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モンストルム・デアデビル  作者: にっしー
福徳の華編
23/108

潜入(11/01内容変更)

ちょっと後半部分の内容を削除しました、書き直して次の話として投稿します

申し訳ありません

2026年 5月13日 水曜日 17;18


 視界が歪む。

 異界に通じる穴を通るたびにおきるこの眩暈に、誠は少し心地よさを覚えていた。

 そんなことを考えている間に、誠と晶は渋谷異界に到着した。

 新聞部の後輩である山城花が誘拐されて直ぐに、アモンが開いた異界への穴を通って辿り着いた渋谷は……。


「うわぁ……」


「なんじゃこりゃぁ!?」


 ピンク色の靄が掛かっていた。

 町並みは先ほどまでの渋谷と変わらないが、足元の辺りに濃密な靄が漂っている。

 そして彼等の視界の先には、花が攫われた色山プロダクションのビル……ではなく蓮の花の上に立つ巨大な和風の建物が連なったビルが存在していた。


「ほう、これは遊郭だな」


「ユウカク……? 焼肉屋の親戚か?」


「それは牛角ね、遊郭っていうのは要するにその……男性が女性を買う所だよ」


「買う……はぁ!? じゃあなんだ、この異界作った奴は元のビルをラブホみたいに作り直したってことか?」


「アキラにしてはよく考えた答えだな、恐らくその推測は正解だろう」


 誠の頭の上で、アモンが頷いた。

 

