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モンストルム・デアデビル  作者: にっしー
福徳の華編
25/108

作戦会議

2026年 5月13日 水曜日 20:54


 品川。

 誠は両手に買い物袋をぶら下げながら狭い路地を通り、隠れ家の様に存在する父が遺した家の前に立っていた。

 玄関を前にして、後ろを何度か確認すると扉を開けた。


「ふぅ……」


 玄関を開け、中に入った誠はため息を吐きながら靴を脱ぐと居間へと向かう。

 目的地である居間からは、テレビの音声と女性二人の話し声が聞こえてきた。


「ただいま、二人とも」


「おう、お疲れさん」


「あっ、閼伽井先輩! お疲れ様です!」


「帰ってきたか」


 居間にある洋食机の上にはアモン、そこに配置された椅子の上で晶は椅子に寄りかかりながら誠へ向かって手を上げた。

 そして晶の反対側に座っていた花は立ち上がると、誠へ向けて頭を下げる。


「別にそんなに畏まらなくてもいいよ花ちゃん」


「いえ、だめです! 危険を顧みず私を助けてくれたのに……今後お二人とアモンちゃんには今以上に礼儀正しくさせていただきますから!」


「う~ん……花ちゃんが元気になったのは良いけど、こういう感じになるのは予想外だったな」


「まぁ今までとあんま変わんねえしいいんじゃねえか? それより外の様子は?」


 誠は自らに頭を下げる花に少し困惑しながらも、キッチンへ向かい両手に下げていた買い物袋を降ろした。


「いつもと特に変わらないよ、今の所は。 晶、花ちゃん、どっち食べる?」


 晶の質問に答えながら、誠は買い物袋から二つの弁当を取り出し二人へ見せる。


「そっか、ならとりあえずは安心って感じだな。 アタシは焼肉弁当にする」


「それじゃ、私は三色弁当で!」


「分かった、今温めるよ」


「あっ、ざ、雑用なら私が……」


「いやいや、花ちゃんは今日は色々な事があって疲れただろ? 休んでていいんだよ」


「うぅ……す、すみません」


 誠の返答に晶は安堵したのか、天井に目をやりながら息を吐いた。

 そんな彼女を見て誠は苦笑しながら、弁当をレンジに入れて温めていく。

 それを見て、花は手伝おうとするが誠はそれを宥めて彼女を椅子に座らせた。


「はい、二人ともお待たせ」


 誠は弁当を温め終えると、二人へ温かいお茶と一緒にそれを手渡した。


「おっ、気が利くじゃねえか誠」


「ありがとうございます、閼伽井先輩!」


「マコト、我への供物は」


「分かってるから、がっつかないでくれよアモン」


 二人に渡された弁当を見て、アモンは翼で自らを指す。

 アモンの行動に誠は呆れた口調をしながら、袋から自分とアモン用の弁当を取り出した。


「分かっているならばよい、それでは食事を取りながら現状の把握と今後の方針について話し合うとするか」


「あぁ、そうしよう」


 誠は空いている二つの椅子の内、一つに座り頷いた。


「それじゃあ改めてだけど……花ちゃん、体調は大丈夫?」


「はい、大丈夫です! 最初は苦しかったですけど、あの小瓶の中身を飲んだらすっかり元気です!」


「なら良かった、正直得体の知れない薬を飲ませるのは嫌だったんだけど」


「はい! でもびっくりしました、あんな世界があるなんて……それにアモンちゃんも喋れるなんて!」


 花は机の上でから揚げを食べるアモンの頭を撫でながら、笑顔でそう答えた。

 渋谷異界から花を連れて戻ってきた二人は、何故か最初に侵入した場所からではなく同じ渋谷にある代々木公園の中に出ていた。

 困惑しながらも、二人は急いで小瓶を花に飲ませると新聞部部長である岸田へ連絡をし品川の自宅へと戻ってきたのだ。

 小瓶の中身を飲ませると、苦しんでいた花は直ぐに回復し二人はそのまま今回の事件についての情報を交換したのだった。


「あぁ、こいつの言葉はあっちに行くと理解できるようになるんだよな。 アタシも最初に行ったときは驚いたぜ」


「こっちとしては花ちゃんが事務所の中で攫われたって方が驚いたけどね……」


「そうですね、私も驚いてます……まさか色山さんがあんなことを命令してたなんて」


「そもそも色山ってのはどういう奴なんだ? アタシアイドルとかよく知らねえんだよな」


「確か、プロダクションの社長……なんだよね?」


 誠の言葉に花は頷いた。


「はい、色山さんはプロダクションの社長兼アイドルですね。 この時間なら生放送の歌番組に出てるはずですよ」


「それはいい、敵の顔を知っているのはこちらとしても強みになる。 マコト、そいつが出ている番組を探せ」


「はいはい、えーっと……」


 誠はテレビのリモコンを操作し、何度か画面を変えるとその番組を発見した。


「あ、これです。 丁度中央に映ってるのが色山さんです」


「おぉ、なんかアイドルって感じだな……髪のピンクが結構どぎついけどよ」


 テレビ画面では、歌番組が進行しており画面の中央にはピンク色の髪をした誠達と同い年位の少女が映っていた。

 丁度今、曲を歌い終わり司会にインタビューを受けているようだ。


「色山さんの曲、流石ですよねぇ。 若い子特有の恋愛模様の歌詞をどこか年季を感じさせる歌と切れのいいダンス! これはまたミリオンヒットしちゃうんじゃないですかぁ?」


