最終話 ギルドの寮に住んでみる
寮へ戻った少年二人は、風呂上がりの牛乳を飲んでいた。
「いやぁ、それにしても面倒な話をしてしまったね」
「まぁな。ジュミドは変わったこと考えてんだなってことはわかった」
「はは、でもアルス君の圧倒的な強さは、ボクにとっては興味深いよ」
「そうか」
アルスは、机に牛乳瓶を置いて、ジュミドの言わんとしていることを考える。
しかしどうにも要領を得ないように思えた。
「けどまぁ、俺はフツーの理解を越えたところの話はわかんねえよ」
「そうかい? ボクはけっこうそういう話好きだけどね」
「マジかよ、ナルシストでドMなのにそれはちょっと、引かれると思うぞ」
「悲しいなぁ」
等というも、ジュミドは微塵も悲しくなさそうな顔をしていた。やはり、考えていることが読めないとアルスは思う。
フリス達はまだ風呂に入っているようで、部屋には男二人という状態である。
程なくして、フリス達が戻ってきた。
「ふぅ、いい湯だったわね」
「ただいまだぞ、二人とも!」
アルスはそれに微笑んで、おかえり、と返す。
独りでいたときよりも、魔王は自然に笑顔が出ることに気づいていた。
そして思う。自分はここにいると楽しいのだと。
魔王は、ついに自らの安住の場を見つけた。
ここならば、充実感を抱いて楽しく過ごせるだろう。
「決めた、俺、このギルドの寮で暮らすわ」
充実感を抱けぬ魔王は、居場所を見つけられたのだった。
足早にですが完結となります。理由は、書きたいという気持ちに反して書くことの限界に突き当たったがためです。
拙作にお付き合いくださり、ありがとうございました。