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昼間の憩い

「どうしたんだよ。晴翔!授業が終わって昼飯っていうのに調子でも悪いのか?」

「いや。何でもねえよ。ただ、妹のご飯が…な」

俺は弁当だ。残念ながら。それも壊滅的に。

「妹さん?手作りなのですか?」

「ああ」

一応の料理になっているのだが、その中でも盛りつけに本気を出すようで絶対に見せたくもないのである。

「お!飯塚の妹さんか!それは気になる。可愛いのか?」

「おうよ!中学からの親友が教えよう。こいつの妹はな。ものすごーく可愛い。まあ。安堂さんみたいな存在だな。だが…」

明里の容姿を知っている佐伯は口が軽く余計なほどにスラスラと話し出した。『あとで下剤をぶち込んでやる』と思えてしまうくらい余計なことばかりを話していた。

「そうなのですか?」

「写真とかねえのか?」

国吉も俺の妹に興味があるようで話しにくい気味で尋ねてきた。

「あったっけ…」

俺は妹の写真を常に持っている趣味がなく、家族で遊びに行った時の写真を頼りに写真アプリを開いた。

「なんだこれ?」

俺が知らないうちに写真アプリの新しいフォルダが出来ており、フォルダのタイトル名が『I LOVE YOU』の時点で誰の仕業なのか分かるような写真が十数枚も保存されていた。

「この人が妹さんですか?」

「ああ。そうだな…」

そこには家にいる時の明里の写真ではなく、外向きの姿の写真だけだった。俺はほっと落ち着き、肩を撫で下ろして息を吐いた。

「それにしても写真フォルダを作るとは…」

佐伯は何もかも分かっているようだが、楽しそうに俺を煽り出し、笑うのを我慢していた。

「テメェ」

「可愛いのにどうして晴翔はこんなにも疲れているんだよ!」

国吉は明里を気に入ったようで俺に妬みを込めて睨んできた。

「それで…その子のお弁当が…」

「ああ」

俺は朝の確認をしていなかったこともあり、恐る恐る弁当の蓋を開けてみた。

『おにいちゃんLOVE♡』

弁当の蓋を開けると白いご飯の上には鮭フレークで文字が書かれていた。

「死ね!」

佐伯と国吉は恨み全開の目で俺を睨み、佐々木さんは明里の力作を目を輝かせて見つめていた。

「しゃ…写真を撮ってよろしいですか?」

「う…うん」

佐々木さんは嬉しそうだったが、どうも俺の頭では決めポーズして喜ぶ明里の姿がチラついてしょうがなかった。

「可愛いですね」

「そ…そうかな?」

俺は佐々木さんに近寄られ、さらに佐伯からはすごい目を向けられた。

『絶対!絶対!明日からは学食にする!』という強い決意と『帰ったら明里を処す』と確固たる意志が芽生えた。

いや…待てこれも織り込み済みだ。あいつは俺からの仕返しすらもご褒美と感じる変態であったことに思い出した。

「どうした?晴翔。次は空でも見上げて。食わねえのか?だったら…」

俺は佐伯が俺の弁当に伸ばしていた箸を弾き、無心に食べ尽くした。絶望としか評せない気分になった。

「おい!どうして食わせてくれない!」

「安心しろ。お前には食わせない」

薄れゆく意識の中、弁当に入っていた一つのおかずから妙な痺れすら起きていた。

『ロシアン弁当!』

『妹の楽しい実験』がこの弁当であり、一見、美味しそうに見えるものでもおかずの一つには強烈なものを入れて遊び心を加える。それが明里の愛情なのだそうだ。

「久々に見たな。こいつの白目。こいつの妹の料理を調理実習の残りで食べたことあるが、美味しいのに絶対に弁当だけは食わせてくれないんだよ」

佐伯が知っている料理は料理であり、俺の弁当が料理が実験であり、俺がそれの実験物であることが分かっていないのだ。

「でも良いな。私、妹さんに教えてもらおうかな」

俺は佐々木さんの恐怖に近い発言にハッとなり、意識が蘇った。

「それはやめておいた方がいいです」

強い意識を持ち、願いを込めた言葉で佐々木さんに伝えた。

「う…うん…」

佐々木さんをガッカリさせたことが心苦しくなり、申し訳なくもあった。

「流石にあいつを紹介するのはまずいからな」

俺は弁当を食べると教室へと戻った。

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