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モンストルム・デアデビル  作者: にっしー
福徳の華編
28/108

女神ラクシュミ(挿絵あり)

2026年 5月15日 土曜日 14:32


「ご期待に添ってみせます、キング先輩!」


 四本の腕で武器を構えながら、花は笑みを見せた。

 その正面で、花の笑顔を見た色山は歯を強く噛み締めながら彼女を睨みつける。


「山城花……!」


「色山さん……いえ、色山恵子。 私はあなたを絶対に許さない──覚悟してください!」


「許す? はっ、あんた達みたいなガキにそんな事決められる筋合いはないっての……ラクシュミ!」


 花の怒りを受け、色山もまた自己の怒りを爆発させた。

 彼女は叫び、その声に呼応して女神が動き出す。


「こいつらを殺しなさい、お前の全力をもって!」


「あぁ、命令を受けてしまっては仕方がありません……これも契約の定め、花を手折ると致しましょう」


 全長5メートル程の女神が色山の足元まで進むと、彼女は左手に持った木箱を色山の後ろへ近づける。

 木箱はゆっくりと内部が開き、色山は躊躇なくその中へと入っていく。


「あっ、テメェ逃げんのか!?」


「ふん、あんた達みたいな馬鹿と真面目に戦ってなんてやる理由ないでしょ? 精々苦しみながら死になさいよ!」


「との命じです、あなた方には申し訳ありませんが……死んでいただきます」


「来るぞ、全員構えろ! ラクシュミを制圧する!」


 ラクシュミは左手の木箱に色山を格納すると、それを持ち上げ右手の蓮の花を誠達へ向けていく。

 女神が構えると同時に誠は叫び、全員が彼女を見据えた。


「さぁ、華麗に踊りましょう」


 たおやかな動作を取りながら、ラクシュミは告げ蓮の花を誠達へ向ける。

 それと同時に、強烈な衝撃波が女神の正面から迸ると三人はそれをバラバラな方向へ飛び回避する。


「すみませんラクシュミさん……撃ちます!」


 金色の鎧を輝かせ、花は手に構えたバズーカを空中で二つ同時に発射する。

 弾頭は黒煙を吐き、二匹の蛇がうねる様な軌道を描きながらラクシュミの顔面に直撃した。


「前回の借りはあるが今は手加減しねぇ、合わせろキング!」


「了解だ、クイーン!」


 爆炎と煙に包まれるラクシュミを、更に誠と晶の二人が追撃する。

 側面から一人ずつ、晶は釘バットを、誠はその右の拳を女神に叩きつけた。


「かってぇ!?」


「この感触は……不味い、離れるんだクイーン!」


 ラクシュミに叩きつけた自らの拳は、柔らかな頬ではなく硬質な金属のようなものに叩きつけられていた。

 誠の背中に数滴の冷や汗が流れ、同時に悪寒が走ると彼は真向かいに居る晶に向かって叫んだ。


「えぇ、離れた方が良いでしょう……離れられるのならば──回転なさい、スダルシャナ」


 誠の言葉にラクシュミは同意し、その武器の名を叫んだ。

 すると彼女の顔を包んでいた煙が晴れ、誠と晶の二人も同時に吹き飛んだ。

 煙が晴れた後、女神の顔を保護するように巨大な炎で出来た輪の武器であるチャクラムが覆っていた。

 誠と晶、そして花の三人の攻撃はこの輪によって全て防がれていたのだ。


「いってぇ! 何だ、斬られたのか!?」


「あれはチャクラムだ、投げるチェーンソーのようなものだが……ラクシュミの逸話にあんな武器の話は無いはずだ」


 地面に着地した晶と誠は、互いに手傷を負っていた。

 離脱が後少しでも遅れていれば、この傷が致命傷になっていたことだろう。


「先輩、大丈夫ですか!?」


「問題ねぇ、それよりそっち行ったぞ! 避けろ山城!」


 血を流す二人に心配の声を掛ける花だったが、チャクラムはラクシュミの顔から抜け出すと回転を始め、次に花へと襲い掛かった。

 大きさが3メートル程のチャクラムは高速で回転しながら空中を走り回り、途中何か所かの地面を削り取る。


