第0話 天才の始まり
ある日の雲一つない青空の下、和風な家屋の縁側に一人の老人と一人の子供がお茶を啜っていた。
ズズズ・・・
お茶を一口飲み終えると、その子供―天堂才我―が、祖父である、天堂十吉に質問する。
「ねぇ、おじいちゃん」
「どうした才我?」
「何で父さんと母さんは居ないの?」
「仕方のないことじゃよ、お父さんは会社の社長で、お母さんはその秘書。今は世界各地を飛び回り、働いておるのだからな」
十吉の言う通り、才我の両親は社長と秘書の関係である。事業拡大のために世界各地で会議やら食事やらで殆ど会っていない。
それは才我も分かっていた。だが、才我はまだ5歳。
両親が忙しいと分かっていても、寂しいと思う気持ちは我慢できなかった。
だからかもしれない。
だから、その考えに至ったのかも・・・。
「おじいちゃん、オレ決めた」
「ん?」
才我は真っ直ぐな目をしていた。まったくの濁りのない瞳で、堂々とした態度で、宣言した。
「オレ・・・将来、逆玉に乗る!」
「・・・え?」
キョトーン・・・
実際にはキョトーンなどという音は流れるわけがない。
だが、十吉の頭の中には、その音が何度も流れていた。
キョトンとし過ぎて飛びかけていた意識を現実に戻し、冷静に聞く。
「んー・・・っと、ねー・・・聞きたいことが山ほどあるけど、とりあえず一つ聞くね?
どこで覚えたのその言葉?」
「テレビ」
「そっかあー・・・テレビか・・・好きだもんねテレビ・・・。ちなみに言葉の意味は理解してる?」
「平凡な男性が、経済力や社会的地位のある女性と結婚することを俗に言う言葉でしょ?」
「えらくわかりやすい説明だね!? ホントに5歳?」
十吉は我が孫の才能に畏怖した。
だが、問題はそこではない。
「仕事でプライベートがあるかもわからない生活になるくらいなら、逆玉に乗って専業主夫になって働かずに生きた方が、楽そうだ!」
無邪気な子供の顔で夢を語っているが、内容はクズである。
そんな孫の夢を聞いた十吉。
ここで止めなければ、どんな人間になるかわからない。
「才我・・・」
孫の両肩を掴み、俯く十吉。
普通の人ならここで子供を諭すだろう。
だが、
「才我・・・素晴らしい夢だ!」
幸か不幸か、十吉は普通の人ではなかった。
涙を流しながら、才我の夢を肯定し始める。
「才我・・・まさかお前も、その考えに至るとは・・・DNAは怖いな」
「まさか、おじいちゃんも!?」
「あぁ・・・わしも若い頃、「楽して生きていきたい」そう思っておったんだ・・・」
十吉は若い頃を思い出す。
懐かしき思い出に酔いしれながら、かつての自分と孫を重ねた。
その祖父に、才我は尊敬の眼差しを向けた。
「おじいちゃんはその夢を叶えたんだね!」
「いや、結局わしは夢を叶えられなかったんじゃ・・・」
「え、だって今は働きもせず日中、縁側でお茶啜ってるだけなのに生活できてるじゃん!」
「いや、それはきちんと年金を納めたからじゃよ・・・」
この子は難しい言葉をよく知っているなぁ、と感心する十吉。
「結局わしは定年まで働いた。・・・辛かったよ、正直仕事を辞めたくてしょうがなかった。
でも息子も嫁もいたし、辞めるに辞められなかったんだ・・・」
遠くを見つめながら、あの頃働いていた日々を思い出す。
思い起こされるのは、毎日の通勤、汗水垂らして歩き回った営業、頑張っているのに失敗したら上司に怒られる理不尽。
どれを取っても全くいい思い出が無い。
「おじいちゃん・・・」
「才我、勉強するんだ」
「え?」
「馬鹿がどれだけヒモになりたいと思っても、無理なんだ。それはわしが身を以て体験したからな。
楽して生きるには、それなりの頭脳が必要なんじゃ!」
熱弁しているが、言っている事は何一つまともでは無い。
「わかったよ! オレ頑張って勉強して、最高のヒモになってみせるよ!」
ついでにこちらもまともで無い。
「よし、そうと決まれば早速、勉強するぞ!」
「うん、おじいちゃん!」
「よし、まずは算数からじゃ。まず足し算というのは――・・・」
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あれから10年
天堂才我 高校1年生。
彼は現在――
「おい聞いたか? テストで全教科満点のやつがいるんだってよ!」
「マジかよ!?」
「いったい、どんな奴なんだ・・・?」
IQ200を超える、超天才になっていた。
実は2作目に描いた作品。
一度書いて、続き書けなくなってムシャクシャして削除した作品だが、書ききれなかったことが心残りで、完結させるためにもう一度書く事にした。
頑張って書くぞー (・ω・)ノ オー




