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5話

 いきなりバレてしまうのも違うと思うので、サッと姿勢を低くして、倒れた木の後ろに隠れた。


 一体どこから来たんだ? 少なくともこのあたりにいたとしたなら、俺の落下の衝撃波を喰らっていないとおかしい。高速で移動してきたのか?


「くそっ、俺たちの森が……これほどの威力の魔法に気が付かないなんて、また人間が新たな魔法を開発したというのか? これは急いで魔王様に報告しなければ」


 見える範囲まで近づいてきてくれたおかげで謎の人物の顔を見ることができた。


 遠くからでもわかったいたことだが、頭に一本の角が生えている。それに、顔は紫色で見るからに人間ではなかった。モンスターってことはないだろうし亜人なのだろうが、どうも人間と敵対しているような反応だ。おじいさんから言われたのはモンスターと人間の戦争を止めることだ。おそらく亜人は関係ないはず、それなのにどうしてこいつはこうも人間を嫌っているんだ?


「そこに誰かいるのか!! 気配を消しもせずに隠れれると思われるとは俺も舐められたものだ。おとなしく出てこい。さもなくば、隠れている木ごと消し炭にするぞ」


 なんなのその達人みたいな発見の仕方は。俺だってできる限り気が付かれないよう息も殺していたというのに徒労に終わってしまったじゃないか。しょうがない、一度出て行って話を聞いてみるとするか。

「ちょっと待ってくれ。俺は敵じゃない」


 俺は両手を上げ、敵意がないことをアピールしながらゆっくりと木の陰から体を出した。


 すると、男の顔が驚きの表情へと変わる。


「なぜ、人間がこんなところにいるんだ!? どうやって侵入した? ここは魔族領だぞ!!」


「まあ、そう声を荒げないでくれよ。俺だってさっきは生死の狭間を歩くような体験をしたばっかりなんだ。それに、俺はお前に敵対するつもりはないって言っただろ。まずは、話し合おう」


 ここは魔族領だという情報をゲットした。ということは、こいつは魔族なんだろう。魔って付くぐらいだし、モンスター何だろうな。亜人にだったら魔人族とかになりそうだし。


「そんなこと信じられるはずがないだろ。俺たち、モンスターの勢力とお前ら人間は戦争中だろうが。これも作戦か? お前らはいつもこざかしい真似をするからな」


「だから違うって、俺は話をしたいんだ。だから、そう怖い顔するなよ」


 尚も俺の話を聞かない男に優しく対応する。ここで、俺も起こってしまっては話し合いは確実に成立しない。今は我慢するときだ、こいつは駄々をこねる小学生そう思おう。


「ふざけるなよ!! はっ、ここで俺と出くわしたのが運の尽きだったな。跡形もなく消してやる!!」


「だから話を聞けってぇぇぇーーーー!!!!」


 我慢の限界はすぐに訪れてしまった。

 一向に話を聞く気のない男、俺が優しく対応したところで態度はどんどん悪化するだけ、もう無理だ。こいつは話が通じないタイプの小学生だ。鉄拳制裁で言うことを聞かせるしかない。


「お前は俺を怒らせてしまった。なあ、お前ははるか上空から落ちたことはあるか? なあおい!! 俺は今そのとんでも体験をしたばっかりなんだよぉ。この後も俺が落ちてきてできた跡だ。要するに、俺は機嫌がすこぶる悪い。謝るなら今のうちだぞ」


「出鱈目なこと言いやがって。これほどの衝撃で無傷な訳があるか。俺を脅そうったってそうはいかない。俺は、魔王軍四天王、獄炎のテリボンズクだ。魔王軍最強戦力の一人だ、貴様は運が悪かっただけだ。ここで消えろ!!」


 思ったてたよりも大分大物なんだけど。いきなりこんな奴を倒してしまっても大丈夫なのか? 人間との溝が深まったりしないか? やばい、ここは作戦変更だ。ちょっと懲らしめる程度にしておこう。


「それがどうしたんだよ。ほら、かかって来いよ」


 あえて、挑発することでテリボンズクの攻撃を誘う。さっきの体験で俺の耐久性は証明されている。ここは、自分の攻撃が通じないことを思い知らせて自分から負けを認めさせよう。これならば、こいつを傷つけて問題になることもない。


「言われなくてそのつもりだ。ヘルフレア!!」


 真っ黒の炎が俺に向かって発射される。普通であれば、ちびっていたかもしれない状況だが、この程度で俺に効果があるはずがないとわかっている今、避けることすらする意味もない。


 バァン!!


 黒炎は俺にぶつかると同時に爆発した。

 ここまでが、この魔法の一連の効果なんだろう。だが、俺はヘルフレアを食らいながらも冷静に魔法について分析できるほどに何ともない。怪我はおろか、熱さすらも感じない。


「俺を舐めた罰だ。この炎はお前の肉片一つすら完全に燃やし尽くすまで消えることはない。っは、もう話しかけても無駄か、今の爆発でばらばらに爆ぜてしまっているのだからな」


 誰に向かってその話をしてるんだよ。俺が本当に死んでたらただの痛い独り言だぞ。まあ、俺に聞かれてるからもっと恥ずかしいんだけどな。


 消えない炎がうっとおしかったので、適当に腕を払う。


 すると、俺の目の前を覆っていた炎は跡形もなく消えた。


「なんだと!? き、貴様なぜ生きている?」


「俺は話したいって言っただろ? 俺を本気で怒らせないうちに話をするほうが賢明だと思うが?」


 決まった。これでテリボンズクの心はおれたはずだ!!

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