二日目の登校
俺は学校の道を昨日の記憶を頼りにゆっくりと向かった。
「確か…こっち?えっと…こっちあれ?どっちだっけ?」
俺の前で道の端で迷っていたのは金髪の女子高生。携帯電話を握りしめ、顰めた顔で睨んでいた。
「その道は真っ直ぐだ」
「晴翔…。おはよう…」
前髪を触り、斜め下を見る女子高生は間違えることない千佳だった。
「何でいるの?」
「妹と登校していたんだよ」
「シスコン」
「お前も大概だろ…」
明里と目を合わせ睨む。
「何をしているのかしら」
「…!行くぞ」
「べ…別にあんたと一緒に行きたい訳ではないわよ!」
千佳は顔を赤くして怒っていた。
「お前、このままだと迷子になるだろうが!」
「な!そんな訳ないでしょ!」
「携帯持ってぐるぐる回っていてよく言えるな」
「何見てんのよ!忘れなさいよね!」
千佳は俺の耳を引っ張り、見たことを忘れるように念を押してきた。
「分かったわ!イッテェ。耳が千切れるわ」
「ふんっ!」
今日も俺に当たりが強い千佳は迷子にならないように俺の後ろを着いて来ていた。
「走って良いか?」
「やったらあんたと一生、口聞かないから」
千佳は俺の冗談にも真に受けて怒り、逃げないようになのか。俺の制服の袖を掴み離さないようにしていた。
「冗談に決まっているだろ」
「わ…分かっているわよ…そんなこと…」
千佳は恥ずかしそうに俺の背中に隠れて呟いた。
「行くんでしょ。道…教えて…」
「あ…ああ」
塩らしくなった千佳は髪色が不良に見えるが、可愛らしい女の子そのものだった。
「安堂、着いたぞ」
「ありがとう…」
千佳は俺に一言だけ口に出すとそのまま正門に入って行った。
「よぅ。晴翔!安堂さんと一緒だったのか?」
俺が千佳を見ていると、背後から佐伯が話しかけてきた。
「ああ。登校中に会ってな」
「ちぇっ。驚かねえのかよ。って言うか。羨ましいな。とても綺麗な幼馴染に加えてお兄さま呼びのお嬢さまな妹までいるとは…。本当に…殴って良いか?」
「最後の本音は隠せよ。だが、あいつとは仲がいい訳ではないし、妹は…」
俺が明里のことを思い出そうとすると厨二病全開の印象で最初に出て来ており、口からそれ以上の言葉を出なくなった。
「おい。何を言い淀んだ!」
「別にねえよ。あいつは本当に(ある意味)良い妹だよ」
佐伯は俺の話をのろけにしか聞こえておらず、嫉妬の念を送ってきた。
「本当に良いなあ。俺も可愛い幼馴染か可愛い妹でもいたらなあ!」
佐伯の声に周囲にいた生徒は反応して見つめてきた。
「マジでそんなじゃねえよ」
「本当なのか?」
佐伯は俺が否定しても怪しんでいた。
「むしろ、面倒だぞ」
「お前は本当に酷いな」
佐伯は女子のいる生活自体が羨ましいのか。話す内容を羨ましそうにしていた。
俺が佐伯と話しながら校舎へ入ると、千佳が未だに下駄箱にいた。
「何でいるんだよ」
千佳は俺が言った言葉に眉を顰めていた。
「あんたには関係ないでしょ」
「それもそうだな」
俺は怒っている千佳にこれ以上関わってもさらに機嫌を損ねてしまうと思い、離れた。
「待ちなさい」
「何だよ」
千佳は機嫌が悪いようだが、やけに俺を止めてくる。
「今さっきの話…どう言う意味?」
「聞いていたのか?」
「当たり前でしょ。あんたたち、声が大きいのよ」
千佳は俺たちの話に意識していたこともあり、機嫌が悪かったようだった。
「俺と一緒にいて良いこととかあったのか?」
「それは…」
千佳は特に否定する理由もない様子で話にも納得した。
「気にしなくて良いだろ。親が仲が良い幼馴染でよ」
「そうね!」
千佳は否定はしなかったが、変な話をされた事が不服だったのか。下駄箱の扉を叩きつけて閉めた。
「こわっ」
「お前、安堂さんに何かしたのか?」
佐伯は千佳の様子を見た後で俺に言ってきた。
「あんなに怒る事ねえだろ」
「何で怒っているのか分かっているのか?」
俺と千佳の長い付き合いだと言うことを分かっていながら聞いてきた。
「簡単だろ。要するに誰でも知っている話をするんじゃないって事だろ?」
「それが理由なのか?」
俺と佐伯は怒っていた理由を考えたが、何が引き金になったのか分からなかった。
「お…おはよう…ございます」
「お…おはよう。佐々木さん」
俺と佐伯が話していると背後から気配を消した女子生徒に挨拶された。背は俺の頭ひとつ分くらい低く、可愛らしい容姿であり、幼さも残っていた。
「あぁ。昨日の…」
話しかけてくれた女子生徒をよく見ると、昨日の入学式で佐伯に話しかけられていた子だった。
「あ…あの。飯塚くん…もおはよう…ございます」
声も小さいため、俺は耳を近づけて聞いた。
「あぁ!」
「うわ!どうしたの?」
俺が耳を近づけると大きな声で驚いており思わず、俺もその声で驚いた。
「ご…ごめんなさい」
「大丈夫だよ。佐々木さん。晴翔はいつも俺に厳しいけど優しいから」
「それは大体、お前が原因だろうが!」
佐伯は俺をおちょくっており、佐々木さんに良い顔を見せていた。
「そうなの?」
「うん。だから安心して良いよ」
俺は佐々木さんに怖がられないように笑顔になって返事した。
「あっ…。ごめんなさい」
「晴翔、顔が怖いぞ」
「え?」
俺は優しい顔で笑顔を作ったつもりだったが、佐伯は怖い顔だと言って来た。
「怖いかな?」
「あ…いえ…これは…私がコミュ症なので…」
佐々木さんは否定するが怯える様子が続いていた。
「佐伯は怖くないのか?」
「俺って特別だから」
「佐伯くんは…えっと…動物みたいで」
「ああ。犬みたいだもんな」
俺は佐々木さんの話題を理解して共感して話を広げた。
「おい、お前そんな風に見ていたのか」
「違うのか?」
「わん!」
「犬じゃねえか」
佐伯のふざけたモノマネに佐々木さんも楽しそうにし出した。
「佐伯、お手!」
「わん!って何させてんだ!」
俺の悪ノリにはのっていた佐伯も冷静になった。
「晴翔、覚悟しろや…」
「佐伯くん…」
俺が佐伯と仲良くふざけていると佐々木さんは佐伯を呼び出した。
「はい」
「ちゃんと仲良くしないとダメだよぉ」
佐伯に注意した佐々木さんはニコリと笑みを作り、佐伯と目を合わせていた。
「じゃあ。俺は行くな」
「お前、何…」
「頑張れ!」
邪魔になりそうだった俺は二人を残して教室へと向かった。いなくなった後に二人が仲良く話していることを願った。