「あわわ……!」


「炎のファイアダート!」


 猛烈な勢いで迫るチャクラムに驚き、体が竦む花へ誠は右手から炎の矢を放ち彼女の体へ巻き付ける。

 誠はそのまま鎖を力いっぱい引っぱると、彼女を抱きとめた。

 直後、チャクラムは壁を貫通し遊郭の外へと飛び出していく。


「花ちゃん、大丈夫?」


「あ、ありがとうございます先輩!」


「あらあら、青春かしら? いいわねぇ~、そういう若さってのは」


 見つめあう二人に、色山の小馬鹿にしたような台詞が聞こえてきた。

 顔を上げると、ラクシュミが左手に抱えた木箱を開け色山が顔を覗かせた。


「どう、あたしのラクシュミの力は? あんた達みたいな青いだけのガキじゃ勝てない位強いってことがよぉくわかった?」


 色山はもう自分の勝ちは揺るがないと確信しているのか、勝ち誇った顔でそう笑った。


「あぁ……正確にはわたくしの力ではなく、武器であるスダルシャナが強いだけです……」


「スダルシャナ? そうか、あれはラクシュミの夫、ヴィシュヌの武器か!」


「夫ぉ? 旦那の武器使ってんのかよアイツ!」


 武器の名を聞き、誠と融合しているアモンが驚きの声を上げる。

 その声に思わず晶が聞き返した。


「申し訳ありません、戦闘にはわたくしは不向きの為に夫が持たせてくれたもので……」


「なるほど、確かに太陽神の炎から生まれたと言われこの世の悪を滅する力を秘めたと言われるスダルシャナであれば武器としては十分すぎるな」


「まぁ……わたくしの夫をご存じでしたか」


「インドの三大主神を知らぬ悪魔の方がどうかしている、もっとも我の方が偉大な悪魔ではあるがな」


 アモンは抱きとめていた花を手放すと、そう不敵に言いニヤリと笑い返した。 

 それを見て、ラクシュミも柔らかな笑みを浮かべる。


「ラクシュミ、敵と慣れあわないの! さっさと殺しなさい!」


「あぁ、楽しい一時も終わりですか……では申し訳ありません、今一度夫ヴィシュヌの炎を受けていただきます」


「やっべぇ、また来るぞ!」


「ど、どうしましょう先輩!?」


「ふっ、全員我の後ろへ来い!」


 色山の一言で憂いを帯びた表情となったラクシュミは、そう言うと彼女の眼前に再び巨大な炎で形作られたチャクラムを呼び出した。

 チャクラムはゆっくりと回転を始め、それは徐々に早くなっていく。

 それを見て、先ほどその攻撃を受けた晶は誠へ向けて叫ぶ。

 花もまた、不安そうに彼を見るが誠は不敵に笑う。


「俺の後ろに来いって……どうするんだアモン」


「おおよその察しは付いているのだろう?」


「ま、まさか……だが本当にできるのか……?」


「出来なければ死ぬだけだ、それともお前の覚悟は口だけか?」


 自らの口から発せられるアモンの言葉に、誠は怒りを覚えた。

 奥歯を食いしばり、両手に力を籠める。


「そういう言い方をされたら、逃げる訳にはいかないな」


「お、おい……とりあえず来たけどどうすんだよあれ?」


「皆で攻撃して壊しますか?」


 二人の質問に誠は首を横に振る。


「いいや、俺があれを受け止める。 その間に二人はラクシュミを攻撃してくれ」


「はぁ!? テメェ正気か!?」


「えぇっ!? き、危険ですよ、やめましょうよ!」


「奴も炎、俺も炎ならいけるはずだ。 これ以上長引けば下からウィンプ達が押し寄せてこないとも限らない……今ここでやるべきなんだ」


「さぁ、覚悟はよろしいですか?」


 ラクシュミは蓮の花を揺らしながら、誠へ声を掛ける。

 本来ならば問答なく投げつけても良いところを、敢えて彼に言うのはやはり彼女の優しさと不本意な契約を色山と結ばされているというところが大きいのだろう。

 誠は女神の問い掛けに、首を縦に振る。


「あぁ、いつでも。 二人とも、よろしく頼むよ」


「ちっ、いっつも無茶しやがって……死んだら許さねえからな!」


「先輩……頑張ってください!」


