類友=悪友
「晴翔。よくもやったな…」
佐伯は佐々木さんの前でかっこいい姿を見せたいが、ここまで来ると恥ずかしいようでアシストした俺の腹を殴ってきた。
「何も悪くねえだろ」
「それよりも良いのか?佐々木さんの前で…」
佐伯はハッと我に戻り、後ろを振り向くとニコニコしている佐々木さんが見ていた。
「佐伯くん。飯塚くんが可哀想だから…」
「う…うん」
佐伯は佐々木さんの方へ向かい話を続けていた。
「俺は無視かよ…」
「大丈夫か?」
俺は残された国吉くんに見られる存在になっていた。
「晴翔、邪魔。本当に馬鹿なんだけど」
「安堂さん!」
教室の後ろで佐伯に殴られ、腹を押さえて蹲っていると廊下から戻ってきた千佳にゴミを見る目つきで注意してきた。
「おい。俺は佐伯に殴られて蹲っているんだろ。心配しろよ」
「馬鹿じゃないの?そのくらいでヘタレてんじゃないわよ」
千佳は俺をそれ以上相手にせずに席へと戻っていった。
「大丈夫?」
一緒にいた木下さんはそんな千佳とは対照的に俺を心配して話してくれた。
「ああ。ごめん。ありがとう。木下さん」
「良いよ。気にしないで。私が気になっただけだから」
そっけなく優しさを見えている木下さんは優しい笑みを浮かべて手を差し伸べていた。
「杏里ちゃん。そいつは良いから席に戻ろう」
木下さんの優しい姿に水を刺すように千佳は木下さんを呼んで俺から離そうとしてきた。
「う…うん」
木下さんは千佳に返事すると俺の手を掴んで立たせ、申し訳なさそうに急いで向かった。
「どうしてあんな奴に優しくするのよ」
「だって…」
木下さんと千佳の話は周りの話し声でかき消され、気になる場所で聞こえなくなってしまった。
「大丈夫なのか?飯塚くん」
「木下さんのおかげで何とかな」
俺を眺めていた国吉くんは心配な顔をしておらず、けろっとした顔で話しかけてきた。
「もしかしてお前って佐伯と同じ系譜のやつか?」
「類友と言っていいな」
国吉は絶対に碌でもない性格であり、残念ながら俺と長く仲良くする仲間の一人になるのである。
「なあ。どうして俺の周りはこうも似た奴が集まるんだよ」
「それは自分自身がそうだからじゃないかな?」
国吉は本当に俺と佐伯にちょうど良いくらいの酷い性格だと理解できた。
「じゃあ。この先よろしくな」
「おうよ。何かあったら言ってくれよ。揶揄うのに協力してやる」
俺は二日目にして漸く残念な新たな友達が一人増えることとなった。
「授業がそろそろ始まるし、席に戻ろうぜ」
国吉が指で差した方を見ると時計の針が授業の始まる二分前になっていた。
「そうだな」
俺は国吉とは席が近いわけではなかったため話を切り上げ、そのまま席に戻った。
「あなたたち後ろの方で何の話をしていたのよ」
「え?」
席に戻るとすぐに千佳が先ほどまでも会話を聞いてきた。
「大した話じゃねえよ。佐伯の部活の話と佐々木さんの部活の話をしていただけだ」
「佐々木さん?」
千佳は佐々木さんとの面識がないようで首を傾げてこっちを睨んできていた。
「佐伯の意中の相手だよ」
「ああ。え?あんなやつでもいるの?」
千佳はとてつもなく酷い驚きをしており、俺もどうも納得してしまった。しかもそれが佐々木さんにも意識があることも何となく感じ取れたのが本当に解せない。
「まあ。そう簡単じゃねえだろ。あいつの性格だし…」
「それもそうね」
俺は千佳との話でそんな考えが脳裏に過ったが、言った場合に面倒になりそうだったこともあり、話す内容を自制した。




