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モンストルム・デアデビル  作者: にっしー
峰京子という女
65/108

因縁

2026年 7月28日 火曜日 19:25


 神剣が宙を舞い、大地に突き刺さる。

 それは仄暗い街の中で空に微かに見える月光を浴び、光を放つ。

 それと同時に、神剣の所有者である峰もまた鈍色の輝きを放ちながら叫んだ。


「何故、何故貴様が……!」


 峰が叫んだ先の相手──誠達が良く知る峰京子はその問いに答えない。

 旧日本軍の黒い軍服の様な格好に同じ色の外套をたなびかせ彼女は腰に付けた鞘から軍刀を抜刀した。


「み、峰先生……」


「どうしてテメェがここにいんだよ!? っていうかなんだその恰好!?」


「話はあとだ問題児ズ、今はこの状況を切り抜けるぞ」


 峰は誠達を一瞥しながら言うと、再び前方の鎧へ目を向ける。

 

「そういうわけだ、すまんが消えてもらうぞ」


「消えてもらう……? 消えてもらうだと、この私に消えてもらうだとぉ!?」


「…………あぁ」 


「消えるのは貴様の方だ姉上! いや、むしろ何故あの時私達の前から消えた、答えろ!!」


「あ、姉上……!?」


 鎧は峰の言葉に激昂し、両腕をわなわなと震わせながら怒鳴る。

 姉上と言う言葉を聞き、峰は至って平静だがその後ろでそれを聞いた誠と晶は驚愕の表情を浮かべた。


「……答えるつもりは無い、構えろ当代」


「腑抜けたか姉上……良いだろう、一族の恥さらしは今ここで私が処断してやる!」


 峰は軍刀の切っ先を鎧へ向ける。

 鎧もまた吹き飛ばされていた神剣を手元に呼び寄せると構えた。


「三合打ち合った後、奴を封じる。 その後はそこの男を連れてホテルまで逃げろ、いいな」


「あっ……は、はい!」


 峰は誠にだけ聞こえるように呟くと、深く腰を落とす。


「さぁ行くぞ当代、今の腕前を見せてもらおうか」


「今すぐ地獄へ送ってやるぞ、臆病者の先代!!」


 峰が息を吐いた。

 瞬間、両者が居た場所の中間点で衝撃が起こった。

 台風の様な強風が誠達を襲い、彼らをたじろがせる。


「くっ、互角だと!?」


「いや、こちらの予想よりも強いぞ当代」


「舐める……なぁっ!」


 両者は剣と刀をぶつけあわせ、鍔迫り合いの状態となる。

 互いの力は互角に見えたが、直ぐに鎧の峰が優勢となった。


「物心ついた時からそうだ、お前は私をいつも見下して!」


「…………」


「その上、私より先に生まれたからというだけで実力が私よりも劣るくせに峰の名を……!」


 憎しみの籠った声で鎧が吼えた。

 神剣が震え、それを受ける峰も手を震わせる。


「挙句四年前に突然の失踪、一体何を考えている!? 歴史ある我が一族を何だと思っているのだ貴様はぁ!」


「すまん当代、いや……けい


「お前に私の名を呼ばれる筋合いは無い!」


 より神剣に力を籠める啓から峰は体を左に転がして距離を取ると再び軍刀を構える。

 それに対し、峰が居なくなったことで地面に剣を叩きつけた啓は荒い呼吸をしながら上体をゆっくりと起こし彼女を睨みつけた。


「それに貴様、先生だと? 消えた後に死んでいたならまだしも……のうのうと表の社会で生きていたとはな!」


「お前の批判はもっともだ、反論するつもりは無い。 だからこそ、今は一人の教師として教え子を守らせてもらう」


「万が一、いや億が一にも態度を改め一族に戻る気概があるかと思ったが……最早許せん!」


 啓は神剣を十文字に振る。

 するとその軌跡を辿る様に見えざる刃が峰へと飛んでいく。

 

「やはり最後に会った時よりも腕を上げたな啓……!」


 対する峰もXの字を作る様に軍刀を振り、互いの刃を空中で激突させる。

 

