22話
魔族の中ではまだ200歳でも十分若手なんだろうか? 500歳の四天王がいるくらいなら若手になるんだろうが俺からしてみれば感覚がまるで理解できない。人間で若手と言えば、長く見ても30代くらいまでだろうし、それが200歳なんて意味不明だ。
「俺がじいさんならほかの奴らはどうなるんだよ。俺はまだお兄さんって呼ばれるくらいの年齢だ!!」
「悪かったって、俺も自分の価値観で話をしてたよ。テリボンズクたち魔族からしてみれば200歳なんてまだまだ若手何だろう?」
「そうだ、俺は将来有望な若手なんだ。歳よりなんかじゃない」
俺も自分のことをじいさんなんて呼ばれたら当然起こるだろうし、テリボンズクの怒りも今回は納得できる。素直に反省しておこう。デリカシーがなさ過ぎた。
「気を取り直して、魔法の修行にでもいこうぜ。俺はまだ全然魔法が使えないからな。とりあえず、テリボンズクが使える魔法を全部教えてくれ」
「随分と無茶なことをしようとしてるなぁ。俺が使える魔法は100は超えてるぞ。それを全部覚えようなんて50年はかかるんじゃないか? 中には簡単な魔法もあるが、習得に時間を要するものもたくさんあるぞ」
「俺を舐めてもらっちゃ困る。大丈夫だ、見ただけで覚えて見せるから」
「それは勘弁してくれよ。俺の今までの人生の価値が下がっちまうから。せめて、何日かかけて習得してくれ。これはフリじゃないからな、マジでやめてくれよ」
そんなことを言われても困るというものだ。俺が力を使ってしまえばイメージしたものはなんでも使用可能になっている。つまり、魔法を見て、そのイメージさえすることができてしまえば必然的に使用できるという訳だ。いくらテリボンズクが習得に時間をかけて魔法だからって俺には関係ないのだ。一瞬で習得してしまう。
こんなことができてしまうなんて相当理不尽な力だ。
テリボンズクには悪いが俺には戦争を止めるという重大な使命があるんだ、生半可な力じゃその使命をまっとうすることができない。そのための力だ。
「なんで俺は将来敵になるかもしれないコンキチに魔法を教えなくければいけないんだ? 魔族にとってもなんのメリットもないじゃないか」
「俺がテリボンズクの敵になることはありえないな。路頭に迷っていたところを救ってもらった恩があるんだぞ。恩人を裏切るような真似をするほど腐ってないぞ俺は」
なんだかんだ言ってもテリボンズクに合わなければ今のこの状況はありえなかった。そう、だからこそ、もしも俺が魔族か人間かどちらかと戦うことになったら迷いなく魔族側につこうと決めている。そんな状況に陥らないようにするのがまずは大事なんだが、万が一のことも想定しておかないと対応が遅れてしまうからな。
「じゃあ、外に行くか。流石に町の中で魔法を練習できるような場所はないよな?」
「修練場ならあるが、コンキチの魔法だと結界が耐えきれないだろうな。ここはおとなしく外の誰もいない場所で修行しようか」
「やっぱりなんだかんだ言っても手伝ってくれるもんな。ありがとうな、テリボンズク」
悪態を付きながらも結局は手伝ってくれるテリボンズク。
少し優しすぎる気もするが、手伝ってもらえれば俺の魔法と習得スピードは加速するからな。一から自分でイメージして魔法を作り上げるのはなかなかに難しい。イメージしたことをそのまま使える俺ならば時間さえかければオリジナルの魔法を開発することは可能だろうが、時間をかけている場合じゃない。戦争は既に始まっているのだ。いつ均衡が崩れて戦争が激化するか誰にもわからない。できる限り最速で力を身に着けていく必要があるのだ。
「うるさいな。俺だって自分の修行をしようと思ってたところだったんだ。俺もコンキチと修行したほうが効率が上がりそうだから了承しただけだ。それに、コンキチを監視しておくのに、新たな魔法を身につけたのを知らないなんて意味がないだろ」
「そういうことにしておいてやるよ。まったく、テリボンズクは恥ずかしがりやなんだから。たまには素直に言葉にしておかないと誰にも伝わらないぞ?」
「見当違いも甚だしいな。どうすれば俺が恥ずかしがりやになるんだよ。魔王軍の四天王としてこれ以上ないくらいに自分に自信を持っている俺が? ありえないだろ。コンキチの目は案外節穴なんだな」
「言ったな。俺の目は心すら見抜く魔眼だぞ。俺にかかれば考えていることなんて筒抜けだ」
つい適当なことを行ってしまう。心が読める目なんてほしくもない。心の声なんて誰しも汚いことを言っているもんだろう。これで、テリボンズクに悪口ばかり言われていたら魔族不信になって滅ぼしてしまうかもしれない。
「おい、ふざけんなよ。そんなものが存在するなんて……この世の理に反している」
「冗談だって。そんなに本気にするなよ。図星をつかれてうろたえているみたいだぞ。もしかして、本当は心の中で俺に感謝してたんじゃないのか? 今の焦り方は不自然だろ」
「また、お得意の冗談か。いい加減にしてくれよ。コンキチなら本当に魔眼とやらを持ってるんじゃないかって焦ったんだぞ。大体、誰でも自分の心が誰かに見られているとわかれば焦るもんだろ。別に俺が特別な訳じゃない」
「そうか? 俺は別に構わないぞ? どうせ、大した事何て考えてないんだしな」
あれ? もしかして今自分で俺は何も考えてないあほですって言ってしまったんじゃないか? うわ、最悪だぁ。




