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モンストルム・デアデビル  作者: にっしー
誠の一番長い日
98/108

謝罪

2026年 9月21日 月曜日 11:01


「いやーすまんすまん、ちょっと質問攻めにあって遅れたわ」


 三木が悪びれた顔をしながら、部屋に入室してくる。


「…………ん? どうした、何か重たい空気出して」


 部屋に入った三木は、既に椅子に座っていた全員の空気がどことなく重たいことに気付くと声を上げる。

 だが彼の問いに対しての返答はなく、訝しげな顔になりながらも三木は空いている席に座った。


「おいおい、マジでどうしたんだ? これからどうするかって話をするんじゃないのか?」


「……誠が話があるんだとよ」


 椅子の背もたれに寄りかかりながら、晶は少し怒ったような声色で三木に告げる。


「話? なんだなんだ、彼女にでも振られたのか誠」


「いや、そういう話じゃなくて……その、大事な話なんだ」


 三木の軽口に少し困惑しながらも、誠は口を開いた。


「さっき皆が母さん達を助けに行ってくれてる間にアモンと決めた事があるんだ、それを……皆に伝えようと思って」


「……分かった、聞かせてくれ誠」


 誠の真剣さを感じさせる雰囲気に、三木は頷くと彼が話し始めるのを待った。

 他の仲間達もまた、誠を見つめながら待つ。


「その……実は──」


 誠は全員に見つめられながら、少しずつ話し始めた。

 アモンとバアル、そしてソロモンのこと。

 大門司に勝つために自らがアモンと合一し、人間ではなくなったこと。

 もう二度と元には戻れない事。


「……なるほどな、だから誠からアタシみたいな雰囲気を感じたわけだ」


「あぁ、見た目は人間と魔人の形態で分けれるんだけど本質は変わらないみたいなんだ」


 納得したように言う晶を余所に、大人二人は厳しい表情を浮かべていた。


「合一か、だから悪魔に入れ込み過ぎるなと言ったんだ閼伽井」


「先生……」


「全くだ、そんなもんしなくたって他に方法はあったかもしれないのに……俺たちに相談も無しで決めやがって」


「その辺りに関しては我も言ったのだがな、誠が聞かなかったのだ」


「本当ですかぁ? 閼伽井先輩はそういう話はきちんと私達に伝えてくれると思ってましたけど」


 花ですら、アモンを怪しむように見つめる中……誠が更に口を開く。


「実は……皆に相談しなかったのには理由があるんだ」


「理由? んだよ、さっきの話で全部終わりじゃねえのかよ」


「あぁ、実は……大門司を倒して……その後アモンの目的を達成したら……俺は死ぬことになるんだ」


「は?」


 死ぬ、と言う言葉に全員が素っ頓狂な声を上げた。


「オイ、そりゃどういうことだ誠」


「し、しししし死んじゃうってどういうことですか閼伽井先輩!?」


「あー……やっぱりそうなったっスか」


「やっぱり? おい待て、古森お前まさか知ってたのか!?」


「べ、別に知ってはいなかったっスよ!? 何となく予想はしてたっスけど……」


 こめかみに青筋を浮かべながら、三木が古森を見る。

 そんな三木に睨みつけられ、古森は両手をブンブン振りながら否定した。


「どういうことか説明してくれ、閼伽井」


「はい、実は……」


 三木よりはまだ冷静に怒りを見せている峰が、誠に説明を求める。

 それに対し、少し怯えながら誠は全員へ説明を始めた。

 現在のソロモンの状況や、アモンの望みに関してを。


「なるほどな、つまりアモンが駄々こねてこうなったってわけだ」


「我儘とは心外だな、同意したのはマコトの方だ」


「ふざけるな! こいつはまだ子供で正常な判断も出来ないんだぞ!? そんな子供の判断無効だ!」


「と我に言われてもな……もう元には戻れん」


「なんだと、テメェ!!」


 三木は拳銃を抜き出し、机の上に佇むアモンへ突き付ける。


「お、おじさん!」


「お前は黙ってろ誠! 何が、何がもう元には戻れんだ……こいつはようやく自分の人生を歩き始めようとしてたのに……それを、こんな!」


「我はマコトに強要はしていない、むしろその選択を破棄しようとした上で選択したのだ。 それに齢18にも満たないとはいえ、マコト個人の判断も尊重してやったらどうだ」


「なんだと……!」


 激昂する三木に対して、峰は両腕を組みながら誠を強く見つめる。


「何故相談しなかった閼伽井」


 峰の言葉に、誠は少しだけ言い淀む。

  