「いや~ん、ありがとうございます~♪ でもでもぉ、シキにゃんとしては売れるよりも誰かの心にこの歌が届けばいいな~って思ってま~す」


「相変わらず素晴らしいお考えですね、ところで色山さん、今日小耳に挟んだ話なんですが何でも渋谷の事務所に泥棒が入ったんだって?」


 泥棒の一言で、テレビに映る色山の目つきがほんの少しだけ変わった。

 今までの様なテレビ用の目ではなく、狐のように狡猾な目付きに。


「そうなんですよぉ~、今日はアイドル候補生の皆のオーディションがあったんですけどぉそれが終わってから中が荒らされちゃったみたいでぇ~」


「それは大変だねぇ、何か盗まれていたの?」


「はい~、事務所の大事な資料が盗まれちゃったみたいでぇ~今警察の皆さんに協力して犯人を捜してるんですよぉ」


「犯人、早く見つかるといいですね」


「そうですねぇ、でも大体の目星はついててぇ……多分あと一週間もすれば捕まると思うんですよ~」


 色山はそう言うと、席から立ち上がりカメラに向かって右手を銃の形にして構えた。


「あたしぃ……悪い子は絶対許さないからぁ~、BAN! BAN! 見つけ次第逮捕しちゃうぞ♪」


 鋭い目つきをして銃を撃つ様な真似を誠達に対して何度か行うと、色山はそのまま席に座りインタビューへ戻っていった。


「…………泥棒?」


「俺達が異界に行った後に誰かが現実でも侵入したのか?」


「馬鹿者、あれは比喩表現だ。 あの泥棒と言うのは我々の事だ」


「おいおい、アタシ達は泥棒なんて──」


「いや、花ちゃんを奪還しているよ晶」


 三人は顔を向き合わせると、先ほどの色山の発言について話し始める。


「そうだ、恐らく奴は初めて自分のカテドラルに侵入されたのだろう、それで我々を脅威と見て探しているのだろう」


「へへへ、ざまぁみろってんだ! 悪い事してっからそうなんだよ」


「玖珂先輩、笑いごとじゃないですよ。 現実で警察が探し回ってるってことは……」


「あぁ、見つかったら逮捕だけで済まないかもしれない」


「何でだよ、アタシら別に現実の事務所は荒らしてねえだろ」


 困り顔の誠と花に対して、晶は首を傾げる。


「だからだよ、現実で何もやってないのに警察が動いてるなんて普通じゃない」


「恐らく警察と高度な繋がりがあるのだろう、それこそ候補生で作った人形を警察上層部に売り渡していてもおかしくない」


「はぁっ!? んだよそれ、そんなのおかしいだろ!」


「それだけ敵が社会的地位を築いているということだ、以前のドッペルゲンガーの様な一般人とは違うということだ」


「しかもさっき、私達の事を一週間以内に逮捕するみたいに言ってましたよね……」


 晶は大声で叫び、アモンがやれやれと言った素振りを見せる。


「テレビの前で宣言したのは恐らく俺達に対しての宣言でもあるんだろう、必ず捕まえると」


「私達、捕まっちゃうんでしょうか……」


「それは……わかんねぇ」


「やれやれ、落ち着け人間ども。 奴は一週間以内と言っていただろう、つまりまだ我々の所在を発見できている訳ではない」


「でもどうする? 相手は現実の権力と関わっていて、俺達に出来るのは異界でカテドラルを何とかするくらい……」


 不安そうにする三人に、アモンだけが一人笑みを見せる。

 誠の反論にも、アモンはクククと口元を隠して笑うのみだ。


「ククク、確かに通常であればチェックメイトだが……マコト、お前が契約した我は通常の悪魔ではない。 偉大なる地獄の侯爵なのだ」


 そして翼を広げ、誇らしげな顔をしながらこう言った。


「現状を打破する一手は存在する、それも全ての問題を解決する方法がな」


「マジか!?」


「ほんとですか!?」


「……本当に?」


 アモンの言葉に誠以外の二人は驚き、誠は何となく嫌な予感を感じ取ったのか驚きと困惑が入り混じった表情をする。


「無論だ、我の持つ四つの力の一つである認知操作を用いて色山の認知を書き換える」


