#2
フランカ・ルチアーニ 首都カノプス 中央市場
張り紙の示した場所、そこは中央市場だった。
市場を歩き回ると市場から少し離れた所に兵士の集まりの前に人が列を成しているのが見えた。
恐らくあそこが出張所とやらなのだろう。
志願者の列の最後尾に並んでその時を待った。
「次、前へ」
暫く待ち続けて、ようやく自分の番となった。
「戸籍証明書を・・・」
家を去る時に持ち出した戸籍証明書の入る封筒を受付の兵に提出する。兵士は封筒の中を開けて流し目で通す。
「共和国籍、フランカ・ルチアーニ 女性 18歳。間違いないな?」
『はい。共和国籍フランカ・ルチアーニ 間違いありません』
兵士の問いにオウム返しの様に答える。
「・・・よろしい」
私の返事を聞いた兵士は戸籍証明書の封筒に何かのハンコを押し、受付奥の兵士へと渡した。
そして兵士は淡々と傍の機械を操作し、出てきた切符と数枚の書類を封筒に詰めて渡してきた。
「今後の君の身分を証明する物だ、絶対に紛失するなよ?それらをもって向こうのトラックに向かえ」
兵士の指す先、市場から離れた所に数台のトラックが止まっていた。
「これからの活躍に期待しているよ・・・・次!」
私は真新しい封筒を手にトラックへと駆け寄った。
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フランカ・ルチアーニ 共和国軍駐屯地
他の志願者達と共にトラックに押し込まれ、どれだけ揺られただろう?
次にトラックが止まり、降りたそこは如何にも軍事施設といった場所だった。
トラックを降りた先に立つ兵士が志願者達を分けて誘導していた。
「そこの志願者!渡された書類を見せてみろ」
兵士の気迫に圧されながら書類を封筒ごと見せる。
「お前は6号隊舎へ行け、場所はあっちだ」
早口でそう告げられ、私は示された場所へと向かった。
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フランカ・ルチアーニ 『6号隊舎』
『6号隊舎』と呼ばれたそれは兵舎と言うよりは戦車や戦闘機等を格納する為の剛健で質素な建物だった。
巨大な蒲鉾のような形状のそれは学力のない私からみても凡そ人が寝泊まりするような場所ではないと分かった。
内部には簡素な造りの2段ベッドが一定間隔に並べられており、個人のプライバシーなどまるで考慮されていなかった。
与えられたベッドの上だけが唯一のパーソナルスペースと言えるだろう。
到着と共に私は兵士から袋を渡され、志願者の列に並ばされて支給品を受け取る。
使い込まれた戦闘服、うっすらと錆の浮いたヘルメット、厚手の手袋、年季の籠った軍靴、その他装具類等々。
すぐに袋は一杯になった。
それらを自分に充てられたベッドの脇に置くと、一息つく間もなく集合がかけられた・・・・
これから私の新しい人生が始まるのだ。
一民間人ではなく。一兵士としての人生が。
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9月2日 夜
入隊初日、今日から日記をつける事にする。
明日から軍人になる為の生活が始まる。
正直、この選択は正しかったのか今更ながらに不安が襲ってくる。
だがこれで明日からの食事には困らないし、給与も全て故郷の母に仕送る事が出来る。
問題は他の志願者の人達とうまくやっていけるかだ。
共和国軍2等兵 フランカ・ルチアーニ 記