「では……受けなさい、スダルシャナの裁き!」


「うおおおおおおお!!」


 女神の声を共に、巨大なチャクラムが誠へ一直線に飛んだ。

 空気を裂き、今、正に眼前の三人をも裂かんとする巨大な横薙ぎの炎を誠は両手を開き掴まえた。

 それと同時に晶と花は左右に跳躍し、ラクシュミへと向かう。


「行くぞ山城! キングの努力を無駄にすんな!」


「は、はい!!」


 魔人と化し、血の色に染まった異形の手を炎が焼き焦がしていく。

 炎で出来たチェーンソーは、誠の掌の肉を抉り、焼く。

 だがそれでも誠は両手でそれを必死に抑える。


「受け止めた!? ほ、他の連中がこっちに……ラクシュミ、何とかしなさいよ!」


「やっていますが……スダルシャナの炎が吸われて──」


 あけ放たれた木箱から、三人の死ぬ瞬間を見ようとしていた色山は驚愕した。

 直ぐに真っ二つになるものと思っていた先頭の誠が、神の武器を止めたからだ。

 更に彼の後方から迫る二人の魔人に怯え、女神に誠を始末するように命令するが……スダルシャナは誠の両手からびくともしない。


「何故、俺がこの武器を止めていられるか分かるか……?」


 大きさが3メートルを超えていたスダルシャナは誠によって炎がどんどん吸い上げられていく。


「かつて、我はアメン・ラー……太陽神として崇められたこともあるのだ。 その我がどうして自らが生み出した太陽の炎でやられようか!」


「なんと、なんという……素晴らしい慧眼……」


「ウォォォラァァァ!」


「覚悟してください!」


 スダルシャナは太陽神スーリャによる純粋な熱、太陽の炎より生み出された武器である。

 そしてアモンもまた、かつては太陽神と呼ばれたこともある悪魔。

 その逸話により、スダルシャナが放つ炎もアモンが放つ炎も同質であると世界は判断したのだ。

 それにより、アモンは神の武器を掌握しつつあった。

 また、ラクシュミはそれを妨害しようにも自らに迫った二人の魔人によってそれも思うままに行うことが出来なくなっていた。


「きゃあああぁぁ! ラ、ラクシュミィ! なんとかしなさいよ、あんたあたしの悪魔でしょ!? 奴隷でしょ!?」


「わたくしは──」


「違います! ラクシュミさんはあなたの奴隷なんかじゃありません!」


 ラクシュミの左手の上で、魔人の襲撃に怯え身を縮こませたまま色山が叫んだ。

 奴隷と言う言葉にラクシュミは悲しそうな表情を浮かべるが、花の声でそれは変わった。


「ラクシュミさんも、あなたが人形にした他の候補生の皆も、私の家族も!! 皆、あなたの奴隷でも……道具でもない!!」


 空中で、花が持つ4本の武器が色山を標的として捉えていた。


「少し痛いですよ! FIRE!!!!」


「や──やまぎぃぃぃぃ!!」


 バズーカ二門、アサルトライフル二挺がけたたましい音を立ててその口から鋼の弾丸を発射する。

 それらは華麗な弧を描き、色山に直撃すると彼女はラクシュミの手から吹き飛ばされた。

 色山が吹き飛ばされると同時に、晶も全身全霊を込めた一撃を女神に対して放った。


「さっさと誠を攻撃するの、やめやがれぇぇぇ!!」


 釘バットを頭上に高く掲げたまま、晶はラクシュミを頭部から足元まで一閃した。

 そして、着地をすると女神に対して背を向け、こう言い放った。


挿絵(By みてみん)


「楽勝!!」


 晶が、彼女が考える最高に格好いいポーズをするとラクシュミと色山は同時に地面に倒れるのだった。



待たせてすまんかった…

【悪魔解説】

シュウ

中国の古代神話に登場する魔王。数々の武器の発明者かつ、人類で初めて反逆を行った存在ともされている。

強大な軍勢を率いて世界を脅かしたが黄帝によって討伐され、体をバラバラにされた。

6本の腕に4つの足、人の体に牛の頭を持つとされ、超能力を操ったという。

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