キラッキラした目
「このタバコは魔力を与えてもいなければ術式で火力を操作している訳でも無い。にも関わらずこうして一定の火力、一定の時間この様にしてタバコは燃え続けている。それは何故だ?」
「そ、それは………火の精霊が───」
「精霊どうこうは単なる信仰に過ぎない。それがダメとは言わないが俺の弟子となるには精霊だの何だのという考えは捨ててもらう。それではもう一度聞く。このタバコはどうして燃えている?」
「…………わ、分かりません」
余程分からないのが悔しいのかレヴィアは苦虫を噛み潰した様な表情で分からないと答える。
ここで屁理屈を捏ねる様な奴じゃなくて素直に分からない事を分からないと言える娘で良かった。
もし分からない事を屁理屈で認めようとしないのならば今後、何処で躓き、何処で分からないのかが分からずどう教えていけば良いのかも分からなくなってしまいかねないという事態は避けれそうだ。
「では次、雨はどうして降る?」
「わ、分かりません」
「では次、風はどうして吹く?」
「わ、分かりません………」
「では次───」
「さて、基本的な属性である火、水、風、土、雷の全てが分からないという事が分かった訳だが、これでも基礎は出来ていると胸を張って言えるか?」
「言えませんっ!!」
しかし何故だろうか?
俺が逆の立場であれば間違いなくここまで、今まで勉強して来た内容を否定されれば心折れないまでもそれに近い感情を抱くと思うのだが、目の前のレヴィアに至ってはむしろその真逆で否定していけば否定して行くほどその目をキラキラと輝かして行っている。
コレはアレか?
前世で憧れのバンドから基礎からギターを教えて貰う様なものなのか?
そうであれば納得は出来るのだが宮廷魔術師でも無ければ未だこの世界で何も成し遂げていないし成し遂げようとも思っていない唯のしがない魔術学園の数学教師でしか無い俺へ向ける感情では決して無いと思うのだが………。
もし前世でギターが趣味だと言う数学教師に基礎から否定されると俺だったらキレる自信がある為尚更である。
だが、キレられるよりも良いかと考えを改めてレヴィアを見るのだが、やはりそのキラッキラした目はどうにもこうにもやり辛いと思ってしまう。
生徒の期待が大き過ぎて俺の方が潰れてしまいそうだ。
もし、もしである。
もしレヴィアの目標が高等部最後の大会で優勝する事が目標だと言うのであれば「俺自身が無理だったのだから優勝は出来ない」と言って他の者を師匠に宛てがうだろう。




