ダンジョン(水)
ダンジョンにもいろいろな種類がある。
大まかに言うと5つの属性があるらしい。
炎のダンジョン、氷のダンジョン、雷のダンジョン、風のダンジョン。
そして今回行くことになった水のダンジョン。
他にもダンジョンがルらしいが大まかにいうとこの5つに別れる。
この世界に来てほぼ半年、3つめのダンジョンに行くことになった。
指令はもちろんあのエグザから。
エグサは俺の属するギルドの案内係だ。
一案内係のはずの彼女はとにかく態度がでかい。
まるでギルドを仕切っているかのよう。
それでいて前面に出るのは嫌がる。
ギルドのみんなからは慕われているようだ。
そしてエグザは俺の武術の師匠でもある。
彼女はかなりの武術の使い手だ。
そんな小柄でどうやって高等武術を身につけたのかは謎。
俺を含めて何人かの弟子がいるらしい。
そのうちの有望株が女剣士のソーキラ、男武闘家のパンキック、女勇者のカレアラだ。
今回もこの3人とダンジョンに行くことになった。
しばらくは同じメンバーでの探索だそうだ。
いつものように朝早く待ち合わせ場所で待っているとパンキックが最初にやって来た。
非常に珍しい。
いつもは集合時間ぎりぎりか、もしくは遅刻してくる事の多い人だ。
彼は開口一番、
「今日は俺とお前以外は誰も来ていないようだな。
せっかくだから彼女たちが来る前に女どもには話せない男同士の話をしよう」
どうやら彼は俺と話をしたかったようだ。
そういえば彼とじっくり話をしたことがない。
その後の話はたわいもない話だ。
彼の自らの出自や彼の育った環境、そしてなぜ武闘家になったのかを聞いた。
話してみると顔は強面だが中身は頼りになる兄ちゃんだ。
俺も困った時はこの兄ちゃんにいろいろと相談してみたいと思った。
そしてそうこうしていると残りのメンバーも集まってきた。
そして探索の始まりだ。
今回の目的はこのダンジョンに生息する幻の鳥だ。
しかし、水のダンジョンとはどういう所なのか。
炎のダンジョン、氷のダンジョン共に想像を遙かに超えた場所だった。
今回はどういう場所なのだろうか。
しかし、期待はすぐに崩れた。
ダンジョンに入ってみるとすぐに分かったのだが何のことはない普通の洞窟だ。
一帯が湿っている普通の洞窟なのだ。
今までのダンジョンに比べても何の面白みがない。
それでいて最難関のダンジョンの1つというのだから謎である。
女剣士のソーキラは
「ここで油断をするな。
このダンジョンは入り口は何の変哲もない洞窟だから油断をしてしまう。
しかし、この最初のダンジョンは迷いのダンジョンで一本道でありながら罠にはまってしまうと二度と出ることの出来ない迷いのダンジョン。
この最初のダンジョンを抜けなければ目的地に着くことは出来ない」
そういえば1時間近く同じような道を進んでいる。
ソーキラは
「この迷いのダンジョンは攻略をすれば10分で出れる場所。
どうやら私たちは最初のダンジョンの罠にはまってしまったようだ。
実は私たちはこのダンジョンは初めて。
師匠 (エグザ)が腕試しにとこのダンジョンを勧められた。
さて、どうしたものか。
罠にはまると下手すると一生出られないダンジョンらしいから」
と言うと俺の目をじっくりと見た。
彼女たちは俺を優秀なシェルパだと聞いているようだ。
て、期待されても何も出ないが。
俺はこの最初の迷いのダンジョンの攻略の仕方を考えた。
ここは水のダンジョンだ。
何か水に関する仕掛けをしてあるはず。
と思い下に貯まっている水に手を入れた。
流れがある。
気づかなかったが結構な流れだ。
そこで俺が気がついた。俺たちは同じ所をぐるぐる回っているわけではなく一歩も動いていないことを。
簡単に言うと動く歩道の水バージョンだ。
そしてこのダンジョンは自分たちが流されていることに気づかないように感覚を混乱させている効果もあるようだ。
そこで俺は少量の水でもボートとして機能するモーター付きのゴムボートをリュックから出した。
俺たちはゴムボートに乗りモーターを最大出力にして脱出に成功した。
その後は滝があり、湖があり、大変だった。
ある階になると全部が水に満たされている。
1回引き帰ろうかと思うほどだった。
俺たちは諦め意を決してそこをを潜り目的地に着いた。
そこは開けた水辺になっていた。
そしてそこにはどこからか光が差していた。
かなり地下深くのダンジョン。
光源は謎だ。
俺たちはいつものように物陰に隠れ水辺を観察した。
しばらくすると湖の真ん中が山のように盛り上がりそこに1羽の鳥が出現した。
見たことのない透明な鳥だ。
水のダンジョンらしく水で構成されている鳥らしい。
1羽しか確認が出来なかったが彼女たちはかなり興奮していた。
どうやらこの湖がこの鳥のねぐららしい。
(おそらく)昼間にはどこかへ飛び立ち夜になったらねぐらへ戻る。
と言ってもダンジョンの仲は暗いので昼も夜も区別も付かないのだが。
俺たちはその鳥を一週間観察した。
そして俺たちは帰路に立った。
行きがあれだけ困難だったから帰りもどんだけ苦労するのだろうかと思うと気が重くなった。
とにかく帰るのが面倒な今です。