プロローグ
空に浮かぶ満月がきれいな夜。あたり一帯が木々に囲まれている森の中であることがわかる。
人の気配はまったくなく、聞こえてくるのは虫や小動物であろう鳴き声だけである。
異世界小説の定番といえばある意味では定番だろうけど、こんな場所で異世界生活がスタートするのも現代日本出身からしたらいかがなものだろうか?
そんなことをわたしこと八坂真理亜は、考えながら森を進んでいた。
メキ……、メキメキメキ。
何かがきしむような音が聞こえてきた。
何だか少し嫌な予感がする。
昔からこういった嫌な予感は、だいたいいつも当たっている。
そう考えて急いでこの場から離れようとしたが、遭遇してしまった。
異世界モノの様々な作品で引っ張りだこである、豚のような頭に人間のような巨体。
そう、オークだ。
何か舌なめずりして、ニヤニヤしながらこちらに近づいてくる。
完全に獲物扱いされているようだ。
流石にこのまま襲われる訳にもいかないので、少しずつ後退りしながらもオークに向けて手をかざした。
「〈ミストバレット〉」
そう唱えると、かざしていた手から鉄球がオークに向かって発射された。
オークは何かしらのリアクションをする暇もなく、頭を撃ち抜かれて後ろに向かって倒れた。
うまくいったこと安堵しつつ、初めて会ったモンスターに興奮がさめない。
様々な夢や妄想に胸を踊らせながら、こうして異世界生活の幕が上がった。