7話
動けなくなっているテリボンズクにゆっくりと歩み寄る。
「なんで近づいてくるんだ!? こっちに来るな!! この妙な魔法を解けぇ!!」
相変わらずうるさい奴だな。それに無駄に遠かったら話すのに声を張らないといけないから面倒なんだよな。近くにくれば普通にしゃべるだけでも十分に聞こえる。実際俺の声なんてそう通るほうはないからな。
しかし、この状況ですぐに話に入るのも面白くないか。せっかくだしなにかいたずらしてやるか。俺にヘルフレアを喰らわせてるんだそれくらい文句はないだろう。
「お前、まさか俺がおとなしく開放してやるとでも思っているのか? なぁ? 俺たちは戦争中の魔族と人間だもんな。やっぱりお前をここで殺しておくほうがいいんじゃないかと俺も思い始めている」
「待て!! わかった、一度話し合おうじゃないか。このまま何もできずに死ぬなんて嫌だ!! せめて、戦って死なせてくれ!!」
あらあら信じちゃってるじゃないですか。
あれだけ、攻撃する気はないとか言ってた俺がいきなり手のひらを返したとでも思ってるんだろうか? そりゃ怖いよなぁ。体の自由を奪われている状況で俺がこんなことを言い出したらな。
「お前が悪いんだ。俺は何度も話し合おうって言ったじゃないか。そのたびにお前は拒否してきたよな? それが今更話し合おうだと? あまりに虫のいい話なんじゃないか? どうなんだよ」
「わ、悪かった。俺も実は心の中ではこいつは信用にたる人間なんじゃないかと思い始めていたところなんだ。本当だぞ」
「最後に何としても俺のことを排除しなければならないって叫んでなかったかなぁ? あれは俺の空耳なんだろうかなぁ?」
俺がキレて叫ぶ前にテリボンズクが言っていたことを繰り返してやる。これでこいつは何も言えなくなるはずだ。しかし、焦っている奴を見るのは面白いな。俺は遊んでいるだけだが、向こうは本当に死にたくないと思って何とか言い逃れようとしてる。性格の悪さが出てしまうが、この状況を楽しんでしまっている。
「俺はそんなことは言っていない。最後に言ったのは俺とお前はこれから一心同体だだ。嘘何てついてないぞ!!」
言い訳が苦しすぎるだろ。もう少しまともな嘘がつけないのか?
「俺のことを数分前の出来事も記憶できないような馬鹿だといっていると受け取っていいってことだよなぁ。あーあ、また俺の怒りのボルテージを上げるようなことしやがって……そろそろ本当に消してやろうか」
ついつい気分が乗ってしまって迫真に迫った演技をしてしまう。我ながら本当に怒っているように言えたんじゃなかろうか。
これを聞いたテリボンズクは顔面を蒼白にして、冷や汗を流している。実はこいつ、相当馬鹿だろう。
「待て、落ち着け!! まだ俺たちは分かり合える。きっと話し合いの余地は残されているはずだ!!」
もうさっきから同じことばかり言っているな。
焦りで頭が正常に働いていないのか、もともとこの程度の残念な知能なのか。今となっては俺にもわからない。そろそろとどめを指しておくとするか。あまりやりすぎても今後の関係に支障が出そうだ。
「もういい、お前の話なんて聞くに値しない。このまま首を締めて殺してやろう」
「や、やめろぉぉぉーーー!!! 来るなぁぁーーー!!!」
俺は両手をテリボンズクの首の位置に構え、少しずつ前進していく。
近づくにつれ、テリボンズクの恐怖の叫びが大きくなっている。こいつビビってちびったりしないよな。流石に魔王軍の四天王様なんだからそんな心配はないか。
「終わりだ、死ね。オラァァァァーーー!!!!」
手の届く距離までやってきた俺は、最後の決め台詞を言い、勢いよくテリボンズクのズボンを下に降ろした。
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一切引っかかることなくテリボンズクの履いていたズボンを足首まで降ろす。これが、俺の人生経験のなせる技だ。
「うわぁぁぁーーーー!!!!」
目を瞑り、叫んでいるテリボンズクは俺にズボンを降ろされたことに気が付いていない。当然、自分がパンツ丸出しの無様な恰好で泣き叫んでいることにも気が付いていない。
「ハハハハハッ!! ハハッ!! 見事に騙されたな。俺にヘルフレアをくらわしたお返しだ。どうだ? ビビったか?」
俺の声が耳に入ったのかテリボンズクは呆然とした表情で機能停止する。
「あれ? なんで俺は生きてるんだ? ……」
「下を見てみるよ。お前にふさわしい格好にしてやったからさ」
「何がどうなっているというんだ? 一体どういうつもりなんだお前は!! くっ、見ようにも体が動かんぞ!!」
「おっと、そうだったな。ちょっと待て、今拘束を解いてやるから」
そうは言ったものとどうすればこの拘束が解けるのかわからない。とりあえず、頭の中で解けろと念じてみる。
「おお!! 動けるぞ。これで自由だ!! 何じゃこりゃーー!!」
自分のズボンが降ろされていることにやっと気が付いたテリボンズクはすさまじいスピードでズボンを履きなおした。
ちょっとバランスを崩しかけているのを見て俺はまた笑ってしまった。
「ふっ、おふざけはこの程度にして本題に入ろうか」
未だ困惑の表情を浮かべているテリボンズクを置いてけぼりにして本題に入ることにする。