情けない姿
教室に着くと、すぐにある席が俺の席である。授業を受ける場所としては休むことができず、嫌いな席なのだが、休み時間になるとそこには、多くの精つが集まり出す。そして今日も隣の席の千佳と話していた。
「…ね!」
楽しそうに話しているのを邪魔しないように俺は荷物だけを机の横にかけて離れようとした。
「晴翔、何逃げようとしているのよ」
「別にそんなつもりはねえよ」
千佳は俺の顔を見ると次第に不機嫌な顔になり出した。
「…って言うか。もしかして佐伯くんを置いてきたの?」
「そうだが?」
千佳は俺の返事にため息を吐いて答えた。
「最低ね…」
「どういうことだよ」
身に覚えもない理由で怒られ、理解ができなかった。
「何でもないわよ。どこかへ行ったら?」
「分かったよ」
俺は千佳に追い返されるように教室を出ていき、廊下から学校の正門を眺めた。
「ほぅ。あれが生の女子高生か。あの先輩の胸!でけえな…」
「おい!勝手に人のアフレコをするな!」
俺が正門から入る生徒を見ていると隣から声が聞こえてきた。
「よう。晴翔、一人なのか?佐伯はどうした?」
中学の頃の同級生の一人、田上拓馬が話しかけてきた。
「拓馬こそ、カオルはどうしたんだよ」
「ああ。カオルは女子生徒に囲まれていて悲鳴を上げていたけど、置いてきた」
拓馬が俺と変わらないくらい酷い扱いをカオルにしていたことに笑えて来た。
「俺も同じ感じだな」
「ひでえな」
「お前には負けるわ」
俺と拓馬が話していると、佐伯が佐々木さんと一緒に歩いてやってきた。
「おい、晴翔。あれは…何だよ!」
拓馬にははっきりと言っていないこともあり、女子生徒と仲良くしている佐伯を見て強い口調で質問してきた。
「よう!晴翔。あとで話があるからな」
佐伯は俺の顔を見ると真っ先に俺の方へと向かってきて一言つぶやいた。
「佐伯くん…。飯塚くんに迷惑をかけちゃ。ダメ…だよ」
先ほどより話す声も大きい佐々木さんは恥ずかしさを見せながら言った。
「こいつとは良いんだよ」
佐伯は俺の肩に腕を置き、機嫌よく言った。
「そ…そうなんだね。あ…私、荷物を置いてくるね」
「止めてごめん」
佐々木さんはそう言うと教室へ入って行った。
「佐伯も行くのか?」
「少し時間をくれ…」
佐伯は積極的に女子とは話そうとするが、今までは一緒にいることすらなく体勢がなかったこともあり、顔が赤くなり恥ずかしそうにし出した。
「佐伯。その性格どうにかしろよ」
「うるせえな!急に二人きりにしたお前に言われたくねえよ」
佐伯は照れて赤くなった顔を両手で隠した。
「もう少しがんばれよ…」
「無理だ…」
弱気な佐伯は力が尽きており、足腰が立たなくなっていた。
「俺たちも教室に入るぞ」
「待ってくれよ…」
佐伯は俺の肩を両手で掴み、引っ張られるように教室へ連れて行った。
「あんたたち、何をしているの?」
教室に入ってすぐに千佳からツッコミを入れられた。
「これは佐伯が女子に力尽きただけだよ」
「ああ…」
中学の頃から知っている連中はよく見ていた光景であったこともあり、説明をしなくても理解をするのである。
「安堂さんに見られるとは…」
佐伯は誤魔化す力もなく情けなさそうしていた。
「佐伯くん。大丈夫?」
さっきまで話していた相手が情けなさない姿になっていたのが心配になったようで佐々木さんはこっちへ来た。
「だ…大丈夫!大丈夫だよー」
佐伯は両手を勢いよく動かしてアピールした。
「良かったです…」
佐々木さんは安心した顔で優しく微笑んだ。
「か…」
佐伯が口を開いたタイミングで教室に予鈴が鳴り、今日も学校が始まった。