「はぁぁぁぁ!」


「しっ!」 


 啓は刃を飛ばした後、間髪入れずに峰へと走り寄り斬りかかる。

 峰もまた、それを予期しており啓の神剣を居合の要領で弾き飛ばすと左手で右の胸元にあった一本の管を手に取り叫んだ。


「これで三合目、悪いが今日はここまでだ啓」


「なにっ!?」


「召喚……!」


 刀で神剣を弾き、啓の上体が反ったのを確認すると峰は管を開く。

 そこからは一匹の青い鬼が現れた。


「これは……一族秘伝の……ッ!?」


「こいつの強さは折り紙付きだぞ啓、吹き飛ばせ風鬼ふうき!」


「おうよ可愛い妹ちゃん、悪いがランデブーしてもらうぜ?」


 風鬼と呼ばれた青い鬼は、腹にぽっかり空いた穴から強烈な風を巻き上げると啓をそのまま空高く舞いあげていく。


「おのれ、おのれ……! 我が一族秘伝の悪魔を……姉上ぇぇぇぇ!」


「お前達今だ、さっさと逃げろ!」


 竜巻の様な暴風に襲われ、飛んでいく啓を呆然と見ていた誠達だったが峰の激で直ぐに意識を取り戻す。

 そして倒れている三木を抱え上げ、峰の方を向いた。


「せ、先生はどうするんですか!?」


「別方向から脱出する、私の事は気にするな」


「先生……うわっ!?」


 少しだけ悲し気な表情を浮かべながら、峰は竜巻に覆われた啓を見ていた。

 そんな峰の表情に誠は何と言えば良いのかと考えていたが、そんな気持ちは直ぐに背後からの銃弾で掻き消えた。


「急げ、奴等逃げる気だぞ! 絶対に逃がすな!」


「おいキング、アイツ等撃ってきてんぞ! アタシ等はともかくそのおっさんに当たったらやべぇ!」


「出来れば……さっさと逃げてくれると助かる」


「さっさと行け、奴もすぐに悪魔を呼び出す!」


「……分かりました、先生またあとで! 皆行こう!」


 射撃してくる自衛隊員と自分たちの間に、誠は大きな炎の壁を発生させた。

 そして晶の顔を見て、互いに頷きあうと二人は夜の街へと三木を抱えたまま跳躍し消えていく。


「ぐわっ、あ、熱い……!」


「奴等が逃げたぞ、追え、追え!」


 炎の上を飛び越えていく二人を見て、突然現れた炎に驚いていた自衛隊員達は直ぐに誠達を追いかけ始める。

 だが魔人である二人の移動速度は常人のそれを遥かに超えており、直ぐに自衛隊員の姿は見えなくなった。


「おいキング、こっからどうすんだ!?」


「まずは最初に入ってきたデパートの警備室まで戻ろう、そこからは──」


 そこで、誠は言葉を詰まらせた。

 仮に現実側に戻れたとして、三木を担いだまま街をうろついては間違いなく自衛隊、あるいはその繋がりの者に見つかるだろうという推測が出来たからだ。


「そこからは……俺が移動してきた経路を使う……」


「そうか、おじさんが入ってきた道があるのか」


「あぁ、」


「かなりボッコボコにされてんのに、タフなおっさんだな」


「まだまだ若い奴には負けてねぇってことさ、さぁさっさと帰るぞ誠」


 誠に抱えられた状態で、三木はボコボコにされ腫れ上がった顔でニヒルな笑みを浮かべた。


「分かったよおじさん、道案内はお願いするよ」


「おう、警察に見つからないようなルートで帰るとしようぜ」


 三木の言葉に誠は頷くと、三人は直ぐに最初に入ってきたデパートまで到着すると下水まで降りていく。


「おじさん、大丈夫? もう歩ける? 肩貸そうか?」


「どんだけ過保護なんだよ誠、見た目はボコボコだけど歩く位は出来るっての」


「ならいいけど……」


「それよりもお前達は大丈夫か? あのロボットにだいぶ殴られてるように見えたが」


「問題ねぇよ、アタシ等はこれでも結構な修羅場抜けてっからな」


 肩で息をする三木に対し、晶は余裕しゃくしゃくと言った顔で答える。

 それを聞いて、少しだけ呆れた顔を浮かべると三木は先導を始めた。


「そりゃ良かったよ、お前達が怪我をしてたらそれこそ申し訳ない」


「おじさん……」


