俺には夢がある!/ I have a dream!
2026年 9月21日 月曜日 23:18
「ゆくぞ!!」
「構えろマコト!」
大門司は手に持った杯の中心から緑色の光を伸ばす。
その光は斧のような形を作ると、大門司は聖杯を右手で強く握りながら誠へ駆けだした。
「ふぬぉっ!」
そして勢いよく上段から振りかぶり、正面に居る誠へ振り下ろす。
誠はそれを正面から炎の刃で受け止める。
「ぐっ……!」
だが大門司のその力の強さに、誠の体が地面に沈み込む。
「ほう、てっきり避けるかと思ったが……正面から受け止めたか! その意気やよし!」
「偉そうに……! はぁっ!」
両手から出ている炎の刃で受け止めた緑の戦斧を、誠は己の膂力で押し返す。
だが跳ね除けるまではいかず、両者の力は拮抗する。
「ガハハハ、やはり力は互角か! だがここからどうする少年?」
「くっ、ぐぅ!」
だがやはり、勢いは大門司にある。
再び誠が押され始め、彼の体が仰け反り始めた。
「未来が読めん……バアルめ、我の未来予知を阻害するか」
「我がどうやってソロモンへ反旗を翻したか忘れたかアモン、全悪魔への統括機能を有する私であれば……」
「少年の力を阻害し、そして!」
「っ!?」
大門司は押していた力を突然引く。
その挙動に誠は一瞬困惑し……その隙を見逃さなかった大門司の拳が彼の顔面にめり込ませ、吹き飛ばす。
「がはぁっ!」
「逆に全ての悪魔の力を行使することも可能というわけだ!」
ケーブルが敷設された床の上を滑るように吹き飛んだ誠は、右手で顔を抑えながら大門司を見る。
だが先ほどまで大門司が居た場所にその姿は無く、誠は慌てて周囲を見回す。
「ここだ、馬鹿め!」
「上!?」
飛び上がり、全体重を乗せた蹴りを放ったまま落下してくる大門司。
誠はそれを見て立ち上がり、回避は不可能と悟ると両腕に力を籠め防御の姿勢を取る。
「うごぁ!」
大門司の放った鋭い蹴りの衝撃波が、誠の防御の上から彼を貫いた。
内臓に重く圧し掛かる衝撃に、誠の口から嗚咽と共に血が吐き出される。
「ぐっ、くそぉ!」
腕の骨が折れていくような感覚を覚えながら、誠は全身から炎を噴き上げ大門司を吹き飛ばした。
「おっとっと、ふふふ……良い熱量だがまだまだ未熟だな閼伽井少年」
「力は互角のはず……どうして!」
「ガハハハ! ワシが単なる力を得ただけのひ弱な政治家だとでも思ったのか? 貴様が超えてきた程度の修羅場など、とうに経験しているわ!」
「どういうことだ……?」
単なる政治家のものとは思えない戦闘センスに、誠は冷や汗を掻いた。
彼のその困惑を見て気を良くした大門司は、両腕を組むとしたり顔で話し始める。
「ふっふっふ……力を得て政治家になる前、ワシはこれでも貴様の味方である藤原千方と肩を並べた事もあるのだよ」
「藤原……峰先生と?」
「そうだ少年、もっとも彼女はワシのことなど知らんだろうがな」
石動市と聞き、誠は仲間達と行ったその光景を思い出す。
「ワシはかつて悪魔使いを生業としていたのだ」
「……悪魔使いを?」
少し驚いた表情をする誠に、大門司は言葉を続ける。
「その通り、そしてワシが一族の裏家業をこなしていたある時……宮内庁直々に遺跡の調査依頼を受けた」
「遺跡?」
「ワシ等は富士の霊峰にある遺跡を進み……その先導をしていたのが峰京子だった、もっともあの女や他の連中は道中恐怖に襲われ逃げ出してしまったがな」
その時の光景を思い出し、大門司はくつくつと笑った。
「今になって思うとワシ以外の連中が逃げ出したのは当然の事、奴らは資格無き者達だった」
「資格? 一体何の話だ」
「無論ソロモン王の後継者としての資格のことだ少年」
大門司はそう言うと、左手を上げた。
そしてその親指に嵌った黄金色の指輪を誠へ見せる。
「ワシ等が調査をしていた遺跡は実際は星船の内部だったのだよ、そしてバアルが封印されている広間に至る寸前でワシ以外の全員が逃げ出したのだ」
大門司はその指輪を見ながら、恍惚の表情を浮かべた。
「今でも思い出す、この指輪を見つけた時の昂揚、そしてバアルとの契約を果たし我が大儀を果たすと誓った時の熱意を!」
「何が大儀だ、お前のやろうとしていることは俺と変わらない! 他人の意志を捻じ曲げようとしてるだけだろう!」
「そう思いたいならそう思うが良い! 何にせよワシは意思を曲げるつもりは無い、ワシの双肩に世界の、いや! 人類の未来が乗っているのだ!」
「何が……人類の未来だ!」
力強く叫ぶ大門司に、誠もまた負けじと吼え返す。
そして右手を地面に向かって正拳突きの様に叩きつける、すると大門司の足元から獄炎の火柱が立ち昇り彼を包む。
「ぬ、ぐおおお!? この程度のこけおどし!」
「うおおおお!」
だが大門司は即座に脱出すると、誠へ走りかかっていく。
誠は姿勢を戻すと、即座に右手から炎を高速で飛ばす。
