14話
「ああぁぁぁーーー!! コンキチ!! お前には血も涙もないのか!! 魔王邸の中にはまだ俺の使用人たちもいたんだぞ!! それを……おまえぇぇーー!!」
ガチで発狂してしまっている。
完全にやりすぎてしまったパターンだ。少し申しわけない気持ちになりつつも妙な気持ちよさに、心が震えている。本当によくないことなんだが、こうまでうろたえている奴を見るのは気持ちいいな。
「にやついてないで何とか言いやがれ!! お前はこんなことをするためにわざわざ俺に仲間のふりをして近づいたって言うのか!?」
これはこのまま放置したら俺の信頼がゼロになってしまうな。早めにジョークだってことを伝えておかないとな。
「テリボンズク、よく考えてみろ。今俺がどんな魔法を使ったんだ? お前にはわからないのか?」
「何を言ってるんだ……確かに、俺の魔王邸を一瞬で消し去った魔法にしては魔力の流れが小さかった……まさか空間ごと消し飛ばしたというのか? いや、それならもっと魔力の流れが大きくないと辻褄が合わない。くそっ何の魔法を使いやがったんだよ!!」
「もう少し自分で考えてみろよ。今俺が攻撃系の魔法を打ったように見えたか? 俺の手から炎でも飛んで行ったか? それとも、衝撃波が飛んだが? 何も見えなかっただろう?」
少しずつヒントを出して、俺がテリボンズクの家を消し飛ばした訳ではないことを感づかせようと試みる。
テリボンズクは頭を抱えてうずくまっているが、考えがなかなかまとまらないようだ。
「おいおい、まだわからないのか? そうだな、最後に最大のヒントをやろうじゃないか。いま、俺が自分自身に使っている魔法はなんだ?」
「え? おい、まさかコンキチお前。俺の魔王邸に偽装魔法をかけたって言うのか? いや、そんなことは不可能だ。いくら魔力を扱うことに長けているからといって風景を完全に再現するなんてありえん。適当なこと言って誤魔化そうとしてるだろ!!」
「だから、ヒントだって言ってるだろ。偽装魔法を使ってるんだったらそのまま答えを言ったことになるだろうが、俺は今ヒントを出してやっただけで答えを言ったわけじゃないぞ」
まったく、俺の話をしっかり聞いておいてほしいもんだ。偽装魔法は俺も一度考えたが、難しそうだったから隠蔽魔法に路線変更したんだよな。そもそも、俺が作った隠蔽魔法はこの世界に存在しているのか? もし存在しない魔法だった場合、俺はとんでもないいじわる問題をテリボンズクに押し付けていることになってしまうな。
「くそ、偽装魔法で風景に同化させるのは不可能だとして……わからん。俺の魔王邸を消し去ったわけじゃないんだよな? これで実は消してますとか言ったら刺し違えても殺すぞ」
「うーん、ある意味では消したって言うのは間違いじゃないんだよなぁ。そうだな、一回家があるかどうかを確認してみればいいんじゃないか?」
「は? どうやってないものをあるか確認するって言うんだよ。俺をからかってるのか?」
「めんどくさいなぁ。いいから、玄関があった場所に行ってみろよ」
テリボンズクの家の構造は流石に俺にはわからないので、自分で玄関があった場所まで歩いてもらう。
俺はそのあとをついて行けば玄関までたどり着けるわけだ。
即席の魔法で外観は完全に消しているが、中は一体どうなってるんだろうな。中にいる使用人たちからは普通に外が見えているはずだが。
「ここが玄関があった場所だ。そして、ここにドアノブが……なに!? ドアノブがある!?」
驚きながらもテリボンズクはドアノブをつかみ、ゆっくりとドアを開いた。
すると、何もなかったはずの場所に、玄関が現れた。
正確に言うと、ドアを開けたら中には家の中へ続く玄関が見えたってところだな。現在も、ドアの外側は完全に透明になって消えているが内側の方は見えている。これは俺が外側にだけ魔法をかけたからなんだろうな。
「どういうことだ? やっぱり偽装魔法を使っていたってことかよ」
「いやいや、偽装魔法を使ったら後ろの風景を再現できないって言ったのはテリボンズク自信だろ。俺だって、動いているものを完全にトレースしてずっと偽装し続けるのは無理だろうな。だから、今回はテリボンズクの家を消してみた」
「意味が分からん。まだ俺の魔王邸は見えないままだが、どうして中に入ると見えてるんだ?」
ここまで種明かしをしても理解してもらえないとはな。もうこの世界には隠蔽魔法なるものは存在しないとみてまず間違いないだろう。しょうがない、ここは俺が説明してやるとするか。
「今俺が使っていたのは名づけて、隠蔽魔法だ。この魔法でテリボンズクの家の存在自体を隠蔽したってことだな。つまり、一時的に消していると言って差支えないだろう」
「そんなふざけた魔法聞いたこともないぞ。次こんな悪ふざけをしたら許さないからな」
これは結構本気で怒ってるやつだ。いったんふざけるのは控えておこう。これ以上テリボンズクを怒らせるのは双方得がないからな。ここまで怒らなくてもいいとは思うが、それほどまでに魔王邸は大事なものだということだろう。俺は学んだことを活かすことのできるタイプなのだ。




