暖かな昼上がり
二日目の授業が始まり、今は四限目の中盤。春の暖かい教室は絶好の昼寝時間になっており、俺も目を閉じて…。
「起きんか!飯塚!」
「痛!」
教科書の角で頭を小突いてきたのは担任の先生でもあり、英語の先生でもある小野先生だった。
「昼寝は後でしろ!」
「うっす」
先生は妙に楽しそうな表情で授業をしており、その後の時間は眠そうにしていた俺にひたすら質問を吹っかけてきた。
「じゃあ。お前に質問だ。これは何と読む?」
黒板に書かれていた単語は中学一年生でも解けるような問題だった。
「先生。暇なんですか?」
「ああ?」
俺が冗談半分で話しかけた言葉にとても鋭い眼光で睨んできた。
「暇だな」
「あ…そう」
先生が授業中に言う事ではないが、明らかに集中が途切れた生徒が何人もいた。その筆頭には当然、奴もいる。
「起きろ!佐伯!」
「痛いじゃないすか!先生」
「じゃあ。佐伯、次の会話を解いてみろ」
佐伯は急に振られた問題を見ると固まり、前に出ることも答えようともしかなかった。
「せめて起きていることくらいしていろ」
先生はため息を吐くと問題を解ける生徒がいないのか探すように教室を見まわした。
「安堂はどうだ?」
千佳は席を立つと何も動じることなく問題の答えを答えきった。
「正解だ!」
「さすが安堂さんだ」
容姿端麗、才色兼備と言われる存在はこう言う奴のことを言うのであろう。周囲から集まる熱視線に千佳は一心に受けて席に座った。
だが…。俺から見えた方向には妙に気になる視線があった。容姿端麗だからこそ、才色兼備だからこそ妬み僻む人間はどんな場所でもいる。
授業が終わり、昼の休み時間になると俺たちは各々でご飯の準備を始めた。ご飯をコンビニで買ってきたやつ。弁当を準備してきたやつ。そして学食へ買いに行くやつとそれぞれに分かれていった。
「おい。晴翔!昼飯を食いに行こうぜ」
「ああ」
佐伯は自分の席から俺を呼び、昼飯に誘ってきていた。
「さ…佐々木さんもどうかな?」
「え?う…うん」
佐伯にしては頑張った方だろう。珍しく気になる子を誘う姿に俺も感心した。
「大凱も行こうぜ」
「おう!」
俺たちは結局、休み時間に話す連中で集まり、固定していた。
「安堂さんも一緒にどうかな?」
国吉は千佳にも誘っており、人気な千佳は当然ながら周囲から誘われていた。
「私、杏里ちゃんと食べるので…」
木下さんを盾のように扱い、やんわりと断った。
「そっかぁ。仕方ないよね」
どうも千佳の意見には疑いを持たないようでそれ以上強引には誘わなかった。
「行こう。杏里ちゃん」
教室に残っていたのは俺たちと千佳を狙っていた男子とカースト上位の女子集団だけになっていた。
「今の聞いた?…」
「さすが…」
女子たちの会話にはどうも妬みがつくのか。影内でコソコソと話していた。
「行こうぜ。晴翔!」
「お…おう」
俺は面倒な女子の会話を耳から遠ざけ、佐伯たちと学食へ向かった。