「ニンチ……? 日本語で頼む」


「えっと、認知……操作ですか? それは一体何なんですかアモンちゃん」


「無知なお前達にはまず認知について説明しなければならんか……認知とは、その人間がこの現実をどういう目で見ているのかだ」


 呆れ顔をしながら、アモンは説明を開始した。


「例えば色山にとってはアイドル候補生は人形の素材という認識だろうし、お前達は敵として認識されている」


「つまり、それを操作する力がアモンにはある……ってこと?」


「クク、少しは学が付いたかマコト? その通りだ、我の力によってお前達に対する認知を敵から味方に書き換える」


「そうすれば、色山が警察に出している俺達の捜索も本人から取り消しをさせられる……?」


「そうだ、その上でカテドラルを用いた人身売買も悪事であると奴に強く認知させれば奴の口から罪を告白させることも可能だろう」


 誠の答えにアモンはニヤリと笑みを作り、頷いた。

 その表情は、誠の成長を喜んでいる様にも見える。


「おぉ、マジか!? スゲーなお前!」


「確かに……そんな凄いことが出来るのなら問題はぜんぶ解決できます!」


「あぁ、でもそんな力が使えるなんて俺は知らなかったけど……」


「ククク、知覚できていないだけで以前も使ってはいるのだがな」


「以前……?」


 以前と言われ、誠は最後に戦ったドッペルゲンガーの事を思い出した。


「言われてみればドッペルゲンガーも最後は改心したような素振りを……まさか、あの時も?」


「そうだ、あの時はアキラの強い想いに呼応した形だがな。 それと一つ付け加えておこう、今の我は力が弱い……敵が弱った時でしかこの力は発揮されんのだ」


「つまり今回色山の認知を変える為には彼女に対して強い想いを持った人が居て、尚且つ相手を弱らせないといけない?」


「結構条件厳しいな……あの時はアタシは滅茶苦茶切れてたけど、あれと同じくらいの怒りを持ってそうなのって……」


 誠と晶、二人の目が花を捉えた。


「わ、私しか居ませんよね! 怖いですけど……頑張ります!」


「おう、アタシと誠できっちり守ってやるから心配すんな」


「あぁ、必ず君を守るよ」


「って言ってアタシの時は失敗したけどな」


「ちょっ……今それは言わなくてもよくない!?」


 晶の突っ込みに誠は困った表情を浮かべ、それを見て花は笑う。

 少しずつだが、三人の信頼関係が深まりつつあるのを彼らは感じていた。


「ならばあとはシキヤマを異界にどう誘き寄せるかだな」


「そっか、そういやそれがあったな……脅迫状でも送るか?」


「それじゃこっちが悪者じゃないですか……」


「いや、いいかもしれない」


 冗談っぽく言った晶の言葉に、誠が同意する。


「彼女がどうしても異界に来なければいけないようにすればいいんだ、例えば……あのカテドラルの主を何日に消滅させるみたいな予告状を書いてね」


「確かにそれならば奴も来るかもしれんな、警備も厳重になるだろうが」


「いえ、色山さんなら来ると思います。 そういう大事な事は自分が関わってないと気が済まない人なので!」


「では話は決まったな、シキヤマへ予告状を送り付け、異界へ誘き寄せる。 その上で奴を打倒し認知を書き換える」


「なら決行は早い方が良いな、明日一日で予告状の作成を行い明後日にそれを奴の目につくように届け、明々後日に異界へ行く。 これでどうだろうか」


 誠の提案に残りの三者は一様に頷いた。


「おっしゃぁ! そんなら土曜は思いっきり暴れてやろうぜ!」


「はい、私も足手まといにならないようについていきますね!」


「あぁ、予告状の用意は俺とアモンでやるよ。 皆、頑張ろう!」


 かくして、方針は固まった。

 誠の言葉に全員が頷くと、今日は解散の運びとなるのであった。



遅れてすまない…結構難産だったんです…

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