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いや、知らんがな






「澄み切った………空だぜ」

「なぁーにが『澄み切った………空だぜ』よっ!!そんな老人みたいな雰囲気を出して黄昏てないでシャキッとしなさいシャキッとっ!」

「痛いっ!?」


折角雲ひとつない空を眺めながら影のあるダンディーな男性を醸し出していたというのに、こういう時に限って頭に毎回重い衝撃を受けてしまう。


「てか毎回毎回そうやって分厚い本で俺を叩く必要はあるんですかねっ!?止めてくださらないかしら宮廷魔術師のサーシャ殿っ!?アタクシの頭脳がバカになったらどう責任を取ってくださるのかしらっ!?」

「え?やだ。そしてキモいんですけど?何その口調」


コイツ、いつか絶対ギャフンと言わしてやるっ!!


「それは置いておいて───」

「いや暴力振われた話を置いて行こうとしないでください」

「───あんた、何こんな所でいつまで燻っているつもりなのよ?早く宮廷魔術師に慣れるように何かしらの功績を立てなさいよねっ!どうせあんたのことだからこれくらいの功績を立てるくらい簡単でしょうっ!?何でやらないのよっ!!そのせいで私最近またダグラスに付き纏われて大変なんだからねっ!!」


いや、知らんがな。


「いや、知らんがな」

「なっ!?」

「すまん、心の声が漏れ出てしまったようだ。気にするな」

「余計に悪いわっ!!」

「痛いっ!?暴力反対っ!!」

「フンッ」


心に声が漏れ出るよりも暴力を振るう方が悪いと思うのだが、ここでそれを言ってしまうと更なる暴力が飛んで来かねないのでここは黙秘一択である。


いつの時代も女性を怒らすと怖いというのは世界が変わってもどうやら同じらしい。


それにしても何でこのサーシャ・グラン・ホーエンツォレルンという女性はこうも俺に突っかかって来るのか不思議である。


「それで何でそこまで俺を宮廷魔術師にしたいんだよ?確かに昔は宮廷魔術師になるのが一つの目標ではあったんだが今の生活もこれはコレで良いなと思っているんだぞ?」

「それってただ単に楽な生活をしたいってだけじゃないのよ?」

「ああ、自慢じゃないがその通りだ。それにダグラス程の男性の何処が嫌なんだ?器量良し年収良し戦闘力もお墨付きの超優良物件じゃないか」

「レンブラント………あんたって人は、本当に、全く、もうっ………」


そしてサーシャはまるで物分かりが物凄く悪いのに生意気な生徒を見る先生の様な目線を俺に向けて来るでは無いか。


解せぬ。


むしろ俺は学生時代コレでも前世の知識のお陰もあって物分かりの良い生徒で有名な方だったと自負しているくらいだ。

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