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10話

 これが空を飛ぶという感覚か。顔に当たる風が気持ちいい。もうこのままずっと空の旅を楽しみたい、そう思えるほどのものだ。


「テリボンズクはこんないい移動方法でいつも移動していたのか? 羨ましいから一回俺に謝ってくれ」


「理解不能すぎて困るんだが……それよりも、コンキチ念話まで使えたのかよ。この速度で移動しているのに、声が聞こえてくるなんてありえない」


「言われてみれば、この風の中で声なんて聞こえるはずないな。知らない間にまた一つ新たな魔法を会得してしまったな」


 テリボンズクの声が聞こえてくるのも俺の魔法のおかげなんだろうか? でもこの感じだと、テリボンズク自身は使えそうにないから、きっとそうなんだろう。もはや、俺が使おうとしないでも勝手に最適な魔法を発動させてくれている。ちょっと、これはオーバースペックなんじゃないか? この調子じゃ、戦争を止めるなんて数日で終わってしまいそうだ。


 


 そのまま、加速して空中を移動していると、外壁に囲まれた町を発見した。


「見えてきたぞ、あれが俺が住んでいるホルグンデスだ。こう見えても魔族領の五大都市の一つなんだ」


「五大都市ってのはなんだ? いっぱい魔族が住んでるってことか?」


「それもあるが、五大都市にはそれぞれ魔王軍の四天王が住んでいる。まあ、統治していると言ったほうが正確かもしれないな。最後の一つは魔王様の城がある、王都だ。もちろん、魔族領で一番栄えているのはそこになるな」


 せっかくの最高戦力をばらばらに配置しているということか。それほど、個々の力に自身があるのだろうか。


「それじゃあ、テリボンズクが住んでいるっていうよりは、テリボンズクの町って言ったほうが正しいのか? それなら、結構融通が利きそうだな。俺がちょっとぐらいやらかしたところで権力でなかったことにしてくれよ」


「そうもいかないだろ。俺が魔王軍の四天王であるということはもちろんこの町のすべての魔族が知っていることだが、それで絶対服従って訳じゃないぞ。むしろ、俺はこの町を自由な町としてゆるーく統治しているからな。実質的にはそれほどの権力は持っていない」


「役に立たないな。無駄にかっこつけてさ。それだったら、人間が普通に暮らそうが自由ってことにしてくれよ。それなら、すべて丸くおさまってウィンウィンだろ?」


「無茶いうなよ。コンキチをこうして連れて行っているだけでも俺がどれほどのリスクを負っているかわかっていないのか? バレればすべてを失うことになるんだぞ?」


 すべてを失うとは大げさだな。

 俺がこの戦争を止めた英雄として歴史に名前を刻めば、テリボンズクは俺の部下第一号として永遠に語り継がれることになるというのにな。まったく、これのどこがリスクなんだよ。


 テリボンズクが魔王軍の四天王で、町を持っているということは俺も魔王軍に志願して四天王になれば町を一つもらえるといことだな。まずは、戦争を止める前に町をおさめる領主になるって言うのも悪く無いな。そうしたら、魔族の中でも可愛い子ばかりを見繕って住んでもらうことにしよう。大分気持ち悪いが、男なんてみんなこんなもんだよな。


「テリボンズク、俺も魔王軍の四天王を目指そうと思う。俺も自分の町がほしくなった」


「不可能だな、悪いことはいわないから諦めておけ。実力が足りないとかじゃないくて、人間っていう絶対にあってはならない要因が含まれているコンキチには無理だ。その偽装魔法だって、魔王様には通じるかどうかわからないぞ」


「どこからどう見たって魔族ってテリボンズクだって言ってたじゃないか。それが魔王にはバレるかもしれないだって? そんな程度の魔法をあんなに褒めたって言うのか? 俺のご機嫌でも取ろうとしたのかよ」


 自分の偽装魔法のできに、かなりの自信を持っていた俺は、今のテリボンズクの言葉が刺さった。

 もしかすると、魔王には俺の力は通用しないかもしれない。もちろん、すべての力が通用しない訳じゃないと思うが、俺が戦争を止めるには絶対条件としてこの世界の誰よりも強くないといけないんだ。俺には、話し合いで解決できるほどの頭脳はない。となると、力でねじ伏せることも時には必要になってくるはずだ。魔王の一人や二人くらい軽くひねれるレベルじゃないと……。


「俺は魔王様ならきっと見破ってくれるだろうって信じてるだけだ。別にコンキチの偽装魔法のレベルが低くて通じないだろうって言ってるわけじゃない。俺はお世辞は言わない性分だ」


「それならそうと先に言えよ。危うく自信を喪失してしまうところだったじゃないか」


 なんだ、それだったら別に関係ない。テリボンズクの忠誠心の高さがすごいってだけだ。魔王様に絶対の信頼をおいているんだろうな。俺もこれくらいテリボンズクから信頼されていたらすぐに次のステップに進めるっていうのにな。


「ほら、このあたりで降りるぞ。町の中までいって着地するわけにはいかないからな。外でいったん降りて後は歩きだ」


「楽しい空の旅もおしまいか。これは今後も俺の趣味しよう。趣味は、飛行魔法で散歩することです。なかなか、いい響きじゃないか」


 すっかり飛行魔法の虜になってしまった。こんな便利で楽しい移動手段を今まで使っていなかったなんてどれほど人生の価値を損失していたことか。だが、これからはいつも飛行魔法で移動することができる。人生に彩りが増したな。


「惚けてないで早くいくぞ。こっちだ、ついて来い」


「わかったから、置いて行くなって。暴れるぞ」

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