しかし、大門司はそれを右手で弾くと誠へ向かって左拳を振りかぶった。
「ふんっ!」
誠はその左手を両拳で受け止める。
大門司は左手に力を籠めるが、しかし誠が少しずつ押し返していく。
「くっ、う、動かん……!」
「確かにお前は強い……だがな、それだけだ」
そして、誠はついにそれを押し返した。
「なんだとぉ?」
「何が人類に規範を与えるだ、何が人類の未来だ!!」
だがほんの少し距離が離れた大門司は、再び拳を振るおうとする。
誠はその攻撃の出だしを右手で潰し、続いて顎に裏拳を叩き込む。
「お前の目的は結局自分だ! お前がただ力を手に入れたから、自分のやりたいように世界を書き換えようとしているだけだ!」
誠の裏拳を食らいながらも、大門司は果敢に攻撃をしていく。
左手が弾かれれば右手、両手が弾かれれば足を使って。
だが誠はその攻撃の出掛かりを潰すと、足払いをして大門司を地面に転がした。
「お前などなんの信念も無い……クソにたかる蛆虫野郎だ!!!」
地面を転がり、倒れる大門司は誠の叫びを聞き楽しそうな表情を作った。
「ほう、言うじゃねえか? 確かに人類の規範も何もかもはお題目に過ぎん」
そしてゆっくりと立ち上がると首と拳を鳴らす。
「実際のところワシは権力が欲しい、何もかもをワシの好きにしたい……だがな、ワシには夢がある!」
「夢?」
「ワシが目指すのは真の自由による最強人類の創造だ!」
大門司は聖杯を投げ捨てると、軽快なフットワークで詰め寄り右フックを誠へ見舞う。
「力を行使する自由……法の庇護など必要は無い!」
「くっ……ぐあっ!」
右フックを避け、左拳によるアッパーをスウェーで回避する誠。
だが続いて伸びてきた右手によって首を掴まれ、身動きを封じられる。
「もちろん誰もが力を行使すれば闘争は生じる」
首を絞められ誠は左手で大門司の右手を、そして左手で首を掴む。
大門司は彼の手を相対する手で掴むと、互いに両手を組みあい力比べの形となる。
「だがそれでいいそれこそがワシが望む姿よ……真の闘争の世界だ!」
「おおぉぉ!」
そして、二人は互いに頭を後ろへ振りかぶり……頭部をぶつけ合う。
「このワシが、ぬるま湯に浸かった人類の目を覚まさせてやる!」
頭突きは互いに引けを取らず、だがその後の力比べに軍配が上がったのは大門司だった。
誠は強烈な力に膝が崩れ、地面に膝を着く。
「気に入らない奴はぶん殴る! それがワシの目指す人類だ!」
大門司はそのまま誠の両手を振り払い、顔面に拳を連続で叩き込み最後に大振りの拳を頭部に叩き込み彼を床へと叩きつけた。
「ワシがお前を殺したら、この腐った人類を皆殺しにして作り替えてやる!」
「き、き……さま……」
「せこく儲けてる柔な連中やフェミニストだのLGBTだの、わけのわからん奴らをぶん殴ってやる!」
強烈な打撃を受け、ダウンする誠に大門司は更に追撃を加える。
倒れている誠を足で表にすると、胸部へ向かってその大きな足で踏みつけていく。
「弱者は駆逐される! 強い者だけが残る! ワシ等は原始時代の、人間が本来あった姿を取り戻すってわけだ!」
「ぐあああっ!」
「ドリームマシンを使い、今の人類全てを生贄に捧げ! より凶暴な、至高の人類を作り出す!」
何度も何度も、誠を踏みつけ……次第に動かなくなっていく誠。
そして、大門司は最終的に動かなくなった誠を見て満足したのか胸元から葉巻を取り出すとそれを咥えた。
「な、なんて……奴だ……」
「どうだワシの夢は、感動したか?」
「……どうやら、俺は勘違いをしていたようだ」
「おぉ、では分かってくれるのか!?」
血反吐を吐きながらも、大門司を認めるように頷く誠。
それを聞き、目を輝かせながら誠を立ち上がらせると大門司は彼の埃を払う。
「ではワシの理想実現のため、アモンの力を譲ってくれるな!?」
「あぁ──良く分かったよ……お前が本物クズだってことが!」
「なにっ!?」
誠は即座に大門司に飛び乗ると、そのまま左手へ張り付くと固め……そして投げ飛ばした。
大門司は投げ飛ばされた後、事態が上手く呑み込めず天井を見つめたままだった。
だがゆっくりと体を起こし、ふらふらと立ち上がっていく誠を見て怒りの形相を浮かべる。
「まだ分からんか、人類には変革が必要だ! だが変革は犠牲を伴う!」
「犠牲になるのはいつも弱者だ、強い人類だと……? ふざけるな! お前に虐げられた弱者の痛みが分かるか!」
「何が弱者だ! お前とその力で敵を黙らせ生き延びてきた人間だ! 分かる筈だ、ワシの理想が!!」
「次はお前を黙らせる!」
一瞬でも自らの理解者だと思った大門司が、悲壮感を纏わせ叫ぶ。
だが誠はそれを力強く否定すると、再び拳を構えた。
待たせてすまない…来週は多分更新できると思います・・多分・・ジャパンカップ二日目に残らなければ




