15話
「悪かったって、ちょっと悪ふざけが過ぎただけだろ。許してくれよ。もうやらないからさ」
「とんだブラックジョークだ。自分の一番大事にしてるものが目の前で消されるこの苦しみがコンキチにわかるか? 少し考えただけでやっていいことと悪いことの分別くらいつくだろ」
「しょうもないことを思いついたら行動を起こさないと気が済まないたちなんだよ。茶目っ気があると言ってくれ」
こんなに怒らなくてもいいと思うが、簡単にはテリボンズクの怒りがおさまりそうにもない。次やったらの前に今回も許してくれてないじゃんかよ。なんでこんなつまらないことをしちまったんだ俺は……。
「そういう舐めた態度が気に入らないんだ。本当に申し訳ないって思ってる奴がする態度じゃないだろ。どうせ、俺のことを心のどこかで舐めてるからそんな態度が取れるんだ!!」
俺の態度がテリボンズクの逆鱗に触れてしまったみたいだ。
もうこうなってしまっては、土下座以外の方法は残されていないかもしれない。本気で誠意を見せればテリボンズクだってわかってくれるはずだ。俺の気持ちをこの土下座に全部乗せてやる。
「まことに申し訳ございませんでしたぁぁーー!!」
ドンッ!!
勢いよく地面に飛び込み、地面に頭を打ち付けた。
地面に軽く亀裂が入る。
見よ。このすさまじい土下座を!! これが俺の誠意だぁ!!
「何してんだよ。おいやめろって、地面にヒビが入ってるぞ!! お前次はここを破壊するつもりか!!」
ちょっと誤解されているようだが、このまま頭を下げた状態で待機する。
何を言われても許されるまではこの体制を崩すつもりはない。俺の誠意を舐めるなよ!!
「おい、俺の話を聞いてるのか? 一回頭を上げろよ。どうした? もしかして地面に頭をぶつけて、意識を失ったんじゃないだろうな?」
何を言おうが無駄だ。テリボンズクの口から許すって言葉が出るまでは俺は諦めないぞ!!
ただならぬ雰囲気が漂う中、俺は微動だにすることなく、土下座をキープする。誰に見られようが恥などとうに捨てている。むしろ、この状況で恥ずかしいと思うのはテリボンズク、お前のほうだ!!
顔を上げることはできないので、テリボンズクが今どんな表情をしているかなんてことはわからないが、妙にあたふたしていると信じている。これで、どっしりと仁王立ちして腕なんて組まれていた日には俺は終わりだ。この後の展開は厳しいものになるだろう。
「いい加減にしろよ。これじゃあ、俺がコンキチをいじめているようにしか見えないじゃないか。住民からの優しいイメージが崩れちまうだろう。だから俺の話を聞けって。いい加減にしろ!!」
ここで顔を上げてしまうのは3流だ。1流の土下座師である俺にはこの程度の揺さぶり何て効くわけがない。鋼の精神で何があろうと耐えきり、攻めのタイミングが来るのを待つんだ。
「あ!! テリボンズク様、お帰りなさいませ!! 今日はどちらに行かれていたんですか? ……へ? そこでうずくまっている方はどなたでしょうか?」
「ヘリーサ、ただいま。こっちは気にしなくていいから飯の準備をしてくれ。俺も腹が減ってきたからな」
せっかく誰か来たって言うのに、このチャンスをみすみす見逃すわけにはいかない。しかし、ここで動くわけにはいかない。何とか、この使用人がとどまってくれるように、構ってくれオーラを全開で出すしかない。
「何やってんだ。コンキチ、魔力があふれ出てるぞ。このまま暴走する気か!?」
「え? え? これはどういう状況ですかテリボンズク様!? この方は何をしようとしているのですか?」
「まずいぞ、このままじゃ、ここら辺一体魔力の暴走で消え去ってしまう。抑えろコンキチ!! なんのつもりでこんなことをしてるんだ!?」
おっと、まずいまずい。構ってくれオーラじゃなくて、魔力が全開になってしまっていたようだ。二人が怯えている様子が見えないがなんとなくわかる気がする。
俺もこのまま一帯を吹き飛ばすのは本意ではないので、発散しそうになっていた魔力を霧散させる。
これもイメージをするだけで簡単にできてしまうのだから、とんでもないことなんだろうな。大体、この魔力の暴走も俺がオーラを全開にするのをイメージしたから起きたことで、軽々しくイメージをしたらいけないってことを覚えておかないとな。
「は? 周囲を覆っていた魔力が消えた? ……また何かしでかすつもりだったのかよコンキチ」
これはむしろ悪いほうに転がって行っている気がする。言い訳をしたいが、まだ土下座を解くわけにはいかない。
「この方は何をしているのですか? テリボンズク様が命令した様子ではないように見えるのですが……」
「俺がこんなことを強要するはずないだろ。コンキチが勝手に初めてことだ。ヘリーサからもこれをやめるように言ってくれ」
「そうなのですね。コンキチ様、もうこのようなことはおやめになってください。テリボンズク様も望んでいないようですから」
はっ、人数が増えたところで同じことだ。俺は許されるまで土下座は絶対にやめないからな!!




