転生
美穂は幸穂が気絶する瞬間を見た。きっとただ気絶しただけだろう。わかっている。
でも、きっと助からない。スマホは石の下に敷かれている。車の破片は、幸穂の腹を貫き、足は車本体に潰されている。
どれだけ早く助けを呼んでも2時間以上はかかる。しかもここは崖の下だ。美穂も足が変な方向に向いており、確実に崖を登ることが出来ない。
父も母も近づいて息を確認したが、していなかった。
美穂は1人その場に佇んだ。
今の自分には何もできることがなかった。
非力な自分が許せなくて美穂は唇を噛んだ。
きっと私もここで死ぬんだ。それなら幸穂の傍で眠りたい。そう思い、幸穂の横に横たわった。
(お前は今の人生を後悔しているか?)
どこからか声が聞こえてきた。辺りを見回しても何もない。人影もなかった。
だが、何かを感じて答えた。
「いいえ」
(幸穂が恋しいか?)
「まだ一緒に居たかった」
(そうか。なら、2人で転生してみるか?)
「何その急な展開。転生はしてみたいけどね」
(そうか。なら良い)
美穂はいきなり眠たくなった。とても強い睡魔に襲われ目を開けることすら敵わない。美穂はそのまま寝てしまった。