「異界は力を持つ悪魔が望むように大聖堂や付近を作り替えることが出来る、ここの主にとってはこの形が最も好ましい形なのだろう」


「けっ……だとしたらここの主は脳みそピンクな下種野郎ってことか」


「もしくは単純にその方が都合が良いかだね」


「都合が良い?」


「あぁ、例えば攫ってきた人をここでそういう目的で売ってるのかも……」


 それを聞いて、晶は右の握りこぶしを左手に打ち付けた。

 異界に乾いた音が響く。


「だったら余計に気に入らねえな……アエーシュマ!」


 晶は叫び、その声と共に彼女は血の靄に包まれる。

 靄が晴れると、晶は魔人の姿へと変じていた。


「あぁ、今の考えが合っているかどうかは確かめてみれば分かる事だ。 まずは花ちゃんを助けよう」 


「では行くとするか、マコト」


「あぁ……アモン!」


 アモンの言葉に誠は頷く。

 すると彼の全身が真っ赤な炎に包まれ燃え上がり、それは直ぐに消え……誠は魔人へと姿を変える。


「相変わらず熱そうな変身の仕方だなキング」


「クイーンのは逆に血が口に纏わりついたりして結構大変そうだよね」


「アタシのは見た目だけでそんなに不快じゃねーけどな」


 魔人となった二人は本名ではなく、互いにコードネームで呼び合う。

 休日などに何度か手合わせを行っていた二人だが、改めて見る互いの変身に意見を交わしあう。


「で、どっから行くんだ? やっぱ正面から突っ込むか?」


 晶は右手でバットを杖替わりにしながら、遊郭正面にある大きな門へ顎を動かす。


「いや、それは駄目だと思う」


「何でだよ、山城が攫われてもう結構経つし急いだほうが──」


「だからこそだ、慎重に行こう。 俺達が失敗すれば助けられるものも助けられなくなる」


 晶の言葉に、誠は首を横に振り遊郭を見上げる。


「ドッペルゲンガーの時とは恐らく今回は違う戦いになると思う、前回の経験はあまり当てにしない方が良いと思う」


「ならどうすんだよ、もしかして壁をよじ登るとか言うんじゃねえだろうな?」


「まさか、何処か手薄な所から侵入して見つからずに花ちゃんを探そう」


「探そうって……居場所もわかんねぇのにそんな暢気でいいのかよ」


「居場所なら、アモンが分かってるさ」


「あん?」


 そう言って誠は自分の頭を人差し指で叩く。


「我があの大女の鞄に潜んでいる間に匂いを付着させておいた。 それを追えば女の居場所まで辿り着ける筈だ」


「匂いねぇ……そういやアモン、そもそもテメェが山城が攫われるのを防いでればよかったんじゃねえのか?」


「ふん、馬鹿め、こちらの世界ならいざ知らずあちらでの我は単なるちょっと凄い梟に過ぎん」


「バカだとぉ!? アモン、てめぇ!」


「お、俺を殴るのはやめてくれクイーン!」


 釘バットを握りしめ、アモンと合体している誠へ晶が憤怒の形相で迫っていく。

 その時、遊郭の扉がゆっくりと開いた。


「隠れろお前達!」


 扉が開き、中から人が現れる寸前に二人は近くに停まっていた車の影に身を隠した。


「気のせいか? 今、外から騒ぎ声が聞こえた気がしたが」


 遊郭の中からは、顔の無い黒服の男が現れた。

 男は周囲を見回し、警戒する。


「おい、アモン……もしかしてあいつがこの異界の親玉か?」


「いや、そこまで大きな魔力は感じぬな……恐らく単なる悪魔だな」


「ふむ……因みにあの悪魔の名前は何て言うんだ、アモン?」


「あれらに名は無い、というよりは名を付けるという行為は止めておいた方が良いな」


 誠の質問に、アモンはそう答える。

 アモンの答えに晶は首を傾げ、誠は少し考え込む素振りを見せると頷いた。


「あん、どういうことだ?」


「……あぁ、何となくわかった」


「どういうことだよ誠、何で名前付けたらダメなんだよ」


「悪魔っていうのは名前が有名になればなるほど強くなるものなんだ、だから変に悪魔に名前を付けてそいつが有名になったりすると……」


「あ、なるほどな? 暴走族に名前付けて有名にさせちまうのと似たようなもんか?」


 誠と晶の答えを聞き、アモンはニヤリと口角を上げた。


「そういうことだ、だが名が無いというのも面倒ゆえ……彼奴等を今後ウィンプと呼称する」


「はは、確かにその名前はいいね」


「アタシに分かる様に言えよ、アモン」


「ククク、ウィンプの意味は雑魚だ」


「はっ、そりゃ良い! だったらすぐに蹴散らして──」


 車の影から立ち上がろうとする晶を、誠は制止する。


「やめておこう、近くに他の仲間が居るかもしれない。 ここで騒ぎを起こすのは賢明じゃない」


 誠は首を横に振り、彼女の左腕を掴む。


「ちっ……せっかく人がやる気になったのを……しゃあねぇ、なら潜入できそうな場所を探すとすっか」


 大きな道路を挟んで向こう側にある遊郭を、二人は車の影から観察する。


「おい、キング。 あそこはどうだ、あの三階……窓開いてるぜ」


「なるほど、あそこからなら侵入できそうだ」


「ではウィンプに見つかる前に素早く移動だ、急げよ」


 二人は顔を見合わせ頷くと、物陰の中を素早く移動する。

 幸い先ほど遊郭から現れたウィンプには気づかれず、二人は窓の真下へ到着した。


「さて、どうやって登るかだが……やっぱ排水管伝っていくか」


「その必要は無いよクイーン、俺の右手に捕まって」


「何すんだ?」


 誠に言われた通り、晶は彼の右手を掴む。

 すると誠は左手を三階の窓の少し上へ向けて伸ばす。


「炎のファイアダート


 握りこぶしの先端から、鋭い炎の矢が射出され窓の上にある外壁に突き刺さった。


「さ、行くよ」


「行くよって……うぉぉ!?」


 炎の矢と誠の左手は炎の帯で繋がっており、誠の体は釣り竿のリールを巻くように高速で三階まで上昇した。

 誠はそのまま晶と共に窓の中に滑り込むと、周囲の確認をしながら物陰に隠れた。


「お、驚かせんなよ……」


「はは、クイーンでも怖がることがあるんだね」


「ビビってねぇよ! 今のはちょっと驚いただけだっての!」


「はいはい、しかしここは……」


 急に体が浮遊感に包まれ驚いた晶は、潜入した少し後も呆けた顔をしていた。

 そんな彼女の言い訳を軽く受け流すと、誠は周囲を観察する。

 室内には三角木馬や鞭といった道具や、何に使うのかよくわからない液体が入った瓶などが棚に乱雑に置かれていた。


「資材置き場の様に見えるな」


「あぁ、今の所さっきのウィンプも居なさそうだ」


 アモンの言葉に誠は頷くと、物陰から身を乗り出し部屋の物色を始める。

 晶もそれに続いた。


「しっかし悪趣味な部屋だぜ、エログッズばっかじゃねえか」


「花ちゃんが無事だといいけど…」


「あぁ、間違いを起こさねぇ為にも急ごうぜキング」


「そうだね、恐らくここからは敵との戦闘が避けられない場所も出てくると思う。 お互いに注意しながら進もう」


 そう言って、誠は晶へ右手を軽く突き出した。

 晶はそれを見て、彼の意図を察すると自らも握った拳をそれに軽く突き合わせ二人は部屋を出た。



普通に仕事が忙しくて書くのが遅れたので初投稿です。

もう投稿する日、水曜と土曜とか決めちゃうか……?

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