モブは忙しいのです
「あっ、先輩! 助けてください」
少女が1人の男子生徒の元へ駆け寄って行った。
「……イベントだ」
「イベントが始まったぞ!」
少女の背後は騒然としたが、誰かが「静かに」というと皆ハッとしたように口を噤み、少女と男子生徒の動向を窺う。
今は一週間後の学園祭に向け、メイドカフェの予定のこの教室も、ある理由から非常に纏まりのよいクラスとなった事もあり、一丸となって準備をしている最中だった。
そんな中、突然衣装担当の少女が廊下を通り掛かった2年の生徒会長に助けを求めたのだ。ここまで特に大きな問題は発生していない。
皆が固唾を呑んで見守る中、少女が口を開いた。
「学園祭で使う食器を割っちゃったんですぅぅぅ」
「か、確認ーっ!!」
「全部割れてます」
「予備なんかねーぞ」
「学校の備品が借りれるか確認して! ダメなら紙皿とかでいいよ」
少女が仕出かした事態の後始末に走り回る中、 生徒会長からは備品の管理がなっていないとのお叱りを頂いた。
何故衣装係の彼女が食器を割るのか、何故クラスメイトではなく生徒会長を頼るのか、そして何故今頃言うのか。
入学以来、様々な問題を巻き起こす彼女は「天災☆ヒロインちゃん」と呼ばれている。