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4話

 少しずつ視界を覆っていた光が消えていく。

 この光が晴れれば俺の新たな人生が幕を開けるというわけか。なんか勢いで流されてしまったが、家族や友達にもう会えないって考えると寂しいな。でも、どうせ死んでたんだ、逢うことなんてできなかった。そう考えよう。


 寂しさを紛らわせながら、光が完全に消えるのを待つ。


 すべての光が消え、俺の視界に入ってきたのは、遠くに見える地面だった。


「はぁぁぁーーーー!?!?」


 すぐに察した。俺はかなりの高高度にほたりだされているのだと。


 うそだろ!? このままじゃ俺は地面に激突してクレーターを作るために二度目の人生をスタートさせたことになってしまう。あのおじいさん転生させる場所をミスってるだろ!! 


「まずい、まずい、どんどん地面が近づいてくる……」


 俺がパニックに陥っている間も激突へのカウントダウンは無慈悲に進んでいく。

 どうするどうするどうする。この状況を打破できる手札を俺は持っているのか? 


 一応、腰のあたりを触ってみたが、パラシュートらしきものは装着されていない。当然だ、パラシュートなんてつけて転生とかダサすぎる。おじいさんもそこら辺の配慮はしてるみたいだ。

 いや、そんなこと考えてる場合じゃない。どうにかしないと……死ぬ!!


「まだ、おじいさんの助けを借りれる可能性は? おじいさーーん!! 助けてくれーー!! このままじゃ死ぬーー!!」


 全力で叫ぼうとするが、空気の抵抗を受けてうまく叫べない。これでは聞こえるものも聞こえないじゃないか。


 これは、俺に与えられた試練なのか? そう考えれば何とか死を免れる方法があるはずだ。


 そうだ!! 神様に貰った力を使えば、これくらい何ともないはず。でも、どうやって使えばいいんだ?


「うわうわうわうわぁーーーー!!!!」


 なおもスピードを上げ、今まで体験したことのない速度で落下する。


 こんなことならスカイダイビングでもしておくんだった。もしかしたらそれがヒントになって、なんとかなっていたかもしれない。甘いか、パラシュートもつけないでスカイダイビング何て経験できるわけもない。


「もう駄目だ。力の使い方なんてわからないし、お手上げだ。神に祈りながら目を瞑ろう」


 完全に詰んだことを悟り、最後の瞬間から目をそらすことで少しでも恐怖を抑えることにした。

 どうせ、一度死んだ命だ。ちょっとおまけがあった程度に考えればそう悪く無かったかもしれないな。欲を言えば、もっと楽しい時間を過ごしていたかった。神様や世界から貰った力を持って、異世界を生きていきたかったな。


 目を瞑っていても自分が加速していることはなんとなく理解できる。この調子だったらもうすぐ地面と抱き合うことになるだろう。さよなら、新たな人生。そして今度も人間に生まれ変われますように……。


 ドゴォォォォン!!!!


 恐ろしいほどの激突音が響き渡った。


「あれ? 全然痛くない? 俺、生きてる!!」


 ただただ最後を待つだけだった俺だったが、地面に衝突したはずなのに、衝撃はおろか、体に痛みすらない。これはどういうことだ?


「やばい、とんでもねぇ大穴が開いてる。見たことないけど、隕石が落ちたらこんな風になるんだろうな」


 自分が落下した地点には何が起こってこうなったか想像すらできないほどのクレーターが開いていた。


 謎だが、一度その問題はおいておいて周囲を見渡す。


 もとは森だったであろう場所がにクレーターを開け、その衝撃で周囲の木々は根っこから吹き飛び、荒れ果てていた。


「大丈夫かよこれ。人がここにいたら間違いなく死んでるけど……いやいや、俺も死ぬような思いをしたんだ。そいつは運が悪かったと割り切ってもらうしかないな。ってか、それくらいはおじいさんも気を付けてくれてるだろう。この試練も俺の力を試すためのものだったんだろうし」


 この理不尽な体験になんとか理由をつけ、自分の中で飲み込む。そうでもしないと、今から俺はおじいさんに復讐を誓う鬼になってしまいそうだ。せめて、何か一言くれてたらここまでの恐怖体験をせずに済んだというのにな。仕様上、空中からスタートするとかさ、生半可なことでは俺は傷つかないとかさ。でも、普通に考えて今ので無傷って人間やめすぎてないか? 俺は本当に人間なのか自分で疑うレベルだぞ。


 大体、神様は俺の努力次第で、モンスターと人間との戦争を止められる力を授けたとか言ってたのに、これだったらいますぐ割って入っても俺は無傷で済むんじゃないか? となると、この力は過剰すぎる気が……そうか、これは世界からの力なんじゃないのか? おじいさんにもどの程度の力が授けられるかわからないって言ってたし、絶対そうだ。どうやら、世界は俺のことが大好きでたまらないみたいだな。ああ、俺も好きだぜ。


「おっと、こうしちゃいられない。早く、町を目指そうか。それにここにいたらこれをやったのが俺だって白状してるようなもんだしな」


 俺がその場から離れようとしたとき、どこからか声が聞こえてきた。


「何が起こってるんだ!! 誰がこんな真似を!!」


 声のしたほうへゆっくり振り返ると、人間が立っていた。いや、頭に角が生えてるぞ。まさか亜人か? それともモンスターなのか?

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