「言えば反対すると思ったか?」


「それは……」


「もう少し信用してもらえていると思っていたんだがな」


 峰が溜息を吐くと、誠も表情を暗くした。


「皆、ごめん……でも、俺にしか出来ない事なら俺がやらなきゃって思って……」


「先輩……」


「……何もお前が一人で抱え込むことはねぇだろ、真面目過ぎんだよバカ野郎」


「俺は認めねぇからな……」


 三木はそう言って銃を降ろすと、再び椅子に座った。


「皆本当にごめん、でも……俺はアモンの望みも叶えてあげたかったんだ」


「わかってる、お前がそういう奴だってのは分かってるからアタシはこれ以上は何も言わねぇ」


「うぅ……わ、私も凄い悲しいですけど……先輩が決めた事なら……」


「ちっ、何とかならねぇのか……」


 全員が悲しそうな表情をする中で、古森だけが違う表情を見せていた。


「多分大丈夫だと思うっスよ?」


「え?」


「どういうことですか、古森さん」


「さっきまでの話を総合するとアモンは一回ソロモンと合一をした後に別れてるんスよね? それなら……」


「別に我はソロモンとの合一を解いてはいない、マコトとの合一もソロモンと合一した状態で行っている」


 アモンの言葉に、古森は気の抜けた表情となる。


「つまり、今の誠君はソロモンでありアモンでもあるってことっスか?」


「そうだ、もっともソロモンは半分死んでいるので0.5ソロモンといったところだがな」


「うーん……そうっスか……」


「だがそうだな、よく考えればまだ方法が無いわけではなかったか」


 アモンが珍しく、翼を自らの顎に当てながら考え込む。


「ドリームマシンを用いればあるいは……」


「んだよ、何とかなるのかよ!?」


「確証はない、あれは無限にある可能性から特定の未来の可能性のみを残す機械に過ぎん」


「……あ?」


「馬鹿にも分かる様に言うなら、起きる可能性が0の未来をドリームマシンは叶えてくれないということだ」


 アモンは晶にそう説明しながらも、思案を続ける。


「なら可能性が0じゃねえなら出来るってこったろ? やってみりゃいいじゃねえか」


「そうですよ! やってみて駄目なら他の方法を考えればいいんですし!」


「まぁやらない理由にはならねえわな、俺は誠が死なないんなら賛成だ」


「三木氏と同感だ、閼伽井が無事になる方向で動こう」


「技術的な問題はともかく、個人的な気持ちは自分も同じっス」


 一つだけ見えた希望に、誠以外の全員が少しだけ安堵した表情を見せる。

 そして、それを見た彼もまた表情を和らげた。


「皆……ありがとう」


「むむ、先輩が死ななくても良さそうだって分かったらやる気と希望がムンムン湧いてきました!」


「と言ってもまだ可能性の話だがな、それを実現する為にも今は大門司を倒さねばならん」


「そうか、そういや結局アタシ等はここに逃げてきただけでアイツ等が今何やってんのかもよくしらねーんだよな」


「それに関しては我と古森が以前から調べておいた」


 笑顔になった誠を見て、アモンも少しだけ温和な表情を見せると直ぐに古森を見た。

 

