18話
俺の最強のアイデアが普通に却下されたことに驚きを隠せない。自分の力で……いや、貰った力だけでそれでのし上がっていき、徐々に信頼を築いていく作戦だったんだが。
「要するにバレなければ何も問題ないわけだよな? それなら話は早い。俺の偽装魔法のレベルをさらに上げて絶対にバレないって言えるところまで持っていくしかないな」
「偽装魔法がバレることはそうそうないと思うからそこは別にいい。だがな、コンキチは人間だ。それは隠してもどこからか滲み出てくるんじゃないか? 魔族と人間とで当然だろうが、文化の違いもある。そういうところで違和感を持たれたら危ないと思うが?」
細かいところでバレる可能性があるっていうことだな。
テリボンズクのいう通り、魔族の文化なんてものはまったく理解していない。もし、虫を当然のように食べる文化があるといわれてもすぐに適応することは俺にはできない。どんなおいしそうな顔で渡されても虫というだけで食うのは難しいだろうな。とはいえ、この世界のことなんて何も知らないのが現状だ。魔族の文化どころか人間の文化すら怪しい。俺の世界と同じような生活をしている……どう考えても魔法なんてものがあればそれに沿った文化が発達していくだろうな。
「そこのフォローはテリボンズクの仕事だろ。俺が人間だってバレたらまずいのはテリボンズクだって一緒なんだ。ちゃんと協力してもらうぞ」
ここに関してはテリボンズクの協力を仰ぐ以外に選択肢がない。俺が一人で町を歩いてゆっくりと生活に馴染んでいくにしても最初が鬼門だ。何事も始めが肝心だからな。盛大に失敗して住民たちから不信感を持たれたりしたら一大事だ。
「もちろん俺の手が届く範囲内では手助けしていくつもりだが、俺も魔王軍の四天王だ。ずっとこの町にいられるわけじゃないぞ? 俺がいないときはこの家でおとなしくしておいてくれよ」
「無理だな。俺がじっとおとなしくできるようなタイプの人間に見えるか? どこからどう見ても落ち着きのないタイプだろう。俺がじっとできるのはそれに見合うだけのご褒美がある時だけだ!! テリボンズクは俺にどんな条件を提示できるんだ?」
「なぜ、匿ってやってる俺の方に何かを求めてきてるんだよ。逆だろ。コンキチが俺に大して感謝の気持ちで何かを用意するのならわかるが俺がコンキチに何か上げないといけないのは不可解だ」
まったくもって正論だ。反論ができない。俺は既にテリボンズクから助けてもらっている、その俺が家でじっとしていた程度のことで何か施しを受けようなんてあまりに都合のいい話だったんだ。もっと大きなことを成し遂げないと。
「俺が間違ってたよ。わかった。俺はテリボンズクのためになるようなことをして待ってるとする。別に今日からいなくなるわけじゃないんだよな? ずっといられる訳じゃないってことを伝えたかっただけだよな?」
「ああ、今のところは魔王様からの指示はない。町で待機していても問題ないだろうな。そうだな。コンキチには俺の修行に付き合って貰おうか。コンキチ相手なら気兼ねなく俺の魔法を試せるからな。それをこの家の家賃としておいてやろう」
すぐにどこかへ行くような指令は出ていないということだな。ひとまずは、一人にされる心配がなくなって安心だ。
修行に付き合うのか……正直面倒だな。まぁ、俺もおじいさんたち神様から貰った力の方は少しずつ強くしていかないといけないらしいからな。そっちの力の修行は一緒にできるかもしれない。
「あまり気乗りはしないけど、テリボンズクの頼みだし聞いてやるとするか。俺と修行なんて贅沢な真似はテリボンズク以外はできないんだからな。そこは理解しておいてくれよ」
「そうか? 俺はついてるってことか」
そういう解釈もできるな。偶然俺がテリボンズクの町の近くに転生してきて、仲間になるなんて幸運に違いない。俺としても魔王軍の四天王とすぐに知り合いになれたってのはとてつもない幸運なんだろうな。テリボンズクと出会ったおかげでいろいろなことがうまくいっている気がする。もし最初の場所で出会っていたのが普通の人間だったりしたらこんなにスムーズにことが進むことはなかっただろうしな。テリボンズク様に感謝、それとこの場所を選んでくれたおじいさんにも感謝だ。
「間違いないな。俺と出会ってなかったら今後生きていくうえで敵として俺と戦う可能性があったってことを考えてみろよ。もちろんそうなる可能性は限りなく低かったんだけどな。俺の目的は戦争を止めることだからな」
「俺の最強の魔法を無傷で耐えきる人間と戦うか……まるで勝機が見いだせないな」
「そうだろう? あの時俺が戦う気だったらテリボンズクは今頃ここにはいないんだぞ」
まるで意味のない話だが、俺に対する評価が少しでも上がればいいかと思いこんな話をしてみる。
実際のところ俺が攻撃していればテリボンズクはただではすまなかったはずだ。俺の忍耐力に感謝するべきなんだよ。




