を…いや。言い方を…。姿勢を…」

何もかもがツッコミたくなり、何から言うべきなのか考えてしまった。

「ハルトの強気な態度にタジタジなカオル。ハルカオは良いよね!」

「何言っているの!いつも困らせるカオルくんが攻めて、晴翔くんが困るこれが鉄板でしょ!」

「ねぇ。晴翔、どうして女の子が楽しそうに話している時、僕の耳を抑えるの?」

入学早々、腐った叫びが体育館に響き渡る。

「死にテェ〜」

俺は天を見上げて現実逃避を始めた。

「よぅ!飯塚。中学の卒業式以来だな!」

「たっくんだ!」

「カオルも変わらねえな」

イケメンが突然、現れたことに気付いた女子たちは意中のカオルが呼ぶ「たっくん」に過剰に反応した。

「タクカオ」

「タクカオね」

腐った女子は言い争うことなく頷き合い、引き笑いが「腐腐腐腐腐…」と聞こえてきた。

「何とか逃げ出せた」

女子の異常な勢いに精神的に疲れていると、佐伯が話してきた。

「面白かったぞ」

「他人事だからだろうが!」

笑顔で楽しそうにする佐伯は性格が歪んでいるに違いない。

「あれは精神的に魂が来るな」

「あ〜。海外のファンタジー映画で見たな。そんなの」

俺はどんな映画なのか気になり、聞こうとしたが、すでに姿が見えなくなっていた。

「えっと。佐伯は?」

「あそこだよ」

聞こえてきたカオルの声と指の先には女子に袋叩きにされれいる佐伯がいた。

「言わんこっちゃねえな」

「誰がディ◯ンターよ!」

「そこまで言ってねえよ!」

佐伯の高校生活はここで終わった。


「終わらせるな!助けろ!」

「入学式が始まるから席に行こうぜ」

「おい!」

佐伯の助けを求める声に誰一人として耳を向けず、決められた席へと向かい始めた。

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