恥ずかしい感情
「今の話を聞こえた?」
「いいえ。特には…」
佐々木さんは話までは聞いていなかったようで佐伯もほっとしていた。
「それでどうしたの?」
「えっと。皆さんの笑っていた声が聞こえたので気になって」
本当に聞いていなかったのか気になるくらいだが、佐伯も話を誤魔化しながら話だした。
「部活…。そうですね。私も入りたいのがあるんです」
「へぇ。何に入るの?」
「えっと。か…家庭科部に」
佐々木さんは恥ずかしそうに声を出し、聞こえては消える。儚げでありながら、心地の良い気分になった。
「どうして家庭科部に?」
俺は微笑ましくもあり、佐伯のいる手前。顔には出さないように質問をしていた。
「えっと…お嫁さんになりたくて…」
話の質問にしてみれば不足だろうが、可愛さがあるため、そっちに考えがいってしまう。
「佐伯、大丈夫か?」
可愛く見えたのは間違えなく俺だけではなかった。千佳とは違い、純粋な感情が込められた話し方に俺でさえ可愛く見えた。だからこそ、可愛いと言っている佐伯の心配があった。
「……」
「おい!大丈夫か?」
佐伯は立ったまま夢心地になっており、想像にしかいない佐々木さんを見ていた。
「しっかりしろ!」
「は!」
佐伯は漸く現実世界に戻ってきた。
「悪い、意識が飛んでいた」
「分からないこともない」
俺は佐伯の言っている話に納得すると、敵でも見るような眼光で佐伯は見てきた。
「どうした?」
「何でもねえよ」
佐伯は俺にそれ以上のことは言わず、話を続けた。
「佐々木さんは好きな料理とかあるの?」
「私は料理が苦手で…」
佐々木さんは俺の質問に口数を減らして言った。
「そっか。佐伯って確か料理できたよな」
「は?お前!」
俺は助け舟を出すため、敢えて佐伯の話題に出した。
「そうなのですか!」
「こいつ、こう見えて中学の調理実習では女子生徒も驚く料理をするんだよ」
俺の話に佐々木さんは驚いた表情になっていた。
「佐伯さんはどんな料理が得意なのですか?」
「人並みの料理だよ。肉じゃがとか…」
佐伯は俺の方を睨んでいたが、怒っている様子がなく、佐々木さんと楽しそうに話していた。
「良かったな…」
「そうだな」
佐伯と佐々木さんが話し、俺と佐伯の友達が余って見ていた。
「そういえば名前を言ってなかったな。俺は飯塚晴翔」
「国吉大凱。佐伯とは昨日知り合ったばかりで」
佐伯はどちらかと言うと陽キャラであり、知り合ったばかりの人にもよく話し、仲良くなることが早い。
「あいつはあんな感じだが、悪い奴じゃねえから。仲良くしてほしい」
「そうだな。昨日の勧誘はすごかったが…まあ。な。面白いし」
国吉くんは昨日を思い出して変な表情をしたが、佐伯を見てしょうがなさそうにしていた。
「おい!お前たちも何してんだ?」
「何でもねえよ」
俺と佐伯、国吉くんと佐々木さんはまだ入っていない部活の話をした。
「俺は中学もバスケ部だったし。続けるかな」
佐伯は中学の頃はバスケ部に入っており、理由もこいつらしくかっこいいからだそうだ。
「佐伯くんはバスケットボール部に入っていたのですね」
「こいつ、意外だろうけど。部活の大会では優秀選手にも選ばれるくらいなんだよ」
佐々木さんは佐伯の知らない話に興味を持ったようで声のトーンを高くしていた。
「良かったな。佐伯よ」
「恥ずかしいからやめてくれよ…」
佐伯は自分の話をすることが好きではなく、話題にもされたこともないため恥ずかしそうにしていた。
佐々木さんは話を聞きながら佐伯の方を見ており、佐伯はそれに気づくと違う方向を見て顔を隠した。




