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ダンジョン(炎)

 修行が終わり、俺は自分の部屋へ戻った。

エグザが

「今日は疲れたでしょう。

この後、よく休んで明日に備えなさい。

明日はもっとハードな1日になるはずだから」

と言っていた。

と言っても俺の体は神様仕様。

疲れを感じない体なのだ。

しかも俺の体は眠ることが出来ない。

とりあえず昨日と同じく俺の頭の中のアーカイブ(図書館)に接続し暇をつぶそうと思う。


 気がつくと朝になっていた。

それにしても俺の頭の中のアーカイブは便利だ。

何しろ俺の元いた世界の全ての知識がそこにある。

しかも毎日更新されているのだ。

これで何百年分もの暇つぶしが可能だ。

そう思いふけっていると昨日と同じくエグザが起こしに来た。

「あら、珍しい。

今日は1人で起きれたのね」

これでも俺は1人前の大人のつもりなのだが。

エグザは

「今日は炎のダンジョンの所に行きなさい。

この街はダンジョンの観光で持っているものだからね。

この街には5つの難関ダンジョンがあるの。

あなたはとりあえずその5つのダンジョンのシェルパをやってもらうわ。

地図は昨日頭の中にたたき込んだとおり。

ダンジョンへの道筋も分かっているわね」

そう早口でまくし立てると俺を早速部屋から追い出した。


 もちろん道筋は分かっている。

簡単に炎のダンジョンの入り口に着いた。

そこでは俺が噂になっていた。

何しろ難関ダンジョンだ。

何しろ見た目、よわい10歳の少年だ。

難関ダンジョンの案内人に抜擢されただけでも驚きなのだろう。


 少し待っていると男女3人組が俺の所へ来た。

女剣士らしき人が

「君が噂の少年シェルパか。

私はギルドの案内所から君を推薦されてきたものだ」

と話しかけてきた。

「私はいわゆる剣士見習いだ。

名前はソーキラと申します。

後ろにいるのは武闘家見習いの男で名をパンキック、そして横にいる女は勇者見習いでカレアラと申します。

私たちはあそこの案内所の番人、エグザさんの一番弟子でもあります。

あなたはシェルパ見習い、しかも昨日なったばかりだと聞きます。

お互い見習い、そして弟子同士、切磋琢磨してまいりましょう」

どうやらエグザの知り合いらしい。

でなければこんな何処の馬の骨とも分からない少年に道案内を依頼することはないだろう。

しかも今日が初めての難関ダンジョンなのだそうだ。

俺も責任感が重大だなと思った。


 ダンジョンに入る前にまず大事なのは装備の点検だ。

俺はこの世界に転生した時にあらゆる耐性が付いているので問題ないが案内するのが普通の人間だ。

何かあったら俺の責任なので炎耐性の装備は一通りそろっていることを確認した。

しかし厄介なのが服だ。

消防服みたいなのを全身に羽織らなければならない。

俺は羽織る必要性がないのだが、それでは一発で人間でないことがばれてしまう。

なんとかリュックからそれっぽい服を出してごまかすことにした。


 ダンジョンに入ると炎のダンジョンらしく至る所から炎が吹き出している。

ちなみにこの世界では魔物の殺生は禁止。

冒険者たちはいわば学者みたいなもので魔物の生態を観察、記録するのが仕事だ。

もちろんダンジョンの探検自体も仕事なのだ。

彼女たち一行の目的はこのダンジョンにしか生息していない炎でできた狼の観察、記録なのだ。

その狼はこのダンジョンの奥深くに生息しているのだという。

とにかく彼女たちが言うには幻の狼なのだそうで生息を確認できただけでも大発見なのだそう。

それをほぼ新人の俺に道案内させるわけだから正直どう書かしていると思う。

幸い、俺はこのダンジョンの道を全て把握している。

しかし、大問題がある。

魔物ではない。

魔物はこちらが攻撃してこない限り襲ってくることはないからだ。

それよりも問題なのはマグマの川だ。

ここを渡らないと目的地には着かない。

多くの冒険者はマグマの川があるからその先は断念しているのだ。

さてどうしたものかと考えあぐねているとマグマの川に着いてしまった。

しかし、女剣士は

「エグザさんから聞いたのだが君は優秀なのだそうだな。

何せシェルパになった当日に難関ダンジョンを任せられるのだから。

この(マグマの)川も君だったら渡れるアイデアを持っていると聞いたのだが」

と目を輝かせて聞いてきた。

生憎、俺にはそんなアイデアは存在しない。

少し考えさせてくれと頼んで俺はその場を離れた。

エグザは何を持って俺がそんなことが出来るのだろうと考えたのだろうか。

小一時間、考え込んでいたらリュックのことに行き着いた。

そういえばこのリュックは何でも思い浮かんだものを出せるといっていた。

炎耐性のゴムボート(エンジン付き)を出せるのだろうか。

そう思って俺はリュックの中に手を突っ込んだ。

結果は簡単だった。

案ずるより産むが易しと言うべきか。

俺はそのゴムボートを持って彼女たちの所へ向かった。

彼女たちは楽観的なようで俺が悩んでいた小一時間おしゃべりを楽しんでいたようだった。


 マグマの川を渡って10時間ほどダンジョンを渡った。

そして目的の狼に出会った。

子供を産んだばかりのようで親狼が子育てをしている真っ最中だ。

俺はとてもかわいく思った。

冒険者たちもしきりに感動していた。

それから一週間、その狼の観察をした。

とても楽しい一週間だった。


 しかし俺が人間でないことをばれないようににするのが大変だった。

寝るのはなんとかごまかせたが、問題は食事だ。

俺は飲食が出来ない体だ。

とりあえず食べるのを人に見られるのが苦手だということでなんとかごまかした。

これからもいろんなダンジョンをこの人たちと回ることになる。

どうやってごまかすか今から悩みの種だ。





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