「アンタ今時珍しいよな、セキニンカン? がつえーっつうかよ」


「そこら辺は誠の親父さんに教えられてな、昔はもっとてきとーだったんだぜ?」


「うーん、おじさんは今も適当なような……」


 三木の言葉に誠は苦笑し、晶もつられて笑った。


「はは、確かにな。 てきとーじゃなきゃこんな場所に一人でこねぇよ」


「それに関してはなんつーか、大人の事情って奴がだな……」


「大人の事情か、それで行けばもう一人の大人の事情も気になる所だがな」


「大人……そうだね、峰先生ともう一人の峰」


「聞いてる限りだと姉妹っぽかったが……当代だの先代だの、一族だのなんだのってのは何の話だ?」


 先導していた三木が一瞬振り返り二人に尋ねるが、二人は同時に首を横に振る。


「そうなるわな、無事ならホテルに戻ってくるだろうが……戻ってこなかった場合の事を考えておかなきゃな」


「戻ってこなかった場合? どういうことだよ」


「あの女が戻ってこない時は最悪我等の情報が売られている可能性もあるという意味だ、そうだろう?」


「そういうこった、最悪の状況を想定して準備はしておかないとな」


「……先生なら大丈夫ですよ、今は信じて待ちましょう」


 そう拳を握りながら誠は言うと、三木と晶も頷き返した。

 その後三人は雑談を織り交ぜながら、誠達が侵入してきた道とは別の道を進む。


「さて、そろそろ出口だが……お前達その格好からそろそろ戻ったらどうだ?」


「あっ、そういえばそうだね」


「すっかり忘れてたわ」


 三木の指摘に誠と晶は少し呆けた顔をして、魔人から元の姿へ戻る。

 

「ったく頼むぜ、その姿で誰かに見られたら流石に庇いようがねぇ」


「そういうおじさんこそ、その顔で街中は歩けないと思うけど?」


「ククク、確かにな」


「おわっ、フクロウが喋った!? さっき聞いてはいたがマジで喋るのかよこいつ……」


「正確にはお前が我の言葉を理解できるようになっただけだがな」


 驚く三木を見て、この反応を見るのは三回目だなぁと思う誠であった。

 彼らはそのまま下水の出口となる梯子を登り、外へ出る。

 

「……よし、誰も居ないな。 お前等も上がってきていいぞ」


 最初に表に出た三木が周囲を確認し、その後誠と晶は順番に外へ出る。

 

「あん……? ここは……」


「俺達が止まってるホテルの駐車場?」


「正解だ、これで俺の顔が腫れてても問題ないのは分かったろ?」


「確かにこの距離なら……後はロビーに誰も居なければ大丈夫そうだね」


「それなら問題ない、この時間帯に受付に人が居ないってのは把握済みだ」


 ニヤリと笑みを浮かべ、三人は素早くホテルの中へ入るとそのまま誠の部屋に滑り込んだ。


「だーーーっ、着いたぁぁ!」


「おい待て、ちゃんと部屋の中を調べてから……」


 部屋に入るなり、晶はベッドに飛び込む。

 それを見て、部屋のクリアリングを行おうとしていた三木は呆れた顔をする。

 だが直ぐに誠の部屋に何も無いことが分かると、彼もまた安堵した表情を浮かべた。


「はぁ……とりあえずは一安心か?」


「あぁ、そうみたいだね。 皆お疲れ様」


「ったく、思いがけない一日だったぜ……」


「俺も色々考えさせられる一日だったわ……」


「全くだな、問題児がこうも揃っていてはおちおち平凡な生活もしていられん」


 うんうんと、最後の峰の言葉に全員が首を縦に振った。


「あ?」


「ん?」


「え?」


「何?」


「遅かったなお前達、だがまずは無事で何よりだ」


 峰以外の全員が、彼女の声がした場所を見た。


「ぎゃあああああああああ!?」


「うおおおおおお!?」


「え、えぇっ!?」


「ほほう、これは……」


 誠の影の中から、峰の頭が顔を出していた。




ハワイ時間だとまだ日曜日なので更新は間に合っています!多分

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