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愛しの奴隷様

「あら、久しぶりじゃない。良い人とは喧嘩でもしたのかしら?」

「いや、ちょっとな」

「そう。深くは聞かないわ。でも良い人がいるうちは私の店には来ない方が良いわよ。これは女としての助言。店の経営者としては毎日来て欲しいんだけどね」

「まあアイツとは今もラブラブだから心配ない。ご忠告感謝するよ」


ただ違うのは姿を消した場所である。


それは俺がまだリーシャと出会う前に良くお世話になった店であり男のパラダイスでもある。


幾ら天才と言えど彼女にはまだここに乗り込むには人生経験的にも厳しいであろう。


卑怯だ不潔だ何だと言われるかもしれないがそれが大人というものである。


どれだけ汚くとも、どれだけ卑怯であろうと勝たなくては意味がない。


努力しましたと言って「あんだけ努力したのだから仕方ないね。今回だけだよ」などと言われるのは子供の特権である。


大人になれば「努力はしましたっ!けど失敗しましたっ!」などという言い訳は通用しない。


「で、今日はどうするの?綺麗どころは揃えているわよ?」


そして今日ここを利用するのは不可抗力であり致しかたない事である。


そう致し方ない事なのである。


「で、では今日は七番の子と金貨一枚コースで」

「金貨一枚コースとはどの様なコースなのですか?」

「それはだな、様々なサービスをしてくれ、利用時間も一番長いコースなんだよ」

「それで、無知な私に様々なサービスとやらを詳しく教えて頂けないでしょうか?ご主人様?」


 そして俺の後ろには愛しの奴隷様がうすら笑いを浮かべて立っていた。





「この子に言われて来てみれば……まったくもうっ!私という者がいながら何であんな場所に行ってたのかしらっ!?私では物足りないとでもいうのかしらっ!?」

「すみませんでした」

「やりたいプレイがあるのなら受け止めてあげますから恥ずかしがらずに言ってくれて構わないから。今更引きやしないわよまったく」

「いや、そういう訳では無くてですね……いやはい、すみません」


勿論、リーシャにやって貰いたいプレイが無いとは言い切れないのだが、愛している彼女にそれを言うのが憚れるというのは前世も今も対して変わっていない。


そこには恥ずかしいという感情もあるのだが、やはり一番は引かれたくない、その結果彼女を失いたくないという感情による物が大きい。


結局のところ俺は彼女を失いたくないのだ。


「全く、変な所で女々しいと言うか何というか。完璧な人間など居ない様に完璧な御主人様像を演じる必要はございませんわ。別に御主人様も性癖の一つや二つ知った所で私からすれば御主人様は理想的な御主人様でお変わりないのですから」




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