「調べておいた? 一体いつの間に……」


「あ、もしかしてちょくちょく居なくなってた時か?」


「まぁその時っスね、今回山城ちゃんや三木さんを助けた戦車を作っておくように指示出したのもアモンっスよ」


「今はその話はいいだろう、それよりもバアルの動向についてだが……」


「連中の目的は一体なんなんだ? アモンが必要なのはわかったけどよ」


 晶の質問にアモンはそちらを見ると、改めて説明を開始した。


「バアルの目的は人類をより良い方向へ導くことだ、ドリームマシンを使ってな」


「よりよい方向ぉ? 方角の話か?」


「ある意味ではそうとも言える、がドリームマシンをどう使ってそれを達成するかは不明だ」


「何にせよ、大門司達はドリームマシンの起動が出来る状態にあるってことは分かってるっス」


「そうだ、その上で現在の奴らの動きだが……コモリ、地図を出せ」


 アモンの命令に古森は頷くと、テーブルの上にホログラムで地図が浮かび上がる。

 映し出された東京の地図は、23区内が殆ど真っ赤になっていた。


「これは現在の東京の地図っス、東京23区はほぼ自衛隊に制圧されてると見て間違いないっスね」


「だろうな、現状警察も大門司寄りだ。 というよりかは世間的には俺達はテロリストだから、俺達が悪側に居るみたいなもんだが」


「わ、私達何も悪い事してません!」


「その辺りは世間への根回しやメディアを使った情報操作が大きいな」


「とはいえ異界に来れる訳ではない、現状戦力では五分と言っていいだろう」


 そう言ってアモンは誠を見ると、再び地図へ目線を戻す。


「さて、そこで大門司がどこに居るのかだが……」


「向こうの通信をちょ~っと盗み聞きさせてもらったっスが、どうやらここに居るらしいっス」


 古森はそう言って、東京湾のある一点を指差した。

 そこは海に浮かぶ島の様な場所である。


「東京湾? 海の上だが……」


「いや、この場所は知ってるぜ……ここは──」


「あっ、この間学校でやりました! 東京メガフロートですよね!」

 

「東京メガフロートぉ? んだそりゃ」


「俺も聞いたことあるかも、確か次世代のデータ集積施設とかってテレビでやってたような……」


 誠の言葉に古森は頷く。


「その通りっス、東京メガフロートは天災大国の日本が災害時などに通信が全国と途絶しない様にと作られた施設っスが……」


「この施設の建造を立案したのが大門司だ」


「なるほど、建前と本音が違った訳か」


「あ? つまりなんだ? あのヤローは国に自分が使うための施設を造らせたってのか?」


「まぁ……そうなるっスね」


 古森の返事に晶は呆れた表情を作る。


「んだよそれ……バカじゃねーの?」


「わ、私たちの税金でそんなの作ってたなんて許せません!」


「いや、払ってるこっちとしては当然許せんがお前達はまだ税金払ってねーだろ」


「それでもです! 許せません!」


「税金の話はともかく、居場所が分かったんならあとはどう攻めるかだね」


 別の方向にキレる花を横目に、誠は地図を見た。

 メガフロートは港から10キロ程離れた場所にあり、行くためには船かあるいは飛行手段が必要であることに彼は気づく。


「おじさん、船の免許は持ってる?」


「船? まぁ船舶免許なら一応あるが……ボートかなんかで乗りこむつもりか?」


「それはお勧めは出来んな、海上自衛隊に見つかって撃沈させられるのがオチだ」


「となると上? おじさん、飛行機の免許とかは……」


「ヘリの免許なら持ってるが……って結局海自に見つかったら落とされるのは同じだろ!」


 自らの案にノリツッコミをしてくれる三木に笑いながらも、誠はどう乗り込むかを考える。

 そこへ……。


「ふっふっふ、話は聞かせてもらったわよ!」


「だ、誰だ!?」


「私よ! 子猫ちゃん達!」


 突然部屋の扉が開き、室内に入ってきたのは……。


「い、飯田さん?」


「ハーイ、皆元気してた?」


 テレビキャスターの飯田だった。

 彼女の顔を見た三木は、とてもげんなりした表情を浮かべるのだった。



来週は仕事の為、恐らく更新が無いと思われます

すまない……

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