嫌いな幼馴染
俺には気の合わない幼馴染がいる。幼稚園から一緒だが、中学になっても最悪な関係だ。
「晴翔が私のおやつ食べた!」
「晴翔くんどうして食べたの?」
幼稚園の頃は、自分のおやつを残して、俺のおやつを食べたから取り返したのが、いつも同じようなことを繰り返していた。小学生になっても俺たちは相変わらず、仲は良くなかった。いつも喧嘩をし、高学年になっても仲の良い友だちと遊び、遠ざけていた。中学に上がると、次第に男女間の険悪な雰囲気が強まり、さらに話すことがなくなった。
そして、今日は高校の入学式。義務教育が終わり、このまま離れるのだった。
「晴翔。なんであんたがいるのよ!」
桜吹雪く春の季節。新たな生活とともに面倒な顔と出会した。
見た目は未だに幼さが残りながら、出る所は出ており、容姿も整っている女の子。性格以外は完璧な女の子。それが幼馴染の安堂千佳である。
「お前こそ、なんだよその髪は?」
中学までの黒髪は黄色くなっていた。
「高校生デビュー…」
千佳は前髪の先を触り、恥ずかしそうに呟いた。
「安堂。それと晴翔はやめてくれ。仲良しに見られるだろうが」
幼馴染とは言え、話すことも薄れており、良い関係ではないこともあったため、俺は馴れ馴れしく話しかけてくる千佳に文句を言った。
「あんたは中学の頃から変わらないわね。昔は千佳ちゃんって呼んでいたくせに」
「お前。いつの話をしてやがる」
高校の校門で緊張している生徒の中で俺と千佳は周囲の視線を無視して話し続けた。
「ねぇ。あの子、可愛い」
「お友達になってくれるのかな?」
周囲は俺たちの方に気づくと、口を揃えて同じような言葉を出していた。
「相変わらず、モテるな」
「そっちは相変わらずモテないわね」
千佳は俺を揶揄うのが生き甲斐のようで楽しそうに笑った。
「千佳ちゃん!」
「杏里ちゃん、久しぶり!」
「髪染めたんだ!」
「うん。どう?高校デビュー!」
「かわいい」
突然、千佳に話しかけてきたのは、中学の時に仲良くなったと思われる木下杏里さん。
千佳とは違い、優しく性格の良いため、人気のある女の子だ。
「あれ?飯塚くん。おはよう」
木下さんは俺に気がつくと、笑顔であいさつをしてくれた。
「杏里ちゃん。そいつに挨拶なんて不要よ」
「でも…」
千佳は木下さんを俺に近づかせないように校舎の方へ押して行った。
「変態」
「お前に何もしてねえだろ」
どうにも俺に罵倒しなくてはならないようで、去り際で言った。
俺は騒がしい奴がいなくなると静かになった周囲を見た。
「まあ。知っている連中も何人かいるな」
進学した高校は県内でも中間の進学校として知られており、地域の中学から多くの生徒が通っている。
「クラスは…一組」
俺は一人、入学式がある体育館へ向かった。