#3
2週間後・・・
9月16日 フランカ・ルチアーニ1等兵 6号隊舎
僅か2週間と言う極めて短い訓練期間を終えた私は1等兵に昇格し、同時に前線部隊に配属となる。
私の配属先は『北部方面軍第11歩兵連隊』と呼ばれる歩兵部隊だそうだ。
名前から推測して私は故郷のある北部に配属となるようだ。
短くも苦楽を共にした仲間達との惜別の間もなく、私はトラックに詰め込まれ一路、北へと走りだした。
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フランカ・ルチアーニ1等兵 輸送トラック車内
新品の戦闘服、軍靴、ヘルメットに身を包み、新調された銃を抱きかかえ荷台の人となる私達。
狭い車内には面識の無い兵士達。あの駐屯地で別の『隊舎』で訓練を受けた兵士なのだろう。
「よう、お嬢ちゃん」
不意に隣に座っていた兵士から声がかけられる。
横目に見るとノリの軽そうな男が笑いながらこちらを見ていた。
受けごたえをするのも億劫だった私は横目で男を見る。
「嬢ちゃんはどんな悪い事をして軍隊に来たんだ?」
『・・・・・・・・・』
いきなり立ち入った事を聞いてくる不躾な奴だ。
こういう手合いは自分のやった事を引き合いに優位に立とうとする底の浅い連中と決まっている。
私は少し考え『ムカついた奴を何人か殺してここに逃げてきた』という二の句も言えないような嘘を吐いた。
「おい、マジかよ・・・とんでもねぇ奴だな嬢ちゃん」
私の嘘に男はと本気で驚いていた。
私はすぐに笑って『冗談よ、存外臆病なのね貴方』と軽くあしらう様に言った。
「なんだよそれ、ギャグでも笑えねぇぞ嬢ちゃん」
男は私の存在に臆したのか、それっきり口を聞いて来なくなった。
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9月17日 朝
フランカ・ルチアーニ1等兵
北部方面軍 駐屯地
共和国北部に位置する地方都市リューン。
私の生まれ故郷であり、迫害の記憶が色濃く残る場所。
まさかこんな形で戻る事になるとは思いもしなかった。
市街地郊外に位置する駐屯地、そこが私の降り立った場所だ。
トラックから降り、1日がかりの長旅で凝り固まった体を伸ばす暇もなく集合がかかった。
周囲の流れに合わせて列中に紛れる。
「報告!ミシェル・マグワイヤー上等兵以下30名、現時刻より北部方面軍第11歩兵連隊第15中隊へ着任いたします!!」
戦闘に立つ兵士が指揮官らしき人物に声高らかに報告する声が聞こえる。
「私が第11歩兵連隊 第15中隊長指揮官だ。君達はこれから私の指揮下に入る」
「これから君たちは私と共に戦場へと向かう、共に勝利を刻みに行くぞ、『共和国よ、永遠に!!』」
少佐のその声と共に、私達はそのまま貨物列車に押し込まれた。
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9月17日 未明
私は今、戦場へと向かう列車の中で日記を書いている。
窓の無い貨車に押し込まれてて昼夜が分からない。
平和に眠れるのは今のうちだけと言う事だ。
この日記もこの記述が最後になるかもしれない。
気分が高揚しているからか、不思議と恐怖感は無い。
だがそれも戦場に着く頃には収まり、私は恐怖に震えるのだろう。
悔いを残さない為に、今日はもう眠る。
共和国よ、永遠に。
(↑この合言葉は一体何なのかしら?)
フランカ・ルチアーニ1等兵 記